何時もと同じように生活をしていても、他人の何気ない言葉で精神的に参ってしまうことがあります。
そのことが頻回におこると、気持ちが落ち込み日常的に憂鬱な気分になってしまいます。病気を看護する看護師にとっても同じことが言えます。
うつ病のサインと接し方
精神的に疲れる状態が続くばかりではなく、その疲れは自分が気付かぬうちに身体症状として現れることがあります。
自分の心持を変えようとしても、環境が変わらなければ精神状況はいつまでたっても変わることが出来ない場合は少なくありません。
それどころか苦痛である現状を我慢することによって症状が悪化してしまうことは多いです。
無意識に精神的負担となっている環境を、本人が気付くことによって症状の悪化を予防できる可能性もあります。
最悪の事態を招くことを避けるために、誰にでも起こり得るうつ病について知っておくことは大切です。
うつ病のサインと接し方
うつ病にかかっていても本人の頑張りにより表面的には普通に見えることが少なくない。周囲の人が次のようなサインを早めに見つけて気づくことが大切。
周囲が気付くうつ病のサイン
・ 仕事でミスが増える:集中力の低下からミスが起こりやすい。遅刻や欠勤が増えることもある。
・ 食欲がなくなる:いつものように食事が進まなくなる。
・ よく眠れていないようだ:寝不足気味で朝起きるのがつらそうな表情を見せる。
・ イライラしやすくなる:焦燥感が強く精神的に不安定な様子が目立ってくる。
・ ぼんやりしていることが増えた:何も手につかずうつろな表情をしている。
・ 飲酒量が増える:それまであまり飲まなかった人も深酒することが多くなる。
・ 口数が減る:押し黙ったりため息をつくことが多くなる。
・ 外見や服装を気にしなくなる:無気力になって服装をかまわなくなったりひげをそらなかったりする。
禁句の言葉とは
・ 「頑張れ」:頑張りすぎるほど頑張った結果エネルギーがなくなっている患者さんをさらに追い詰めてしまうので注意。
・ 「性格を変えないとね」:性格を指摘するのは益々自分を責めることになるので避ける。性格には誰でも良い面と悪い面の両方を持っていることを本人も周囲の人も理解する。
・ 「誰にでもあることだ」:嫌なことがあって落ち込むことは誰にでもあるが、うつ病は日常的な落ち込みとは違うもの。それを誰にでもあることだと言われると本人はさらにつらい気分になる。
・ 「なぜこんな病気になった」:病気のきっかけを話題にしない。取り返せない過去のことを考えるのは止める。「これから頑張ればいいさ」などと先の分からない未来のことを話題にするのも良くない。
・ 「薬に頼るな」:薬でコントロールすることも必要であると理解する。
・ そのほかの禁句:「いつになったら治るの」「怠けているんじゃないの」
うつ病患者さんとの接し方
まずは相手の話を聴く。見守る気持ちで接する。手助けしたいと伝える。
・ いつも通りに接する:特別扱いしないで普段通りに接する。
・ 重大な決断はさせない:退職や離婚など重大な決断を口にしても、決定は先送りにさせる。
・ 出来ないことは手助けする:家事や身の回りのことなどできなくなっていることは援助する。
・ 励ましすぎない:励ましすぎるとかえって患者さんの気持ちを追い詰めてしまう。
・ よく話を聴いて受け止める:患者さんの言うことを否定しないで良く聴いて受け止める。
・ 受診をサポートする:受診のきっかけをつくったり、通院や服薬の管理など必要に応じて手助けをする。
うつ病の原因
同じストレスを受けても、うつ病になる人とそうでない人がいます。
人それぞれ性格も育った環境も違いますから、ストレスに対処できる許容範囲も違うのです。
ストレスを受けてもうまく解消できる人はうつ病にはなりません。
まじめで几帳面で一生懸命頑張る人の方がうつ病になりやすいのです。
頑張りすぎてストレスを発散させることも忘れているからです。
知らないうちにストレス量が多く貯まり、処理しきれなくなってしまうのです。
うつ病の治療
薬物療法が効果があります。
そして何より、休養と安静が必要です。
抑うつ気分を我慢して、早く仕事に戻ろうと焦ることは駄目です。
うつ病の特徴は自殺願望があることです。
症状が良くなったり悪くなったりを繰り返しながら治っていきますから、焦りは禁物です。
医師との信頼関係を持ち薬は必ず内服することが大切です。
症状が良くなったからと言って勝手に中止することはいけません。
怠けているのではなく病気だという事を自覚して、休養をとる必要なあります。
うつ病の治療には、家族の理解と職場のスタッフの理解が必要です。
うつ病時の職場復帰は無理せず本人の症状に合わせて行うことが大切です。
十分休養をとることが出来る環境にするために、周囲の人は協力が大切です。
うつ病の改善策
ストレスは我慢せず、自分なりのストレス解消法を見つけることが大切です。
