#1肝機能低下に関連し全身倦怠感がある
目標:倦怠感の強いときは報告でき、適切な日常生活の援助が受けられる
OーP(観察)
1 全身倦怠感と疲労感
2 患者の言動と表情
TーP(実施)
1 安静度が制限されればその保持に努め、身の回りの介助を行う
2 倦怠感が強いときは患者の好む安楽な体位をとってもらう
EーP(教育)
1 安静の必要性を説明する
2 苦痛が増強する時は報告するように説明する
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#2門脈圧亢進症、低アルブミン血症による腹部膨満感、腹水、浮腫がある
目標:腹部膨満感の強いときは報告でき、日常生活の援助が受けられる
OーP(観察)
1 腹部膨満、腹痛、呼吸状態
2 浮腫の程度、下肢の倦怠感
3 尿量、水分摂取量のチェック、体重、腹囲測定
4 利尿剤の効果、口渇皮膚状態、排便排ガスの有無
5 検査データのチェック
TーP(実施)
1 安静が小させ、安楽な体位を工夫する。腹部膨満により呼吸運動を妨げないようにファーラー位とし掛物の調節をする
2 衣服はゆったりとしたものを使用し、下着のひもやゴムは緩めのものを使用する
3 自力で体位を変えられない時には2時間ごとに体位変換を行う。仙骨やかがと肘など圧迫のかかりやすい部位は1日に2回ほどアルコール清拭を行って循環を良くする
4 下肢浮腫の強いときは枕を使用し、下肢を挙上し倦怠感やうっ血の軽減を図る
5 食事は塩分制限を行う:1日5~8グラム以下
6 利尿剤の正確な与薬
7 カロリーとビタミン摂取量を維持する
8 腹水穿刺を行う時はショックの出現に注意し医師の指示によりVSのチェックを行う:脈拍の増加、呼吸状態、失神等
9 腹水穿刺後の液漏れの有無を観察する
EーP(教育)
1 飲水制限があれば範囲内にとどめるように指導する
2 塩分を多く含む食品は避ける
#3黄疸に起因する掻痒感がある
目標:適切なケアを受けることにより掻痒感が軽減することが出来る
OーP(観察)
1 皮膚、皮膚の黄染、眼球の黄染、かゆみ
2 尿の黄染、白色便の有無
3 検査データのチェック:ビリルビン値
TーP(実施)
1 患者に合った保清:入浴、シャワー浴、清拭
2 発汗が多いときは乾布清拭を行う
3 掻痒感がある時はアルコール清拭をしたり、効果のないときは医師の指示に基づき内服、注射、軟膏の使用を行う
4 夜間不眠時は眠前に清拭したり眠剤の与薬を行う
5 不安を助長するような言葉は慎む
EーP(教育)
1 下着は肌を刺激しない綿を含むものを使用する
2 爪は短く切っておく:必要時手袋を使用する
3 掻痒感増強時うあ不眠時は報告するように説明する
#4血小板の減少により出血傾向がある
目標:出血が予防でき、出血時は速やかに予防できる
OーP(観察)
1 皮下出血:点状出血、斑状出血
2 粘膜出血:口腔粘膜の出血、歯肉出血、鼻出血
TーP(実施)
1 外傷を避けるために環境を安全に保つ:ベッド周囲の整理整頓
2 採血注射後は圧迫を十分にし止血を確認する
3 駆血帯の締め過ぎを避け、うっ血を防ぐ
4 便の性状を観察する
5 止血検査のデータチェック
EーP(教育)
1 歯ブラシは柔らかいものを使用し強くこすらない
2 鼻は強くかまない
3 体を洗う時は硬いタオルで強くこすらない
#5腹腔鏡検査に対する不安がある
目標:腹腔鏡検査の必要性が理解でき、不安は言葉で表現できる
OーP(観察)
1 検査前の患者の訴え、表情、睡眠状態
