喘息患者の看護計画

呼吸器系看護計画

目次

#1気管支の狭窄による喘鳴と呼吸困難発作がある

目標:発作の早期発見に努め、喘鳴が少なく呼吸数が20回/分程度に安定し、チアノーゼがなく自覚的に息苦しさがない

OーP(観察)

1 VS、RR、努力呼吸の有無、湿性ラ音、呼吸の長さ、大きさ、胸郭の動き

2 顔面、口唇、爪のチアノーゼ、四肢冷感、冷感、喘鳴の有無、咳の様相と声調

3 検査所見:喀痰、末梢血液一般、アレルゲンの疲内テストの結果、血液ガスの結果、電解質バランす、呼吸機能検査では閉塞性換気障害を呈す

4 家族歴、じんましん、湿疹、鼻アレルギーや小児ぜんそくの既往

5 発作誘発のアレルゲン、起こしやすい季節や時間帯、患者の性格

6 飲水量、尿量、脱水の有無

TーP(実施)

1 安楽な体位を保つ:ベッドを挙上し起坐位とする、安楽枕やオーバーテーブルの使用

2 喀痰喀出を図るため水分を十分に補給しドレナージ、吸入を行う

3 乾性ラ音の強いときは医師の処方で気管支拡張剤を使用する

4 チアノーゼを認め血液ガス不良時はCO2ナルコーシスに注意し酸素吸入を施行する

5 発作を誘発させる因子を除去する(室温の差、香りの強い花、不安や心配恐怖心)

6 吸入などで発作の治まらない時は医師の処方で気管支拡張剤を使用する

7 発作時は必要以上の会話をさせないように配慮する

EーP(教育)

1 アレルゲンに近づかないように指導する

2 安楽な体位、有効な咳の仕方、腹式呼吸の指導をする


#2発作時すぐ死につながる恐怖感や呼吸困難による不安が強い

目標:不安と緊迫感がなく安楽な呼吸ができる

OーP(観察)

1 チアノーゼ、顔色、発作の程度、表情、言動、体位

TーP(実施)

1 ナースコールがあれば直ちに訪室する

2 発作が軽度の場合はリラックスさせ精神的緊張をときほぐす

3 呼吸困難著明時は患者のそばを離れない、また勇気づける

4 患者が家族を求める時は特別面会を許可し少しでも安心感を与える。

5 呼吸困難が緩和されないと死につながる恐怖心が取れないため、直ちに医師に報告し適切な処置をする

#3気管支拡張剤、去痰剤による副作用が出やすい

目標:VSが安定しており動悸がせず、痰がねんちょうでなく喀出がスムーズにできる

OーP(観察)

1 各薬剤の作用と副作用を知る

a 喀痰溶解剤:塩酸ブロムヘキシン、副作用:吐気、頭痛、発疹、胃部不快

b 消化酵素剤:塩酸リゾチウム、副作用:悪心、嘔吐、下痢

c 気管支拡張剤:アミノフイリン、副作用:頻脈、心悸亢進、顔面紅潮、眩暈

TーP(実施)

1 気管支拡張剤を吸入で使用した場合、量に十分注意し動悸頻脈に注意する

2 注射の場合は直ちに副作用が出現する為ゆっくり点滴する

3 内服の場合は定期的に内服できるように時間に気を付ける

4 吸入後は口内炎の発生を予防する為含嗽させる

5 抗ヒスタミン剤は痰の粘調性を増し、喀痰喀出困難を増強させるために注意する

EーP(教育)

1 吸入に関する注意点の説明を行う:

a 深く吸入する

b 動悸を感じたら中止する

c 吸入後は含嗽する

#4上気道感染、肺炎による発熱と苦痛がある

目標:体温が37度前後に安定し、呼吸困難、脱水を起こさない

OーP(観察)

1 VS

2 呼吸困難の程度、チアノーゼの有無

3 胸痛や頭痛、倦怠感や食欲不振

4 尿量、水分バランス

5 意識レベル

6 レントゲン所見、検査データ:WBC上昇、CRP上昇、血液ガス濃度

TーP(実施)

