重症熱傷患者の看護計画

中毒・損傷系看護計画

目次

#1受傷に関する情報が不十分なことに関連して生命が危機状態となる

目標:速やかに治療が受けられて生命を維持できる

OーP(観察)

1 病歴

a 受傷原因:火傷、化学薬品、ガソリン

b 受傷時間と受賞時の状態:意識の有無など

c 応急処置の有無とその方法

d 年齢、体重、既往歴:心、肺、腎疾患を有する場合は熱傷が中程度でも死亡する例がある

2 創部の状態

a 受傷面積と深さ

b 気道熱傷の有無:顔面熱傷時は必ず確認する

c 浮腫、浸出液の有無と程度

3 VS

a 循環:血圧、BP、HR、CVP、ECGモニタ、抹消循環状態、PRの緊張、尿量、血尿の有無、尿比重、水分出納など

b 呼吸:RR、呼吸音、呼吸パターン、胸郭の動き、チアノーゼの有無、喀痰の性状と量、胸腹部3度熱傷時は皮膚の硬化と浮腫により呼吸障害を起こしやすい

c 体温:低体温になりやすい

4 意識レベル、神経症状

5 随伴症状:倦怠感、疼痛、発汗、口渇など

6 検査値:血液ガス、一般採血、生化学、血性浸透圧、尿潜血の有無と浸透圧

TーP(実施)

1 血管確保の介助:CVP、スワンガンツカテーテル挿入

a 健常な皮膚を選ぶが、やむを得ない時は静脈切開の準備

2 加湿された酸素投与と気道確保の介助:CO中毒、気道熱傷時は直ちに気管内挿管が必要

3 長期になることが多いため、経鼻挿管が望ましく、必要時気管切開が行われる

4 留置カテーテル、胃チューブ挿入の介助

5 創部処置の介助:受傷深度により異なる、減張切開、塩化ベンザルコニウム洗浄など

EーP(教育)

1 感染防止の必要性を患者と家族に説明し、面会時間などの協力を得る

#2血管透過性の異常亢進と細胞膜の障害に関連して、循環血液量の減少が起こりショック状態に陥りやすい

目標:循環血液量が維持されショック状態にならない

OーP(観察)

1 VS

a 循環:血圧の低下、脈拍増加、CVC低下、肺動脈圧低下、尿量減少、尿比重上昇、水分出納、ECG上のST変化

b 呼吸:浅脈

c 体温:低体温に注意

2 意識レベル

3 検査値:Hb、Ht、BE、BUN、

4 浮腫の部位と程度

TーP(実施)

1 大量輸液が正確に実施される:急速大量輸液の為ボトルに番号を付けるなど工夫をする

2 強制利尿の実施:最低尿量0,5~1,5ml/kgを保つ

#3気道燃焼では、粘膜上皮の壊死細胞や浮腫に関連して排気障害が生じる

目標:無気肺や肺炎、肺水腫などの合併症が予防できる

OーP(観察)

1 呼吸状態:呼吸音、頻呼吸、呼吸苦の有無、咳嗽、喀痰の量と性状、嗄声の有無、口腔や咽頭の発赤の程度

2 検査値:気管支ファイバー所見、胸部レントゲン所見、血液ガス

TーP(実施)

1 気道の確保と適切な酸素の投与:挿管にはプロフイールカフを使用する(人工呼吸器装着中の看護併用)

2 薬剤の確実な与薬:抗生物質、ステロイドホルモン剤、去痰剤、気管支拡張剤

3 気管内吸引は特に清潔操作を心がける

4 気管切開をしている時は、気管切開孔周囲の清潔保持に努める

EーP(教育)

1 各処置に対する説明を行い協力を得る

#4血管透過性の正常化により水が再吸収されることに関連して循環血液量が増加し、心肺負荷となりやすい

目標:心不全、肺気腫、腎不全などの合併症を起こさない

OーP(観察)

1 VS

a 循環:血圧の低下、脈拍増加、肺動脈上昇、CVP上昇、浮腫の程度、尿量、尿比重、末梢冷感

b 呼吸:喀痰の増加、湿性ラ音の有無

2 検査

a 血液ガス:CO2上昇、PaO2低下

b 胸部レントゲン:心胸比上昇、スリガラス様陰影の有無

c 血清電解質(カリウム、ナトリウム)、血性浸透圧

d BUN、クレアチニン、尿浸透圧

TーP(実施)

