筋委縮性側索硬化症の看護計画
#1上下肢運動麻痺に関連してADLに支障をきたす
目標:出来る範囲内のことは自分で行え、必要時ADLの介助を求められる
OーP(観察)
1 上下肢の運動麻痺の程度
2 ADLの状態:何に支障をきたしているか、周囲に危険物はないか
3 四肢拘縮等の状態
4 良肢位が保たれているか
TーP(実施)
1 四肢拘縮予防なため積極的に自動運動、他動運動を行う
2 ADLで支障をきたしていることに対して介助を行う:ナースコールがすぐに手元にあり看護師に連絡がとれる。タッチコール、ボイスコールの使用を考慮する
3 周囲からできるだけ危険物を取り除き、身の回りの整理整頓を行う
4 良肢位が保てる用に枕や円座などを使用する
5 衣類の工夫をする
6 食器類を工夫し食事摂取しやすいようにする
7 ADLは、必要最小限度で介助する
EーP(教育)
1 ADLで支障をきたした時には看護師に介助を求めるように指導する
2 理学療法士が自動運動について指導する
3 患者のできる範囲内のことは、自分でするように説明し家族にも指導する
#2構音障害に関連して意思の疎通が図れない
目標:負担を感じないで自分に合った方法でニーズを伝えることが出来る
TーP(実施)
1 根気よく患者の伝えようとしている言葉を理解するように努める
2 患者の発語は聞き流さず理解できるまで確認する
3 頻回に訪室し、コミュニケーションを図る
4 障害の程度に合わせて文字盤、筆談を使用する
EーP(教育)
1 ゆっくりと大きく口を開けて発声するように説明する
2 日中1回は50音の発声練習をする
#3嚥下障害に関連して食事摂取が困難な為、栄養状態の低下をきたす可能性がある
目標:誤嚥の防止が出来体力の保持と栄養補給の保持が図れる
OーP(観察)
1 食事の摂取量、摂取状態、嚥下困難の程度
2 食事状態のチェック、検査データ:栄養状態
TーP(実施)
1 調理法の工夫:きざみ食、ミキサー食
2 吸引器を設置して誤飲時の危険防止に努める
3 必要時、経管栄養法、点滴などによる栄養補給並びにその管理を行う
4 自力で摂取困難時は食事介助を行う
EーP(教育)
1 時間をかけてゆっくり食べるように指導
#4球麻痺症状により誤嚥する可能性がある
目標:嚥下困難が強い場合は、経口摂取を自ら控えることが出来、誤嚥が防止できる
OーP(観察)
1 嚥下咀嚼状態
2 言語障害
3 食事の状況、食事内容
4 口腔内に食物がたまる感じ
TーP(実施)
1 食事時は必ず座位をとる
2 誤嚥時に備え、吸引の準備をする
3 嚥下障害強度の場合は、医師の指示により経管栄養の準備、管理を行う
4 嚥下障害では疲れやすいこと、薬効のある時は食事ができることを配慮する
5 患者の状態に応じて食事内容を工夫する(軟飯、きざみ食、粥、卵豆腐、ヨーグルト食)
6 病院食が摂取困難な時は家族に依頼し差し入れを持参してもらう
EーP(教育)
1 嚥下困難強度時は、無理をせず絶食にして報告するように指導する
2 食事時はゆっくりと咀嚼嚥下するように説明する
難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)―在宅介護7年間の彼方 | ||||
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#5気管切開により発声できないのでコミュニケーションが十分に図れない
目標:自分に合った方法でニーズを表現でき意思の疎通が図れる
OーP(観察)
1 表情及び不安の程度、種類
2 意思疎通の程度
TーP(実施)
1 筆談文字盤を使用し意思の疎通を図る
2 簡単な合図を工夫する
3 患者によって、よく訴える事には特徴や傾向があるので、速く把握する
4 家族に協力を求め患者の精神的苦痛、ストレスがたまらないようにする
5 訴えは一生懸命に聞く
EーP(教育)
