胸腹部大動脈瘤患者の看護計画

循環器系看護計画

目次

#1症状の自覚がないため、破裂による生命の危険という認識がない場合がある

目標:現状を維持し破裂することなく手術を受けられる

TーP(実施)

1 動脈瘤の原因、状態により生活調整

2 感情の激動を避ける

3 運動制限:安静

4 環境の急激な温度差を避ける

5 食事:塩分制限、エネルギーの制限、動物性脂肪の制限

6 排便コントロール

7 高齢者が多いので安全面に留意

#2動脈瘤発生部位により圧迫症状、閉塞症状、疼痛が出現することがある

目標:苦痛を最小限にし症状の可逆性のあるうちに手術が受けられる

OーP(観察)

1 下肢動脈拍動確認、印をつけておく:鼠経部、膝窩部、足背、後脛骨動脈

2 冷感、しびれ感の自覚の有無、程度

a 冷感に対し靴下使用、温罨法:温罨法は局所の酸素の消費増加するため悪化させることがある

3 皮膚の色:下肢全体

4 冷感の触知、観察

5 入院時から下肢の運動範囲を確認しておき、麻痺症状の早期発見に努める

6 イレウス症状の出現の有無に注意:吐気、嘔吐、腹痛、腹部膨満

7 尿毒症による意識状態の変化に注意

8 尿量、尿、血液検査:BUN値上昇

TーP(実施)

1 水分出納チェック、尿量に注意

2 排尿障害に対処:留置カテーテル、時間導尿

3 直腸障害に対処:下剤服用、浣腸、摘便、腹部温罨法、水分摂取

4 せん足予防、褥瘡予防の為の体位変換

#3解離性の場合は状態により手術まで2~3カ月を要し、その間降圧療法などの適切な管理が必要である

目標:破裂助長因子である高血圧に対する血圧のコントロールが十分できる

OーP(観察)

1 血圧測定の為、動脈圧モニタリングの観察

a 血圧の変動観察

b カニューラ針が抜去しないよう固定確認

c カニューラ針が閉塞しないように滴下状態観察

2 血圧が下降しすぎると、脳への血流低下:意識状態に注意、腎不全肝不全に注意

TーP(実施)

1 日常生活調整

a 動脈瘤の原因、状態により生活調整

b 感情の激動を避ける

c 運動の制限:安静

d 環境の急激な温度差を避ける

e 食事:塩分制限、エネルギーの制限、動物性脂肪の制限

f 排便コントロール

g 高齢者が多いので安全面に留意

2 点滴による血圧コントロール

a 持続点滴によりコントロールしている場合、点滴ラインの管理:滴下状態、指示の薬剤の正確な与薬、感染予防

#4解離が生じる為に激痛が起こり苦痛が生じる

目標:痛みが軽減し不安が消失する

OーP(観察)

1 疼痛の部位、程度、持続時間の観察

a 前胸部、胸骨下部の激痛

b 背部痛

c 背部に放散又は腹部、下部、頸部、頭部と広範囲に痛みの放散がないか

2 VS:特に血圧の変動に注意する

3 ECG:異常がないことが多い

4 検査データの把握:CPK、LDH、GOT、GPT、CBC、ESR、電解質

5 心エコー、胸部レントゲン、胸部CT

6 分類の把握

a 1型:上行大動脈に発生した解離が総腸骨動脈にまで及ぶもので大動脈全体の解離

b 2型:上行大動脈に発生した解離が大動脈弓までで止まるもの

c 3型:鎖骨下動脈のすぐ下から発生した解離が総腸骨動脈にまで及ぶもの

7 鎮痛剤使用時の効果と副作用の出現

TーP(実施)

1 激痛に対しては鎮痛剤を使用する、麻薬使用時にはアンプルの管理に気を付ける

2 衣類など圧迫の原因となっている物は除き安楽な体位の工夫を行う

3 声掛けをしながら処置を行い不安の緩和をする

4 体動によるベッドからの転落に注意する

5 救急蘇生セットの整備を行い緊急時に備える

6 外科的治療を施行する場合は準備を敏速に行い移送する

EーP(教育)

1 疼痛の部位、程度の変化がある場合は伝えるように説明する

胸部・腹部大動脈瘤の治療〈2001年〉ステントグラフティングを中心に
by カエレバ

#5動脈瘤破裂の危険性があり安静の必要性がある

目標:ストレスなく安静保持が出来動脈瘤破裂を防止できる

OーP(観察)