1 薬剤の確実与薬

a 利尿剤

b 電解質補正

c 強心剤

d ジギタリス

2 水分出納チェック:この時期は尿量が目安となるので、血性ナトリウム値を参考にしながら輸液の過剰や脱水に注意する

#5突然の事故であり疾患の予測に関連する家族の不安がある

目標:不安が軽減して家族は疾患について理解できたと表現できる

OーP(観察)

1 家族の言動、行動

2 疾患に対する理解の程度

3 家族のニードの程度

TーP(実施)

1 ムンテラの徹底

2 環境整備

3 面会の考慮

参考資料:標準看護計画

#6低栄養状態で感染防御機構が低下していることに関連して、二次感染を起こしやすい

目標:感染の症状や徴候を示さない

OーP(観察)

1 発熱の有無、熱型

2 創部の状態

3 WBC、CRP値

4 気管内分泌、尿性状

5 細菌培養の結果:喀痰、血液、尿

6 栄養状態:総蛋白、アルブミン、総コレステロール

TーP(実施)

1 熱傷部位の清潔保持

2 吸引時、清潔操作の励行

3 各ルート刺入部の清潔保持

4 経管栄養、IVHの管理

5 薬物の確実与薬:抗生物質、アルブミン製剤

#7毎日の処置や熱傷の創部痛に関連してストレスがたまりやすい

目標:疼痛の緩和が図れて、安心して治療が受けられる

OーP(観察)

1 疼痛の部位と程度

2 患者の言動、行動、不穏の有無

3 ストレスの有無:消化器症状

4 夜間の睡眠状態

TーP(実施)

1 患者の訴えを良く聴く

2 医師の指示により処置時などの鎮痛剤の投与

3 家族の面会を考慮する:時間、回数

4 夜間入眠しやすい環境を整える

5 患者の好む音楽やラジオで気分転換を図る

EーP(教育)

1 処置前に必ず説明をする

2 おかれた環境が判断できるように適切な情報を提供する

a ICU入室について

b 熱傷について

#8創面から大量のたんぱく質が浸出液中に喪失することに関連して、低栄養状態となり肉芽形成不良となりやすい

目標:創部の肉芽形成が良好になる

OーP(観察)

1 創部状態

a 上皮、かひ形成など肉芽増殖の状態

b 出血、膿の有無

2 検査

a 低たんぱく血症の有無

b 血糖低下

3 栄養摂取量及び水分出納

4 腹部症状

a グル音、腹満の有無

b 排便の性状

5 全身状態

a 吐気、嘔吐の有無

b 食欲の有無

TーP(実施)

1 高カロリー高たんぱく食の栄養補給

a IVHラインの管理

b 経管栄養の管理

c 食事介助:嗜好品を取り入れる

2 便通の調整

EーP(教育)

1 栄養指導

#9長期臥床や熱傷部の拘縮に関連して、筋肉や関節の拘縮が起こりやすい

目標:筋肉や関節の拘縮が予防できADLに支障をきたさない

OーP(観察)

1 異常肢位の観察:せん足、拘縮等の有無

2 筋肉や四肢の拘縮の有無と程度

TーP(実施)

1 体位変換:2時間ごと

2 リハビリテーションの実施:PTの指導の元に行う

3 良肢位の保持、せん足予防

EーP(教育)

1 リハビリテーションの必要性を説明し、患者に意欲を持たせ協力を得る

#10変化した容姿や作業能力の低下に関連して前途に不安を持つ

目標:将来に対する心構えが出来、闘病意欲が持てる

OーP(観察)

1 患者の言葉、表情、行動

TーP(実施)

1 コミュニケーションを頻回に持ち患者のニードを把握する

2 環境整備に努める

3 気分転換を図る:状態に合わせ、ラジオ、雑誌など

4 面会の工夫:時間、回数

EーP(教育)

1 容姿の変化や能力について十分説明し、必要なら退院後の仕事や社会生活について家族を含め相談する:形成外科の説明など

参考資料:標準看護計画

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