僧帽弁置換術前後の患者の看護計画

循環器系看護計画

目次

#1うっ血性心不全により、不整脈が出現することがある

目標:心負担を軽減し、心不全状態の改善ができる

OーP(観察)

1 脈拍数の増加、脈の性状、ECG波形の把握

2 血圧低下、動悸、胸部不快感、冷感、末梢冷感、チアノーゼ、浮腫などの有無

TーP(実施)

1 強心剤(ジギタリス)の服用

a 中毒症状に注意:食欲不振、徐脈、吐き気、嘔吐、頭痛、ECG変化:QT短縮、ST低下

b 中毒症状出現時:ジギタリス剤の減量または中止、医師の指示によりカリウム剤、塩酸リドカインなどの静脈注射

c 血中カリウム濃度、ジギタリス定量のチェック

d ジギタリス剤の正確な与薬:時間、量

e ジギタリス血中濃度が維持されることで、術中術後に不整脈が出現することがあり術前2,3日前には中止する

2 利尿剤の服用も同時に併用していることが多い

a 水分出納チェック:飲水量、尿量、体重測定

b 電解質データの把握

EーP(教育)

1 ジギタリス中毒症状について説明し、症状出現時にはすぐに知らせるように指導する

2 低カリウム血症予防の為、新鮮な野菜や果物を食べるよう説明する

#2左房内血栓により、血栓塞栓症をおこすことがある

目標:脳塞栓、肺塞栓症に対し早期に処置が受けられる

OーP(観察)

1 脳血栓、肺血栓などの症状に注意

2 抹消循環動態の把握

TーP(実施)

1 安静度の再確認、体動の制限

2 循環動態の安定を図る

a 血圧変動因子の除去に努める:排便コントロール、入浴はゆっくり動作し、短時間で済ませる。精神的ストレスを避ける

3 血栓症状出現時には医師の指示により、抗凝固剤を与薬する

a 予防的に抗凝固剤を服用している場合には、術中術後の出血傾向予防の為術前数日前から中止することが多い

b いつまで服用するのか確認しておく必要がある

EーP(教育)

1 血栓症、または出血傾向症状について説明し、症状出現時にはすぐ知らせるように指導

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#3肺静脈圧の上昇により肺うっ血、肺機能低下をきたし呼吸困難がある

目標:左心不全が改善された状態で手術に臨める

OーP(観察)

1 呼吸困難、チアノーゼ、胸内苦悶、浮腫、咳嗽、頸静脈喉長の有無

2 呼吸機能データの把握:血液ガス、呼吸機能検査

TーP(実施)

1 呼吸面積の拡大

a 体位の工夫:セミファーラー位

b 胸部を圧迫する衣類を着用しない

2 酸素療法

3 術前の呼吸練習

a 深呼吸:横隔膜呼吸

b くちすぼ目呼吸

c 強制咳嗽

4 水分出納のチェック:CVP測定、尿量

5 利尿剤の確実与薬

EーP(教育)

1 呼吸練習の必要性を説明し、十分行うよう指導する

#4吻合部からの再出血や重症不整脈により、低心拍出量症候群に陥る可能性がある

目標:予測される症状には時期を失せず適切な処置をおこない、心不全状態をきたさない

OーP(観察)

1 VS、ショック症状の有無

2 ECGモニタの把握、胸部不快感や動悸の有無

3 皮膚の状態、末梢冷感、チアノーゼの有無

4 尿量、尿比重、性状

5 中枢神経系の反応

TーP(実施)

1 心負荷の軽減

a 酸素吸入

b 心身の安静と保温

c カテコラミン与薬による心筋収縮力の増加を図る

d 場合によりIABPの使用

2 心嚢ドレーンの管理

a 排液量、性状のチェック

b ミルキング

c 屈曲、閉塞に注意

3 不整脈の監視

a 抗ス整脈剤の与薬

b 重症不整脈:心室阻動、心停止時

4 水分出納のチェック

a 水分出納バランスの一定保持

b CVP測定

c 尿量維持の為利尿剤の使用

5 電解質データの把握:Na、K、Cl、Caの補正

#5術前より肺うっ血、肺機能低下症例が多く、呼吸不全に陥りやすい

目標:呼吸管理を行い、血液ガス分圧を正常に保つことが出来る

OーP(観察)

