胃・十二指腸潰瘍の看護目標
1 疼痛や苦痛の緩和を図る。
2 心身の安静が保持できるように努める。
3 疾患の原因・誘因が分かり、生活習慣を整えることが出来るように援助する。
4 再発防止の為の自己管理ができるように援助する。
胃・十二指腸潰瘍の観察事項(OーP)
1 全身状態:体重減少、貧血。
2 腹部症状:腹痛の有無・部位・程度、吐き気・嘔吐・吐血の有無。
3 排便状態:便の性状、出血の有無。
4 食事の摂取状況及び嗜好品。
5 薬物療法後の症状の変化、副作用の有無。
6 日常生活習慣。
7 精神的ストレスの有無。
8 検査データ。
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胃・十二指腸潰瘍の援助事項(TーP)
1 心身の安静。
・疼痛時、医師の指示薬を使用する。
・絶食時、輸液の管理。
・環境の調整。
・精神的ストレス因子の除去。
2 食事療法。
・高カロリー高タンパクで刺激が少なく消化の良い、胃に負担のかからないもの。
・胃粘膜の直接刺激になる食物を避ける(繊維の多い野菜、コーヒー、アルコール、炭酸飲料など)
・規則正しい時間にゆっくり噛んで食べる習慣をつける。
3 薬物療法。
・薬が正しく服用できるように説明する。
・副作用の出現時には直ちに医師に報告し早期に対処できるようにする。
4 検査・処置の援助。
・協力が得られるように十分な説明を行い不安の除去に努める。
胃・十二指腸潰瘍の指導事項(EーP)
1 定期受診の必要性について説明する。
2 服薬の必要性について説明する。
3 食事療法の必要性について説明する。
4 生活上の注意点について説明する。再発予防とその誘因除去。
5 禁酒の必要性について説明する。
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より細かな問題点を挙げていくと以下になります。
#1上腹部、心窩部痛があり苦痛である
目標:安楽な体位の工夫及び心身の安静に努めることで、痛みが軽減する
OーP(観察)
1 胃部腹部症状、ピロリ菌の存在の有無
2 痛みの時間と食事の関係
3 食事摂取量
4 便の性状
TーP(実施)
1 衣類を緩め、腹圧を高める事は避け患者の好む体位を工夫する
2 痛み増強字は医師に報告する
EーP(教育)
1 胃の安静を保つため食後30分から1時間の安静を説明
2 痛み増強字は報告するように説明する
#2出血穿孔をおこしショックに陥る可能性がある
目標:以上の早期発見に努め、異常時は適切な処置が受けられる
OーP(観察)
1 VS、顔色、チアノーゼ、意識状態
2 心窩部痛、吐気、嘔吐、腹部膨満、吐血や下血の有無と性状
3 尿量のチェック、検査データのチェック
TーP(実施)
1 出血を起こした場合は速やかに医師に報告し指示を仰ぐ:血管確保、胃洗浄の準備、酸素の投与、ECGモニタ、自動血圧計の装着
2 衣類を緩め、腹圧を高めることは避けるように体位を調整する:下肢を曲げると腹圧が下がり腹壁の緊張をとることが出来る
3 手術の適応となる場合は、医師より十分な説明をしてもらい、精神的動揺を最小限にするように援助する
4 術前オリエンテーションは十分に行い、患者が理解できているか確認する
5 落ち着いて雰囲気をつくり、言動に注意するとともに患者の精神的な援助をする
EーP(教育)
1 困ったことや不安なことがあれば相談する
#3不安やストレスが誘因となり疾病に影響を与える可能性がある
目標:ストレスや不安の原因となる因子を避ける工夫が自ら行え、精神的に落ち着いた状態で入院生活が送れる
OーP(観察)
1 ストレスや過労となる因子を把握
2 精神状態、患者の言動や表情
3 人間関係
4 家庭内の問題
5 睡眠状態
TーP(実施)
1 環境の整備に努め、落ち着いた雰囲気をつくる
2 ストレスや過労の原因となる因子があれば、家族の協力を得て取り除くように援助する
3 悩みを相談しあえるような人間関係をつくる
4 自分自身の性格(神経質、完璧主義)を内省できるようなコミュニケーションをとる
5 不眠が続くようであれば医師の指示に従い睡眠剤を与薬する
6 運動や趣味などで、ストレスの解消を促す
7 規則正しい日常生活を送る
EーP(教育)
1 休養や睡眠の必要性を説明する
2 困ったことがあれば一人で悩まずに相談する
#4食生活についての認識が不足しており食事療法が守れない
目標:食事療法の必要性を理解し、食生活を積極的に改善できる
OーP(観察)
1 食習慣(アルコールや嗜好品を含む)
2 食生活に対する知識
TーP(実施)
1 食事療法の必要性を認識させ、必要時栄養指導を依頼する
2 栄養指導後の理解度を確認する
EーP(教育)
1 規則正しい食習慣をつけるように説明する