1 焦らずゆっくりと意思を伝えるように説明する
#6人工呼吸器装着中に関連して、肺合併症を起こす可能性がある
目標:肺合併症を併発することなく、適切な人工呼吸を受けることが出来る
OーP(観察)
1 気道損傷、喉頭損傷の有無、鼻腔周辺のびらん、潰瘍の有無
2 胸部レントゲン
3 血液ガス
4 感染の有無
a VS
b 喀痰培養と感受性の有無
c WBC
5 吸入器の加温、加湿状態、気管内分泌物の量、性状
6 肺の加圧による肺損傷、気胸、皮下気腫、縦隔気腫
7 循環器系の抑制
a 血圧低下
b 脳灌流圧低下
c 肝機能障害
d 腎機能障害
8 内分泌系への影響
a 尿量減少、水分出納、尿性状、尿比重低下
b 呼吸不全の憎悪
9 ストレスによる消化管出血の有無
10 酸素中毒
11 加温、加湿による水分摂取過多、気道熱傷、気管内痙攣
12 気管内吸引による気道損傷、無気肺、不整脈
13 検査データ
14 その他:ファイテイング、人工呼吸器依存、腸管運動抑制
TーP(実施)
1 気管内分泌物の吸引
2 加湿、加温、吸入
3 体位ドレナージ
4 確実な薬物与薬:鎮静剤、筋弛緩剤
5 チューブの管理
a 確実な固定
b チューブ交換:1週間に1回
c 呼吸器との接続チェック
d カフ圧チェック
6 口腔内ケア:ポビドンヨード
7 回路交換
#7直腸障害があり排便困難がある
目標:なるべく下剤、浣腸に頼らず自然に排便できる
OーP(観察)
1 便秘の有無と便の性状
2 腹部症状
TーP(実施)
1 時間を決めて車椅子トイレ、ポータブルトイレへ誘導
2 腹部膨満及び緊満の程度により、患者に合った方法で排便の援助をする:浣腸、排便、座薬の使用
EーP(教育)
1 温罨法及び腹部マッサージを指導する
2 食物は線維性のものを摂取するように説明する
3 適度な運動を促す
4 水分をいつもより多く摂取するように説明する
#8留置カテーテル挿入中に関連して、尿路感染を起こす可能性がある
目標:尿量が1500㎜ぃ状になるように自ら水分管理が出来、尿の混濁をきたさない
OーP(観察)
1 発熱
2 尿の性状、量
3 留置カテーテル挿入部の痛み、皮膚状態
TーP(実施)
1 留置カテーテルの管理
2 混濁、浮遊物の著名な場合は医師の指示により持続膀洗洗浄を行う
3 陰部洗浄後亀頭部の消毒、ガーゼ貼用
EーP(教育)
1 飲水は控えないように説明し、尿量は1500以上を目安とし水分補給の指導をする
#9長期臥床に関連して褥瘡が発生する可能性がある
目標:局所の圧迫を避け褥瘡を予防できる
OーP(観察)
1 栄養状態の観察、検査データのチェック、皮膚状態、寝衣寝具の皺の有無、好発部位の観察、循環障害の有無
TーP(実施)
1 体位変換:2時間ごと
2 好発部位の圧迫を避ける:円座、エアマット、枕の使用
3 好発部位のアルコールマッサージ
4 清潔の保持に努める
5 寝衣寝具の皺、汚染に気を付ける
#10経過が長いため精神的に不安定となり、闘病意欲を失う可能性がある
目標:不安は口に出して表現でき、精神的に安定した状態で入院生活が送れ、闘病意欲を持ち続けられる
OーP(観察)
1 患者の言動、表情
2 精神状態
3 疾病、予後の理解度
TーP(実施)
1 看護師は統一した態度で接する
2 気分転換を図る:散歩、テレビ、ラジオなど
3 QOLを考慮し、一日の生活パターンを患者と共に計画する
4 コミュニケーションを十分にはかり、受容の態度で接する
5 急激な症状の悪化は通常みられず、生命に危険性のある疾患ではないので医療の進歩により治療薬の開発される可能性もあることを話し、希望を持たせる
EーP(教育)
1 医師より疾病について十分に説明する
2 不安、心配なことは何でも話すように説明する
参考資料:標準看護計画
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