1 VS

a 特に血圧の変動に注意する

b 医師の理想血圧範囲を知っておく

c 熱型の観察

d 脈拍の変動に注意

2 モニタ監視

3 動脈閉塞症状の観察

a 脈拍欠如、左右不同、四肢末梢の疼痛

b 脳せき髄性神経症状の出現

4 破裂の有無

a 疼痛

b 拍動性腫瘤の増大

c 出血部位の腫脹

d 下血

e ショック症状:顔面蒼白、冷汗、頻脈、呼吸促進

TーP(実施)

1 面会の制限を行い外界からの刺激を避ける

2 便通を整え努責を防ぎ、便秘がある場合は下剤でコントロールを図る

3 発熱時には冷罨法を行う

4 腰部痛がある場合は背中に小枕を入れる

5 緊急時には至急医師へ報告をする

EーP(教育)

1 安静の必要性を説明する

2 無理な体位をとらないように注意する

#6破裂が死につながるという事から不安恐怖が強い

目標:突然の激痛は破裂症状であることを知り、破裂助長因子を除去軽減する

OーP(観察)

1 痛みの観察

a 部位、時間、強さの程度

b 胸部大動脈瘤の場合:背部への放散痛

2 破裂時の症状を知り状態観察

a 出血性ショック:腹腔内、後腹膜腔内

b 心嚢内出血によるタンポナーデ:血圧低下、顔面蒼白、チアノーゼ、脈圧狭い、呼吸困難、心音低下、不安感

TーP(実施)

1 強い痛みに対しては指示の鎮痛剤使用

2 精神安定を図るため薬剤の与薬

#7高齢者が対象となることが多く術後、肺合併症を起こしやすい

目標:呼吸不全状態を合併することなくウイニング自然呼吸へ経過をたどる

TーP(実施)

1 呼吸管理を行う

a 人工呼吸器使用中の患者管理

b 気管内チューブ挿入中の患者管理

c 人工呼吸よりの離脱

2 深呼吸、くちすぼめ呼吸

EーP(教育)

1 喀痰喀出指導

a 目的を説明し理解してもらう

b 含嗽口腔清拭、吸入により口腔内、気道に湿気を与え喀出しやすい状態にする

c 可能であれば、仰臥位、ファーラー位、座位

d 深呼吸をさせ吸気後、一時呼吸を止めさせ呼気時に胸骨上かを圧迫し咳を誘発し痰を喀出させる

e 創痛緩和の為創部を患者又は看護師の手で軽く圧する

f 喀出困難時、創部を避けてタッピングを行う

2 去痰薬の与薬、吸入、IPPBを指示により施行

参考資料:標準看護計画

#8開胸による手術操作の為無気肺、肺水腫を起こしやすい

目標:人工呼吸器からのウイニングが順調に行え、抜管後を通して呼吸状態が良好である

OーP(観察)

1 呼吸音、呼吸パターン、チアノーゼ

2 血液ガス

3 胸部レントゲン、心胸比

4 胸腔ドレーンからの排液量、性状

TーP(実施)

1 開胸術後は気管内分泌物が多く、また咳嗽反射低下の為適宜確実な吸引、気管支ファイバ

2 水分出納のバランスを保ち過剰輸液しない

3 心不全に合併する場合は循環動態の改善を図る

4 ファイテイングの防止:ファイテイング時はジャクソシリース必要に応じて鎮痛剤の与薬他、人工呼吸器装着中の看護に準じる

EーP(教育)

1 喀痰喀出の必要性を説明し喀出指導をし吸引の協力を得る

#9人工呼吸による合併症を起こす可能性がある

目標:合併症を併発することなくより適切な人工呼吸を受けることが出来る

OーP(観察)

1 気道喉頭損傷の有無、鼻腔周辺のびらん、潰瘍の有無

2 胸部レントゲン

3 血液ガス

4 感染の有無

a VS

b 喀痰培養と感受性検査

c WBC

5 加湿器の加湿、加湿状態、気管内分泌物の量と性状

6 肺の加圧による肺損傷、気胸、皮下気腫、縦隔気腫

7 循環器系の抑制

a 血圧低下

b 脳灌流圧低下

c 肝機能障害

d 腎機能障害

8 内分泌系への影響

a 尿量減少、水分出納、尿性状、尿比重低下

b 呼吸不全の憎悪

9 ストレスによる消化管出血の有無

10 酸素中毒

11 加湿、加湿による水分摂取過多、気道熱傷、気管支けいれん

12 気管内吸引による気道損傷、無気肺、不整脈

13 検査データ

14 その他:ファイテイング、腸管運動抑制、人工呼吸器依存

TーP(実施)