TーP(実施)
1 腹腔鏡検査について
a 前日オリエンテーション:床上排泄訓練、剃毛、眠前下剤、眠前与薬
b 検査当日排便がなければ浣腸施行、朝食絶食
c 指示どうり前与薬施行
d 検査後
・ VSチェック、発熱、血圧低下、脈拍増加、腹痛、腹部膨満、皮下気腫
・ 安静:6時間体動不可、翌朝まで絶対安静、医師診察後トイレ歩行
・ 食事:医師指示による
・ 疼痛:痛みが強ければ鎮痛剤を与薬
・ 排泄の介助をし適宜尿器交換
・ 創部の状態を毎日ガーゼ交換し観察、術後7日で抜糸
EーP(教育)
1 腹痛や腹部膨満が増強する場合は報告するように指導する
#6食道静脈瘤があり、破裂の危険性がある
目標:破裂の予防が出来、異常時は適切な処置が受けられる
OーP(観察)
1 吐血、下血、静脈瘤の程度、部位、破裂の危険性
TーP(実施)
1 患者の理解力に応じて説明し必要以上に恐怖心や不安を抱かせない
2 心身の安静及び不安の除去
a 患者の訴えを十分に聞き苦痛や精神的負担を少なくして励まし勇気づける
b 神経を高ぶらせるような態度、行為を避ける
e 誠意をもって接し信頼感を深めるようにコミュニケーションを図る
3 機械的損傷、誘因の除去に努める
a 吐血後しばらく絶食とし、流動食から徐々に進める
b 咀嚼を十分させ、固形物の嚥下を避けるようにする
c 便通を整える:必要時医師の指示で下剤を与薬
4 食道静脈瘤破裂時の看護
a 絶飲絶食とする
b 吸引や顔を横に向けるなどし誤嚥を避ける
c 止血剤、輸血、輸液の管理
d VSチェック
e ショックの予防と救急処置
5 硬化療法の看護
a VSチェック
b 出血:吐血下血に注意
c 腹部症状の観察
EーP(教育)
1 吐血時は臥床させ血液は飲み込まないように話す
2 食事は極端に熱いもの硬いもの、角ばったものは避けるように説明する
#7肝性昏睡に移行する可能性がある
目標:手指振戦、排便、異常等の悪化徴候のある時は報告できる
OーP(観察)
1 意識障害、異常行動、尿便失禁、けいれん、血圧上昇、羽ばたき振戦
2 水分出納、電解質のバランス
3 VS
TーP(実施)
1 排便習慣を促し便通の調整をはかる
2 水分出納、電解質のバランス管理
3 VS、意識レベル、体重チェック、一般状態の観察
4 皮膚粘膜を保護し口腔内の清潔にも注意する。失禁時臀部や陰部にも気を配る
5 抗アンモニア血症またはその兆候があれば蛋白質制限、ラクツロースの内服、注腸を医師に指示により行う
6 精神症状を伴い意識レベル低下を認めたら直ちに医師に報告し危険防止に努める
7 興奮状態であれば危険防止にと止める:必要時抑制帯使用
EーP(教育)
1 気分不快があれば直ちに看護師に報告するように説明する
#8寛解と憎悪と入退院を繰り返し経過が長く不安が大きい
目標:不安に思っていることを言葉で表現でき、精神的に安定した状態になる
OーP(観察)
1 患者の言動、表情、睡眠状態
TーP(実施)
1 頻回に訪室し患者とのコミュニケーションを多く持つ
2 あらゆる場面で励まし患者自身が病気を受け入れられるように援助する
3 患者家族ともコミュニケーションを持ち、信頼関係を持つようにする
4 不眠時医師の指示により睡眠剤の与薬を行う
5 医師より疾患について説明してもらい、治療に対し不安感を持たないように考慮する
EーP(教育)
1 不安なことは何でも看護師に伝えるように説明する
#9病識がないために食事療法が守られにくい