2 刺激の強い食品は避けるように指導する(香辛料、コーヒー、濃茶、脂肪、塩分)
3 食事中は落ち着いた雰囲気でよく噛んで食べるように説明する
#5疾病に対する理解が不十分なため、再発の可能性がある
目標:疾病に対する知識が得られ、自己コントロールが出来て再発を予防することが出来る
OーP(観察)
1 疾病に対する知識や理解度
2 患者の言動や表情
TーP(実施)
1 疾病に対する医師のムンテラ後、どの程度理解しているかを確認し、不十分な点については補足する
EーP(教育)
1 疾患に対するムンテラを医師から十分にしてもらい、看護師は補足する
2 個々の患者の社会生活の中で、無理のない生活習慣を一緒に考える
3 薬剤を正しく服用し途中で中断しないように説明する
参考資料:標準看護計画
アセスメントの視点と根拠
1全身状態の把握
起こりうる看護問題:胃十二指腸潰瘍による組織損傷のための腹痛がある
主観的情報と客観的情報から、全身の系統的アセスメントを行い、患者の身体状況を把握する
(全身状態)
・ バイタルサイン
・ 身長、体重、BMI、腹囲、体重の変化
・ 検査データ
・ 皮膚粘膜の損傷や湿潤の有無、皮疹、掻痒感の有無
・ 貧血の程度、輸血の既往、出血傾向、感染
・ 既往症、入院に至るまでの経過、治療の経過
・ 消化性潰瘍の併発しやすい疾患の有無
(頸部、眼、耳、鼻、口)
・ 頭痛、めまい、頭部の外傷、意識状態、失神、けいれん
・ 視力障害、視力の変化、眼痛、腫脹や発赤、分泌物、緑内障白内障の既往、眼鏡使用
・ 聴力障害、聴力の変化、示通、耳鳴り、補聴器の使用
・ 鼻水、鼻閉、鼻出血、臭覚障害、副鼻腔炎の既往
・ 嚥下状況、口腔内粘膜、歯・歯肉、口内炎、歯肉出血
(呼吸・循環)
・ 動悸、息切れ、胸痛、不整脈、高血圧、浮腫
・ 酸素運搬能、呼吸音聴収
(消化器)
・ 食事、水分摂取量、食欲、空腹感
・ 嗜好品
・ 上腹部痛、心窩部痛
・ 食事と疼痛との関係
・ 悪心
・ 嘔吐、胸やけ、げっぷ、吐血・下血の状況、冷感、めまい
・ ショック症状
・ 腸蠕動音
・ 排便パターン、便潜血反応、下痢の有無
(腎臓・泌尿器・生殖器)
・ 排尿パターン
・ 尿検査値、便検査値、腎機能
・ セクシュアリテイや性的機能に関して感じている変化・問題
・ 性的関係の満足度、変化、問題の有無、パートナーとの関係
(骨格筋・四肢・知覚)
・ 四肢・体幹の運動機能、関節可動域、筋力、握力、歩行、姿勢の状態
・ 感覚(視覚、聴覚、味覚、臭覚、平衡感覚、触覚)
・ 痛みや不快感の有無、程度、対処方法
(日常性格とセルフケア)
・ ADL(食事、移動、入浴、排泄、更衣、整容など)
・ 仕事(時間、内容、活動強度、残業など)
・ 運動(時間、内容、頻度)レジャー活動
・ 睡眠(入眠時間、覚醒時間、熟睡感の有無、寝つき、夜間排尿回数、早期覚醒、昼夜逆転、日中眠気の有無、睡眠薬使用有無)
・ 休息・リラクレーション
・ 倦怠感や疲労感の有無
・ 喫煙、飲酒、コーヒー、過労、ストレス
2心理的状況の把握
起こりうる看護問題:疾患の再発防止のための行動がとれない
患者家族の疾患や治療に対する認識、ストレス対処行動、価値観や信念を理解する
(健康認識)
・ 現在の病状、検査、治療の受け止め、潰瘍に対する自覚の有無
・ 治療内容、期間、副作用の種類と程度、治療効果、治療への取り組みの様子
・ 健康に対して気を付けていること
・ 疾患に対する対処行動
・ 患者役割遂行状況(服薬、禁煙、禁酒など)
・ 生活指導に対する反応や理解
(自己知覚)
・ 自分自身の性格をどう思っているか
・ 疾患により自分自身や自分の身体についての感じ方が変化したか
・ 怒り、イライラ、恐怖心、不安、落ち込みの程度
・ 希望の有無、コントロール感の有無、対処方法
・ 全体的に見て人生が望み通りにいっているか、人生設計
・ 人生や生活で大切なこと、価値観、日常の宗教実践
(コーピングストレス耐性)
・ 発症前の1~2年間に人生の大きな変化や危機があったかどうか、どのように対処したか
・ 物事をじっくり相談する相手は誰か
・ リラックスするための飲酒喫煙をするか
・ 退院後の生活でストレスとなりそうなことは何か
・ ストレスへの対処行動はどのようなものか
3社会的状況の把握
起こりうる看護問題:疾患の再発防止のための行動がとれない
家族、仕事、社会的関係の中で、患者の主な役割と責任を理解する
・ 家族構成、同居者、家庭内での協力者、家事担当、者面会者の様子
・ 患者の職業、仕事内容、家庭内・職業・学校・社会活動での役割
・ 家族としての問題、家族の職業・仕事内容
・ 家族が患者の疾患をどのように理解しているか
・ 医療費、社会資源の活動状況、収入・支出に対する認識
参考資料:患者参画型看護計画。