#1心窩部から季肋部にかけての痛みが持続し苦痛である
目標:鎮痛剤の使用及び安楽な体位をとることで、苦痛を最小限度にとどめられ少しでも楽になったと表現できる
OーP(観察)
1 疼痛の部位、程度、持続時間、放散痛、誘因
2 鎮痛剤の効果
3 腹部膨満感、便秘、便の性状、量
4 患者の表情、言動
TーP(実施)
1 痛み訴え時は衣類の緊迫や圧迫を除き、前屈位または座位をとらせ腹壁の緊張をとる
2 排便の状態には注意し便秘時は医師の指示により下剤を与薬する
3 疼痛増強時は医師の指示により鎮痛剤を使用する
EーP(教育)
1 疼痛が我慢できない時は我慢せずに報告するように指導する
#2吐気及び食欲不振により、栄養状態が悪化する可能性がある
目標:自覚症状出現時は報告でき適切な処置を受けられ、栄養状態が悪化しない
OーP(観察)
1 胃部症状、体重減少
2 食事、水分摂取量、摂取状況
3 尿、比重、水分出納のチェック
4 嘔吐時は吐物の性状、量及び随伴症状
5 脱水症状、高血糖症状
6 IVHカテーテル挿入時:刺入部の痛み、発赤、腫脹
TーP(実施)
1 室内の換気を十分にし、環境整備を行う
2 食欲が少しでもわくように、患者の嗜好物を取り入れ食べやすいように工夫する
3 食事間隔、摂取時間を調整し分割食にすることも考慮する
4 吐気が持続するなら医師に報告し指示を受ける
5 経口摂取困難な場合はIVHを考慮してもらう
EーP(教育)
1 家族にできる範囲内で患者の嗜好物を持参してもらうように説明する
2 IVHの必要性について説明する
#3黄疸による掻痒感出現の可能性がある
目標:皮膚の清潔が保たれかゆみが緩和し快適に過ごせる
OーP(観察)
1 黄疸、皮膚の状態、掻痒感
2 尿、便の性状
3 出血傾向(鼻出血、口腔内出血、出血量)
TーP(実施)
1 掻痒感が強い場合
a 冷たいおしぼりで清拭
b レスタミン軟膏塗布又はアルコール清拭
c ビワの葉ローションなどを使用
2 皮膚の清潔に努める
3 患者の苦痛、不眠がある時は抗レスタミン剤や眠剤の処方を依頼する
EーP(教育)
1掻かない様に指導し爪は短く切っておくように説明する
2掻痒感出現時は医師又は看護師に報告するよう指導する
#4ドレナージにより日常生活に制限があり苦痛が生じている
目標:ドレナージの必要性が理解でき、自ら管理することが出来る(PTCD挿入中の看護に準ずる)
#5抗がん剤内服により副作用出現の可能性がある
目標:自覚症状出現時は医師又は看護師に報告でき適切な看護が受けられる
OーP(観察)
1 発熱、頭痛、倦怠感
2 胃部、胸部症状
3 出血傾向、貧血症状
4 皮膚の状態、脱毛
5 抗ガン剤使用中の精神状態及び効果
6 呼吸器、尿路感染、口内炎などの症状チェック
7 検査データチェック
TーP(実施)
1 抗ガン剤使用について看護師間の言動を統一する
2 副作用出現にて体力消耗する為安全な体位を工夫する
3 消化器症状出現時は、食事の内容、時間調整し食べやすいように工夫する
4 出血傾向のある場合は採血、点滴後の止血を確認する
5 脱毛時はベッド周囲の整理、整頓に心がける
6 感染予防の為面会人の制限をする
EーP(教育)
1 自覚症状出現時は医師又は看護師に報告するよう説明する
2 不安を抱かないように、副作用としてよく出現する症状はあらかじめ説明する
3 白血球減少時は、含嗽、マスクの着用及び手洗いの励行を指導する
#6疾病、予後に対する不安がある
目標:現在の状態をありのままに受け止め、不安を口に出して表現できる
OーP(観察)
1 患者の言動、体動、表情
2 疾病、治療に対する理解度
3 家族からの情報
TーP(実施)
1 訴えには耳を傾け、一つ一つ問題解決にあたる姿勢を示す
2 患者及び家族の信頼関係を良くし、安心して治療が受けられるような雰囲気づくりに努める
EーP(教育)
1 心配、不安なことがあれば訴えるように説明する
#7病状悪化に伴い、不安が増強したり闘病意欲が失いがちになる
目標:現実を認識受容し、家族の協力で闘病意欲を持ち続けることが出来る
OーP(観察)
1 患者の言動、態度、表情
2 睡眠状態
3 疾病に対する反応及び理解度
4 家族からの情報
TーP(実施)
1 医師、看護師が統一した態度で接する