目標:正しい食事療法が実践できる
OーP(観察)
1 食事への関心と理解度
EーP(教育)
1 栄養指導を行う
a 高たんぱく、高カロリー、高ビタミンをバランスよくとる
b 標準体重を維持し肥満にならないようにする
2 栄養指導を栄養士から受ける
3 規則正しい食習慣、食後の安静の徹底を指導する
4 禁酒の徹底
a 飲酒により悪化することを理解させる
b 家族の協力を得る
5 食道静脈瘤がある場合
a 食事はよく噛みゆっくり食べる
b 固いものや熱いものは避ける
6 浮腫がある場合
a 食塩を多く含むものは避け薄味にする
b 水分制限をする
#10病識がなく退院後の生活指導が守れない
目標:自ら生活管理ができる
OーP(観察)
1 病気への理解度と感心
TーP(実施)
1 治療が中断すると必ず悪化することを理解させ、自己診断で中止せず医師の指示に従う
EーP(教育)
1 肝臓パンフレットを用いて指導する
2 定期検診の必要性を指導する
3 薬物療法の必要性を理解させ、正しい服用方法と自己管理を指導する
参考資料:標準看護計画
アセスメントの視点と根拠・起こりうる看護問題
1症状の有無と程度の観察
起こりうる看護問題:食欲不振、タンパク質・資質・糖質の代謝障害、ビタミンの貯留障害、下痢に関連した栄養摂取困難
肝硬変初期は症状が自覚されにくいが、肝機能低下に伴い多彩な症状が出現すると疾患の進行が把握でき、治療・看護計画立案に重要である
・ 肝硬変の重症度
・ 疾患に伴う症状:全身倦怠感、体重減少、発熱、雲上血管拡張、手掌紅斑、皮下出血班
・ 消化器症状:食欲不振、悪心、嘔吐、腹部膨満感、排便状態、腹痛、吐血、下血
起こりうる看護問題:門脈圧亢進、膠質浸透圧低下、ナトリウム貯留した関連した腹水と浮腫/腹水貯留に続発する横隔膜圧迫に関連した呼吸機能障害のおそれ
・ 胆汁うっ滞:黄疸はビリルビンが過剰に体内に蓄積された状態である
肝硬変では長期の短銃うっ滞自体が憎悪因子になるため重要な観察視点である
・ 腹水浮腫:体内の水分は血管内・外に分かれて一定の比率を一定範囲に保っているが、比率の保持困難により浮腫、腹水が生じる
起こりうる看護問題:病因・誘因による肝硬変の重症化のリスク/プロトロンビン産生、血液凝固物質産生
・ 肝性脳症:肝機能障害によるアンモニアを代表とした中毒物質の血中濃度上昇によりおこる代謝性意識障害で、肝機能の回復や誘因を除去できれば意識は回復することが多い
・ 肝性脳症の重症度:軽度(忘れっぽさ程度)中等度(特有の羽ばたき振戦)高度(著名な見当識障害、失禁昏睡)
・ 脳症に対する患者と家族の受け止めと理解:初の脳症発症では家族の動揺が大きく両社に配慮した説明を行い理解の程度を把握する必要がある
・ 肝性脳症の鑑別:脳血管障害、脳炎、低血糖、薬物中毒、てんかん、病的酩酊、アルコール性離脱症状などであり、フイジカルアセスメントや検査所見から把握する
・ 慢性再発性脳症:門脈ー体循環シャント量が大きく巨大な胃静脈瘤を合併していることがあり、所見や他の疾患との鑑別にも注意する
・ 門脈圧亢進:側副血行路の拡張、食道静脈瘤、脾機能亢進、脾機能亢進、皮下出血、肝性脳症の徴候、下肢浮腫
・ 食道静脈瘤:門脈圧亢進により門脈系と体循環系が接近している部位である伊噴門部と肛門に後発する
出血しない限り無症状だが、肝硬変患者は内視鏡検査を行い定期的に静脈瘤の有無が確認される
・ 吐血下血はすべて静脈瘤とは限らず、消化管潰瘍からの場合も多く、内視鏡による出血減の確定結果の把握と治療法の予測が大切である