家族にも職場の人にも、嫌なことははっきり嫌と言えるようになることが大切です。
我慢せずできないことはできないという事が、病気予防の為には必要です。
肉体労働の人は休みの日にはしっかり休養をとることが大切です。
肉体の疲労は精神の疲労にもつながります。
うつ病になる人は頑張り屋が多いですから、自分で気づかないうちに病気になってしまっていることが多いのです。
予防の為には精神的休養が必要です。
うつ病の看護
うつ病の人の言葉をとりあえずすべて受け入れます。
否定しては駄目です。
そして、人格を尊重します。
うつ病の人は自分を卑下しやすいですから、そのようなことはないことを伝えます。
自殺行為に注意し絶えず見守りします。
症状が良くなってきたと言っても油断は禁物です。
薬を確実に飲んでいるか確認します。
小さな症状の変化も見逃さず情報として、医師に連絡します。
怠けているのではなく病気なのだから安静が必要であること、休養が必要であることを伝えます。
ゆっくり休息できるように環境を整えてあげます。
うつ病予防にはストレス解消対策が肝心です。
看護師がうつになりやすい理由
看護師はうつになりやすいと言われます。その理由については看護師の複雑な仕事内容によるものと、女性が殆どの職場の人間関係によるところが大きいようです。具体的に挙げてみます。
看護師うつの原因と理由
- 自分が行った看護師としての仕事の責任が重くのしかかる。
- ミスをしないように注意するので精神的に疲れる。
- 体調が悪かったり疲れた時でも、人員不足のせいで無理に出勤してしまう。
- 自分の体調が悪い時でも、休むと他のスタッフの迷惑になると思い休養をとらずに仕事をする。
- 体調が悪い時でも看護師長など上司に遠慮してしまい休みの要求が言えない。
- 自分の受け持ちの患者さんの看護計画立案やカンファレンスなど、責任ある仕事が多い。
- チームで業務をこなすので、他のスタッフに迷惑をかけないために自分の仕事は後回しになり、時間外勤務になることもしばしばある。
- 時間外勤務になっても時間外手当をもらえないことが多い。
- 家庭と仕事の両立をしている場合、子育てをしている看護師の場合など体力的に負担が多い。
- 看護師の仕事は勤務時間が不規則なため、自由時間も不規則で友人たちとの交流も十分できなくなることがある。
- 医療も看護も進歩している為、定期的に研修会に出席したり勉強をする機会が多くなる。
- 看護師の職場は女性が多く働いている為、人間関係が複雑になり他のスタッフとの人間関係が良好に保てないことがある。
- 看護師以外の医療職員も多く同じ職場に勤務している為、たくさんの人と人間関係を持たなくてはならない。
- 患者やその家族との人間関係を良好にするために精神的に苦労することがある。
- 夜勤業務も多く、仕事も多い職場では、精神的にも肉体的にも疲労している時でも休暇がもらえないことがある。
- 患者さんとゆっくり接することが出来ず、自分の考えていた看護と職場の看護の仕事が一致せず悩むことがある。
- 職場のスタッフや家族との生活をスムーズにこなすために、我慢することも多くなる。
以上に、大まかに予測される看護師うつの原因についてあげてみましたが、看護師によってその原因はさまざまに異なり、看護師の働く環境によって、その原因もまだまだ多くあると思います。
看護師うつの症状
- 休日に十分寝たはずなのに体がだるくて起きたくないし、何もする気力がない。
- 職場に行こうとするとますます体がだるくなったり、お腹が痛くなったり吐気がしたりする。
- 人と接するのが億劫になり、職場の行事などにも参加したくなくなる。
- 仕事に出かけたくなくなったり、出勤してもミスが多くなる。
- 疲れていてオシャレや化粧もしたくなくなり料理もしたくなくなる。
- 活気や笑顔が少なくなる。
- スタッフや患者さんと話をするのも疲れる、話したくないという気持ちになる。
看護師うつの対処法
- ストレスを発散させる方法、ストレスを解消できる方法を身につけておく。
- 体調の悪さを看護師長や上司に正直に話し、休みをもらう。
- 看護師長に、夜勤の回数を減らしてもらうなど勤務変更を頼む。
- なかなか体調が良くならない時は長期の休暇を依頼する。
- 職場の人間関係に問題がある時は、他の病棟などに勤務場所の移動を申し出ておく。
- 夜勤がない職場への転職を考える。
- 勤務時間が長くて疲労が取れない時には、非常勤を募集している医療機関を探す。
- 非常勤で他の職場に勤務し、精神的肉体的疲労を取り去ってから元の職場に戻る。
- 看護師転職サイトなどを利用する。
参考資料:「うつ病のベストアンサー」
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