2 患者の訴えに耳を傾け、受容的態度で接し不安を表出しやすい雰囲気づくりを行う
3 疾病や治療に対する不安がある時は、その都度医師から十分説明してもらう
4 患者及び家族との信頼関係を良くし、安心して治療が受けられるような環境つくりをする
5 家族の協力を得て、患者の闘病生活に意欲が持てるようにアプローチする(外出、外泊)
6 病状により付き添いを考慮する
7 不安が強く眠れない時は、医師の指示にて安定剤を与薬する
EーP(教育)
1 心配や不安があれば訴えるように指導する
アセスメントの視点と根拠・起こりうる看護問題
1膵がんによる身体状態の把握
起こりうる看護問題:血糖コントロールが適切に行えない。消化吸収が阻害されることによる栄養状態の低下。疼痛による活動の制限。悪心・嘔吐による活動の制限/消化吸収が阻害されることによる栄養状態の低下
癌による膵機能の障害と、癌の浸潤・増大に伴う二次的な症状を把握し治療計画、看護計画の立案に役立てる
・ すい臓には内分泌機能、外分泌機能があり、癌によりそれらが障害されると血糖コントロールの変調、消化吸収障害が起こる
・ すいがんは早期には症状を自覚しにくいと言われる。癌が浸潤増大すると疼痛が出現することがある。膵頭部癌が胆管を閉塞・競作させると黄疸が、また消化管を競作させると悪心嘔吐食欲不振が生じる
(糖尿病)
・ インスリンは膵体尾部に多くあるランゲルハンス島から分泌される
・ すいがん患者は糖尿病を合併していることが多く、すいがんやその治療により二次的に糖尿病を発症することもある
(消化吸収障害)
・脂肪分解酵素の分泌が妨げられると資質の消化吸収が低下し便中に脂肪分を含む脂肪便が排出される
(疼痛)
・ 癌の周辺臓器・神経への圧迫や湿潤により、疼痛が生じることがある
・ 癌の進展部位により、腰背部痛、上腹部痛などを生じる
(黄疸)
・ 膵頭部は胆汁の通り道である胆管に隣接しているため、膵頭部癌が増大すると胆汁うっ滞が起こり閉鎖性黄疸が出現する
・ 胆汁が十二指腸に流入せず便に混じらないため、便は灰白色となる
(通過障害)
・ 癌の増大により、消化管の通過障害を引き起こし悪心、嘔吐、食欲不振が出現することがある
2手術施行のための全身状態の把握
すいがん患者は60~70歳代に多くすいがんの手術は身体浸潤が比較的大きい。全身状態の把握は手術適応決定のためにも術前準備のためにも必要である
・ 循環器、肝機能、腎機能など各検査の結果により薬物などを用いて状態を保清・改善しておく必要が生じる場合もある
・ 呼吸機能の評価に基づき、禁煙や呼吸訓練によって改善を図る
・ 血液凝固能、耐糖能の低下は、術前に保清するとともに術後管理の留意点になる
3膵切除後の身体状態の把握
起こりうる看護問題:病状や治療に対する不安/離床・セルフケアの遅延/血糖コントロールが適切に行えない/下痢/消化吸収が阻害されることによる栄養状態の低下/不適切なドレーン管理
すいがん手術の中でも、膵頭十二指腸手術は吻合箇所が多く各種ドレーンが挿入される。とくに膵管ー消化管吻合部の縫合不全は、消化酵素を含む膵液が漏出することから重篤となりやすい
・ 各ドレーンの目的と排液の性状を知り、縫合不全を早期発見することが重要である。またドレーンが数多くの医療機器のラインが装着された状態での患者の心理やADLへの影響にも注目する必要がある
・ すい臓を切除したことによる内分泌機能、外分泌機能の低下の程度や栄養状態を検査データや症状から把握することで、治療計画や生活指導計画に役立てる
共同問題:縫合不全
4患者家族の心理社会的側面の把握
起こりうる看護問題:病状や治療に対する不安/自己概念の混乱/セルフケア不足/ノンコンプライアンス/社会的支援を得られない
すいがんは進行した状態で発見されることが多く、生命予後が難しい。患者家族が病状や治療についてどのように理解し、受け止めているかを把握し必要な支援を行う必要がある
・ 血糖コントロールやドレーン管理、退院後の食事療法や日常生活上の注意など、患者家族が自ら治療・療養に向き合うことが必要とされるため、患者家族が離開している内容とセルフケアの実際について把握することが重要である
参考資料:標準看護計画
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