1 気管内分泌物の吸引

2 加温、加湿、吸入

3 肺理学療法

4 確実な薬物与薬:鎮痛剤、筋弛緩剤、ジギタリス、抗生物質、ステロイド剤

5 チューブ管理

a 確実な固定

b チューブ交換(1週間に1回)

c 呼吸器との接続チェック

d カフ圧のチェック:20以下

6 口腔内ケア:ボビドンヨード

7 回路交換

#10人工血管吻合部からの出血が起こる可能性がある

目標:血圧の上昇が原因の為の出血を起こさない、止血の為の再開腹、開胸術をしない

OーP(観察)

1 ドレーンからの排液、流出状態、量と性状

2 血圧コントロールの為、血圧変動に注意

TーP(実施)

1 輸液の介助

2 指示の止血剤の与薬

3 血圧上昇の原因となることへの対処

EーP(教育)

1 疼痛苦痛は我慢しないように説明する

#11術中の出血性ショック、体外循環、大動脈遮断術後の腎血流量の低下により急性腎不全を起こす恐れがある

目標:急性じん不全の早期発見、対処が行われ尿量が確保される

OーP(観察)

1 尿量0,5cc以上/Kg/時を維持

2 尿比重、尿性状、血尿の有無

3 腎機能検査、電解質:BUN、K、クレアチニン

4 血行動態:血圧、CVP

TーP(実施)

1 循環動態の安定を図り循環血液量を維持する

a 輸血、輸液

b 昇圧剤、降圧剤、血管拡張剤、強心剤

2 利尿剤の与薬

3 溶血時、ヒトハブトグロビンの与薬

4 腎不全を起こした場合は血液透析、腹膜還流を行う

#12体液過剰による溢水がある:血圧上昇、心不全、肺水腫を引き起こし、症状悪化の原因となる

目標:除水が適切に行われ循環系に負担がかからない

OーP(観察)

1 水分出納

2 呼吸

a 呼吸困難、湿性ラ音、RR

b 血液ガス

c 胸部レントゲン所見

3 CVP上昇、BP上昇

4 体重、腹囲

5 検査データ:BUN、クレアチニン、電解質

TーP(実施)

1 緊急時400~600mlの喀血の介助

2 HD、PD、CAVH、ECGM等による水分除去の準備、管理

#13乏尿が長く続くと血液凝固機転の異常をきたし、出血傾向が起こる

目標:出血を防ぎ早期に治療される

OーP(観察)TーP(実施)

DICを発症した患者の看護に準じる:肺、消化管、心嚢出血のサインに注意する

#14血液透析時循環血液量の低下により、ショックに陥りやすい

目標:安全に血液透析が受けられる(虚脱脱水による体液量減少性ショックに注意する)

OーP(観察)

1 VS

a BP下降 HR上昇 ST下降、CVP下降

b 不整脈:PvC、AF、PSVTなど

2 随伴症状:意識、冷感、脱力感、悪寒戦慄、悪心、嘔吐、胸内苦悶

3 検査データのチェック:K、Na、BUN、Hb、血液ガス、凝固時間

4 ブラッドアクセス部

TーP(実施)

1 ショック症状出現時

a 体位:トレンデレンブルグ位、下肢挙上

b 除水停止、カテコラミンの使用

c 血液量減少:輸液、補液

2 透析装置の作動状態のチェック

3 救急カート、人工呼吸器、除細動器の準備

4 保温:透析液の温度は37~37,5度にする

5 事故防止:不均衡症候群や精神的緊張からくる不穏状態は、ベッド転落やチューブ類の屈曲、抜去の原因となるので血液透析開始時の固定は慎重に行う

#15血圧のコントロールがうまく行かない場合:冠不全症状が出現する

目標:心拍出量を維持し冠動脈血流低下による冠不全症状を起こさない

OーP(観察)

1 血圧の変動、その他の一般状態

2 動脈圧モニタリングの管理

3 ECGモニタによる不整脈のチェック

TーP(実施)