1 心身の安静

2 室温や湿度を整える

3 悪寒戦慄時は湯たんぽや電気毛布を使用し安楽に努める

4 エネルギーの消耗を防ぐためADLを援助し発熱時は早急に解熱に努める

5 会話による苦痛を防ぐため患者の要求を早く察知する

6 脱水をきたしやすいので水分の補給:必要時医師の指示で補液する

7 高熱時は氷枕で苦痛を緩和する

8 高熱時口腔に粘液がたまり口渇があるため含嗽を介助し、補正と乾燥防止に留意する

9 抗生物質使用時はアナフィラキシーショックに注意する事前に疲内テストをチェックする

10 必要時血液培養の介助をする

EーP(教育)

1 医師の指示に従い積極的に水分摂取することを説明する

2 喀痰喀出の必要性と方法を指導する

3 腹式呼吸の必要性と方法を指導する

#5呼吸困難が高度で重責発作を起こす

目標:呼吸が安楽で死に対する恐怖心がない

OーP(観察)

1 VS(RR、努力呼吸の有無)、乾性ラ音、胸郭の動き、呼吸の長さ、おおきさ

2 顔面口唇爪のチアノーゼ、喘鳴の有無、四肢冷感

3 検査データ:血液ガスの結果、電解質バランス

4 脱水状態:皮膚粘膜の乾燥、口渇、尿量

5 循環動態:血圧、尿、心電図モニタ、経静脈怒張

6 精神状態:患者の表情、言動、意識レベル

7 発作誘発のアレルゲン、発症時刻と経過

TーP(実施)

1 血液ガスの結果でCO2ナルコーシスに注意し酸素吸入を行う

2 患者の好む安楽な体位、姿勢をとらせる:ギャッジベッドで起坐位をとる。安楽枕を使用し苦痛部位の緩和:オーバーテーブルによりかからせ前屈位をとる

3 ADLは全介助都市欲求をいち早くキャッチする

4 発作時は死への恐怖感が強いため家族の面会を許可。不必要な談話は避ける

5 看護師は落ち着いた態度で接し傍をはなれない

6 発作の程度により緊急を要する場合:

a 直ちに気管内挿管を行うため、その準備と介助をし呼吸管理をする:気管支けいれんの時は肺が固くなっているため、直ぐ人工呼吸器に装着せずアンビューバックで様子を見る:肺が膨らまない時は麻酔器を準備する

7 喘鳴の部位を確認の上、十分吸引する

8 挿管中は、院内感染予防対策の呼吸管理のパンフレットを参照し感染防止に努める

#6退院後、発作を起こさないための自己管理を行う必要がある

目標:発作の原因を知り自己管理ができる

OーP(観察)

1 患者の理解度、不安となっている部分

2 家族の受けいれ

TーP(実施)

1 退院指導と共に意欲と自信を持たせる

2 乾布摩擦、冷水摩擦、日光浴などは経験的効果が認められているが、主治医と相談する

EーP(教育)

1 退院指導:

