摂食嚥下ケア、きざみ食は適切ではない

看護師仕事内容

摂食嚥下ケア、きざみ食は適切ではない

嚥下機能が低下している患者さんへ食事介助をしていると、むせ易い食材や調理の仕方などが分かってきます。

特にきざみ食は嚥下食には向いていません。

嚥下機能の低下した患者さんに、きざみ食は適していない

小さく刻まれた食材が誤って気管に入りむせる原因になります。むせて気管に入ったものが出てくれると良いのですが、そうでなければ誤嚥性肺炎の原因になってしまいます。

介助者はトロメリンなどを使用しきざみ食が滑らかになり食道へ行くように工夫して介助します。

そして医師や栄養部に説明し、患者さんに適した調理法で料理されたものを提供するようにしています。嚥下ケアに、食物の形態を考慮するのはとても大切な事です。

摂食嚥下障害の観察ポイント

摂食・嚥下ケア 嚥下しやすい食形態として、きざみ食は適切ではない。

嚥下しやすい食形態は密度が均一でまとまりやすく、付着しにくい。きざみ食はこの点で向かない。

①嚥下食に対応と言う病院の中でも、約6割が刻み食を提供。

日本療養病床協会栄養摂取管理委員会が行った717病院を対象とした実態調査では、摂食嚥下障害に対応した食事を提供している施設は6割を上回ると報告している。

そのうちの6割近い病院ではきざみ食を提供しているという事です。しかしきざみ食は摂食嚥下障害の患者にとって安全な食形態と言えるでしょうか。

②きざみ食はまとまりが悪く食塊形成が難しい、また状態にも差がある。

きざみ食は咀嚼機能を補うためには有効ですが、まとまりが悪いために食塊形成が難しく、誤嚥等の誘因となる危険性が指摘されています。

またきざみ食という同一名称を使用していてもそれぞれの施設により食形態の特徴(大きさ硬さ粘度)に隔たりがあることが問題視されています。

嚥下しやすい食形態としては、食塊の密度が均一で凝集性が高く付着性が低く変形性が大きいものが有利とされています。

③きざみだけでなくトロミを加えると良い。

VFによる飲み込み易さの比較では、粘性が低く流動性の高いサラダオイル状のものに比べ、ゲルーゾル混合食物は口中で感じるまとまりやすさ、飲み込み易さが有意に良好であったことが示されています。

すなわち嚥下反射惹き遅延や咽頭残留をきたしやすい嚥下障害患者にとってはきざみ食よりも、きざみ食にとろみをつけてまとまりを持たせた形態の方が食べやすいという事です。

高齢者が急増する現在、病院・施設で提供される食事形態の質向上と施設間での格差是正が求められています。少しでも安全な食事を提供する為に、嚥下食提供体制の整備が重要です。

誤嚥を予防する為の最善の姿勢

誤嚥の危険性の高い患者さんの食事介助をする時には、なるべくベッドを高く挙上し顎を引いた姿勢で介助していた。

健康な私たちが食事を摂取する時には座位の姿勢をとるのだから、患者さんが嚥下する時にも、座位の姿勢が最も誤嚥しにくいのだと考えていた。

しかし座位よりももっと良い姿勢があった。

体幹角度30度の姿勢で顎を引く姿勢だそうだ。嚥下造影の結果明らかになった誤嚥予防の為の姿勢は、まだ看護の分野にもあまり知られていないかもしれない。

摂食・嚥下ケア。誤嚥を予防する為の姿勢は座位ではなく、体幹角度30度+頸部前屈である

座位よりも安全な姿勢が明らかに。重力を利用して誤嚥しにくくなる体位にする。

①安全な食事摂取の体位は座位とは限らない。

食事は座って食べる方が安全と言う価値観は浸透しています。座位には以下の利点があります。

・積極的に嚥下しない限りは食塊が口腔内にとどまり、不意に咽頭に流れ込みにくい。

・食塊を嚥下できない場合には開口することにより容易に食塊を口腔外に出すことが出来る。しかし摂食嚥下障害により誤嚥のリスクの高い患者にとっては、必ずしも安全な食事姿勢が座位であるとは限らないのです。

②体幹姿勢の調節により、嚥下機能の低下を代償する。

近年体幹姿勢の調節により嚥下機能の低下を代償する方法が国内で積極的に行われています。脳血管障害等により摂食嚥下障害が疑われた患者に対し、嚥下造影(VF)を行った結果、座位よりも体幹角度30度や60度後傾した姿勢の方が、誤嚥の危険を減少させたことを報告しています。

また脳血管障害による球麻痺と仮性球麻痺患者による重度嚥下障害のある患者にVFの結果、体幹角度30度仰臥位・頸部前屈位が、誤嚥量の減少と食塊の咽頭への送り込みを改善するうえで有効であったと述べています。

③なぜ体幹の後傾が、誤嚥予防に有効か?

体幹の後傾には、重力が働く方向を変化させる効果があります。口腔内において座位では食塊の移動方向が口腔内でほぼ水平であるのに対し、体幹を後傾した姿勢では咽頭後壁に向けて重力が働きます。

これにより食塊は舌運動に加えて重力の作用により、咽頭へ移動することになります。すなわち重力が舌運動の低下を代償するわけです。

一方咽頭では座位において垂直方向へ作用していた重力が体幹の後傾により咽頭後壁方向に向けて働くことになります。

そのため食塊の咽頭到達に対する嚥下反射惹起の遅れや咽頭への食塊残留がみられる場合であっても、食塊が咽頭内にとどまることになり、食道の上方に位置する気管側には入りにくくなると考えられます。

④体幹後傾のメリット。

・食塊が重力の作用で咽頭後壁側を流れやすい。

・たとえ嚥下反射が惹起されなかったり、咽頭に食塊が残留したりしても、量が少なければ咽頭内にとどまる(気管側に入りにくい)

参考資料:ここが変わった看護ケア

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