1 水分出納による循環血液量と排液、尿量の関係を知る

2 輸液量チェック

3 指示による薬剤使用の管理:カテコラミン

4 薬剤使用による血圧の上昇のない場合、IABPの施行:IABP施行時の患者の看護

#16血圧のコントロールがうまく行かない場合:肝不全症状が出現する

目標:血圧低下による肝血流量減少からくる肝細胞障害を起こさない

OーP(観察)

1 黄疸の有無:眼球、結膜、皮膚

2 尿の色:褐色に着色

3 肝機能検査の結果

#17肋間動脈、腰動脈の結紮や血栓塞栓の為脊髄麻痺が出現することがある

目標:麻痺の症状出現の早期発見、機能障害の程度に応じたケアができる

OーP(観察)

1 下肢麻痺、膀胱や直腸障害の程度を知る

TーP(実施)

1 水分出納チェック、尿量に注意

2 排尿障害、直腸障害への看護

3 せん足予防、褥瘡予防

#18手術操作により大動脈瘤壁内血栓の末梢動脈への流出及び低血圧による人工血管内血栓形成により、末梢動脈脳動脈塞栓をきたすことがある

目標:末梢動脈、脳動脈塞栓症の早期発見、対処により循環動態を良好に保つことが出来る

OーP(観察)

1 各動脈の拍動の有無、強弱

2 末梢皮膚色、チアノーゼ、左右の温度差、疼痛、けいれん、知覚異常

3 意識障害の有無と程度

4 血圧、活性化凝固時間

TーP(実施)

1 循環動態の安定を図る

2 末梢を保温し、抹消循環を良好に保つ

3 抗凝固剤、血栓溶解剤の与薬

#19腸管壁への血流減少、虚血により透過性の亢進、消化管出血を起こす

目標:消化管出血を早期に発見、対処し貧血を最小限にとどめ術後の回復に悪影響を与えない

OーP(観察)

1 排泄物の観察、吐物や便の潜血反応、タール便、黒色便の有無

TーP(実施)

1 検査データのチェック:血液一般

2 薬物治療への援助

3 輸血する場合、その看護

4 手術療法をする場合はその看護:腸切除

#20人工血管置換術の感染症は致命的である

目標:感染に対し予防的な処置が受けられ血行感染を起こさない

OーP(観察)

1 状態観察

2 発熱、その他それに伴う全身症状

TーP(実施)

1 各種カテーテル、輸液ラインなどの清潔管理

2 指示薬剤の与薬

3 検査の介助:動脈血培養、末梢血採血

#21手術操作や動脈瘤による神経叢への影響、血腫による圧迫の為に麻痺性イレウスを起こすことがある

目標:膨大した腸管による圧迫で横隔膜が挙上するための呼吸抑制が起こらない。腹圧亢進の為の腹壁離解を起こさない。

OーP(観察)

1 腹鳴、排ガス、吐気、嘔吐、腹部膨満感、腹痛

TーP(実施)

1 体位変換

2 胃チューブ挿入による胃内容吸引

3 腹部温罨法、温湿布、熱気浴

4 指示により排気、浣腸、座薬挿入

5 指示の腸蠕動刺激剤の与薬

#22全身動脈硬化のあることが多く脳血管障害が予測される

目標:術前から意識状態を客観的に把握して置き、意識障害を早期にキャッチし対処治療が受けられる

OーP(観察)

1 術前から状態を把握して置き、意識障害を早期にキャッチし対処、治療が受けられる

#23吻合部に仮性動脈瘤をつくることがある

目標:自覚症状があまりないため早期発見により破裂させない事

OーP(観察)

1 腫瘤として触れる場合があり、圧迫症状を訴えることがある

2 術後造影でわかることが多い

#24緊急入院、緊急手術を行うことが比較的多く、現状が受け入れられず精神的に不安定となりやすい

目標:精神的に安定し治療の協力が得られ経過が良好である

OーP(観察)

1 言動、表情

2 不穏状態の有無

TーP(実施)

1 苦痛不安を表出させ対処する

2 病状の経過や現在行われている治療などを分かりやすく説明する

3 挿管中は特に意思の疎通を図る

4 面会の配慮

5 家人への配慮

参考資料:標準看護計画

料理チャンネル→https://www.youtube.com/channel/UCmnwzyXL0ZcT–wDGFuMW5A

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