・ 検査データ:血清酵素、血清たんぱく、血清アンモニア、電解質、肝機能検査、肝生検など
2心身への影響の観察
起こりうる看護問題:肝硬変の多様な症状に伴う苦痛/病状や治療によるADLの制約/外観の変化に関連したボディイメージの低下
肝硬変による症状は身体的、心理的、社会的側面に影響を及ぼすため、全体的な観点から症状が及ぼす影響を把握し、トータルなケアを行うことが有効である
・ 心身への影響の有無と程度の観察:身体的苦痛の有無・部位・程度、精神的苦痛やストレスの有無と程度・内容、社会経済的な負担・不安の有無と程度
・ 疾患や治療の理解と受け止め
3合併症の徴候の観察
共同問題:食道胃静脈瘤、出血傾向、乾性脳腫、感染、肺血症、糖尿病、肝不全、肝がん、肝腎症候群など
肝硬変による合併症は生命危機に直結するものが多いため、予防と早期発見が重要であり、合併症の徴候は優先度の高い観察項目である
・ 合併症の有無と症状、徴候の観察
・ 肝機能低下の進行、難治性腹水、肝性脳症の頻回な発症
・ 食道静脈瘤などの消化管出血:生命にかかわる重大な合併症であり単に出血多量だけでなく出血性ショック後の肝機能低下、腎不全や誤嚥性肺炎も死因となりうる
・ 肝細胞癌:近年の治療の進歩により合併症のコントロールがある程度可能になってきた
現在の肝硬変患者の死因の1位は肝細胞癌である
診断後の生存期間は伸びてきたが発がん予防や早期発見が重要である
4病因、原因の把握
原因が異なっていても肝硬変の基本的な病態や症状は同じであるが、経過には多少の相違がある
・ ウイルス肝炎による肝硬変:慢性化するB型とC型肝炎ウイルスが肝硬変に寄与する
C型は加齢とともに徐々に肝硬変へ進行し、C型肝硬変は年7%と高頻度に関癌になる
B型はC型に比し個人差が大きく長期間安定した経過をとる人、若年で肝がんを合併する人、急激に肝不全に陥る人がいる
・ アルコールによる肝硬変:継続的な飲酒発作による黄疸、消化管出血などの経過を繰り返しながら、徐々に肝不全が進行し腎不全も伴うこともあるが癌化は少ない
内科的治療と同時に断酒が重要であり精神的アプローチが必要である
・ 自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変などの自己免疫性疾患による肝硬変は、非代謝期に移行する生体肝移植の適応となる
・ 非アルコール性脂肪肝炎は欧米化した食習慣に起因した脂肪肝から肝硬変に進展したもので、少数だが今後増加する恐れがあり生活指導が重要である
5患者背景の把握
起こりうる看護問題:肝硬変の憎悪因子の知識不足や療養生活の長期化に伴うセルフケア困難
肝硬変は日常生活で肝臓に負担をかけない習慣を保つことが大切であり、個々の患者の背景を良く知ることが指導上欠かせない
・ 患者情報:現病歴、生活様式、食生活、飲酒、清潔習慣、排泄週刊、既往歴、常用している薬物、家庭や社会での役割経済状況など
6療養生活が及ぼす影響の把握
起こりうる看護問題:疾患の難治性、進行性によるよぼに対する不安や葛藤
肝硬変は難治性、進行性の疾患で長期にわたる療養生活を要し、人生に大きな影響を及ぼすため疾患や予防の受け止めや、それらの精神的影響の把握が必要である
・ 疾患や治療の受け止め、療養生活の受け止めや取り組み、医療者との関連性
参考資料:疾患別看護過程
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