a アレルゲンとなる物質に近寄らない

b 含嗽の励行

c ペット類の飼育、羽毛布団の使用は避ける

d 喫煙は咳嗽を誘発し、分泌物の増加を助長させるため禁煙

e 官房により喘息が誘発されることがあるので、上気道感染に注意する。

f 発作が起こりそうな時はリザクレーションをし心因性発作を予防する

g 過労や不眠は誘因の一つになるので注意する

h 腹式呼吸の呼吸訓練をする

i 室内の掃除は掃除機を使わず拭き掃除にする

j 退院までに喘息体操をマスターする

k 喘息手帳に発作の状況を記録し常に携帯する

参考資料:標準看護計画

アセスメントの視点と根拠・起こりうる看護問題

1全身状態の把握

起こりうる看護問題:ぜんそく発作による呼吸困難、喘息発作に関連して換気が適正に行えない

患者から身体的心理的な状態を聞き検査データと合わせて重症度を判定することで包括的なケアを行うことができる

・ 全身状態の把握⇒呼吸数、呼吸の深さ、咳、痰、補助呼吸筋の使用、起坐呼吸、姿勢

・ 発作の原因、寄与因子、増悪因子を把握する

・ 発作の回数と過去の経過を把握する

・ 処方薬の服薬・吸入を指示されたとおりに実施しているか把握する

・ 酸素化の把握、チアノーゼの有無を把握する

・ 酸塩基平衡の把握

・ 血圧

・ 不安、恐怖心

・ 心理的ストレス

2症状の部位、出現状況、程度の観察

起こりうる看護問題:水分摂取が不足することで痰のねんちょう度が増し、気道浄化が困難

低酸素血症の出現、急性呼吸不全の程度を把握することでぜんそく発作の重症度を検討し、治療計画、看護計画の立案にいかす

・ 呼吸困難は主観的な訴えであるため、客観的スケールも利用する

・ 低酸素血症の程度はPaO2測定により把握する必要がある

・ 痰の増加、ねんちょう度の高い痰、気管支けいれんにより効果的な気道浄化ができなければ低酸素症、急性呼吸不全を生じることになる

(チアノーゼ)

共同問題:低酸素血症

・ 口唇、爪床の観察を行う

・ 皮膚の発汗、興奮状態、意識の低下は低酸素の可能性がある

(呼吸困難)

共同問題:低酸素血症

・ 主観的呼吸困難の評価指標である修正版ボルグスケールなどで評価する

(起坐呼吸)

起こりうる看護問題:随伴症状に関連したQOLの低下、不安の増大

・ 呼吸困難のため臥位をとれない状態となる。姿勢は前かがみになることが多い

(補助呼吸筋の使用)

起こりうる看護問題:補助呼吸筋の使用に伴う疲労

・ 胸鎖乳突筋、僧帽筋などを用いて呼吸している状態である

(呼吸音・喘鳴)

起こりうる看護問題:水分摂取が不足することで痰のねんちょう度が増し、気道浄化が困難

・ 呼吸音を聴診し、肺への空気の出入りを把握する

・ 気管支の痰の貯留により喘鳴が現れる

・ 水分摂取量の低下により痰のねんちょう度が増し喀出を困難にする

3薬の効果の観察

起こりうる看護問題:薬物療法に関する自己管理が不適切である

吸入、内服、貼付薬の効果が表れているかどうかを観察する。薬の効果が見られない場合にはその原因を客観的に評価して、医師に相談の上治療方法を再検討するか、患者の服薬コンプライアンスを揚げるなどの対応が必要になる

・ 急性期には呼吸困難、酸素飽和度、喘鳴を指標に薬が効いているかどうかを観察する

・ 安定期にはピークフローを1日2回測定し症状の改善や発作予防の効果を観察する。薬が効いていない場合は薬の種類や量を変更するか、患者の薬物管理に問題がないかどうかを明らかにする必要がある

4患者家族の心理・社会的側面の把握

起こりうる看護問題:喘息発作の増悪因子であるストレスに適切な対処ができない、患者家族が喘息発作に不安を持っている

患者家族が喘息についてどのように認識しているかを確認する。服薬コンプライアンスにも関係し治療効果や治療継続の可能性にも影響をあたえるからである。治療を中断すると喘息死する可能性もあるため、治療継続の重要性について十分に説明する。また患者家族が不安を感じている場合には、精神的な援助を継続しなければならない

・ 喘息発作の状況について患者家族から聞き、今後の不安について把握する

・ 原因、寄与因子、増悪因子について説明し生活環境の中でどのような発作因子が存在するか考えてもらい、自宅や初期乳母などの環境整備を行い日常生活を送ることができるように説明する

・ 長期にわたる疾患管理のために精神的支援が重要であるため、患者や家族への支援を行う

参考資料:標準看護計画

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