1 RR、呼吸音、胸郭運動、喀痰の性状と量

2 胸部不快感、心悸亢進、チアノーゼの有無

3 意識レベル

TーP(実施)

1 肺換気面積の拡大

a 喀痰喀出:吸引、体位ドレナージ、吸引、タッピング

b セミファーラー位による横隔膜下降

c 気道の確保:肩まくらの使用、エアウエイの挿入

2 酸素吸入

3 胸部レントゲンの把握

4 疼痛の緩和

a 背部マッサージ

b 体位の工夫:安楽枕、体位変換

c 医師の指示により鎮痛剤使用

5 血液ガスのチェック

6 胃拡張による肺機能障害の予防

a 胃チューブによる排液流出、吸引

EーP(教育)

1 喀痰喀出指導

a 創部を自分で軽く圧迫し強制咳嗽する

参考資料:標準看護計画

#6血行及び創直接感染により、縫合不全、敗血症を起こすことがある

目標:感染に対しての予防的処置が受けられ、弁の脱落、再置換術という状態をきたさない

OーP(観察)

1 熱型、発熱の程度、悪寒戦慄の有無

2 細菌性ショックの有無

3 創部の発赤、腫脹、疼痛の有無

4 新たに出た心雑音の有無

TーP(実施)

1 各ルートの管理

a 動脈ライン

b 末梢ライン

c CVPライン:スワンガンツカテーテル

2 創部の保清

a ガーゼ交換時の清潔操作

b 心嚢ドレーン、縦隔ドレーンの管理

3 口腔内の保清

a 含嗽、歯磨き:上気道炎、耳下腺炎の予防

4 全身の保清

5 尿路感染予防:バルンカテーテルの管理、膀胱洗浄

6 発熱時の対処療法:悪寒発熱、安静、保温

7 血液データのチェック:CRP、WBC、ESR、血性培養など

8 抗生物質の確実与薬

EーP(教育)

1 各ルート、ガーゼなどの除去予防の説明

2 抗生物質内服時は、時間と量を正確に守るように説明する

#7低心拍出量症候群、不整脈、血圧の変動により急性腎不全を起こすことがある

目標:腎血流量の安定を図り、尿量維持と排泄機能の改善ができる

OーP(観察)

1 尿量、尿比重、性状:抹消循環の状態、浮腫の有無、意識レベル

TーP(実施)

1 尿量維持:医師の指示により腎血流増加剤や利尿剤、代用血漿液の使用

2 検査データの把握:電解質、窒素、クレアチニン、BUN等

3 電解質、代謝産物の排泄:グルコース、インスリン療法、イオン交換樹脂材の注腸

4 イン、アウトチェック

a 飲水量:固形食事量×7

b 体重測定:毎日

5 食事療法:低たんぱく食、低ナトリウム食、低カリウム食、水分制限

6 代謝性アシドーシスの予防

a アルカリ剤:炭酸水素ナトリウムの与薬

b 場合により透析

EーP(教育)

1 安静と食事療法の必要性を説明し、日常生活において注意するように指導する

#8人工弁置換後は、弁周囲に血栓形成をきたしやすい

目標:血栓形成による血行障害を起こさない

OーP(観察)

1 脳血栓症による意識レベルの低下、痙攣、麻痺、頭痛の有無

2 脳血栓症による呼吸困難、胸痛、血痰、心悸亢進の有無

3 末梢血栓症による動脈触知、冷感、しびれ感、チアノーゼの有無

4 腹部血栓症による腹痛、腹部膨満感、吐気、嘔吐の有無

5 抗凝固療法時における出血傾向の観察

a 歯肉、皮下、粘膜、消化管、腎、肺に伴う症状

TーP(実施)

1 抗凝固療法(心嚢ドレーン抜去後より開始)術後2,3日目

a 経口抗凝固剤の正確な与薬

b 経口抗凝固剤服用時の注意:出血傾向のチェック、プロトロンビン時間値コントロール:20~30秒程度、圧迫予防、止血確認

c 抗凝固剤の使用(プロトロンビン生産の抑制)と持続時間(2~7)日と、中和剤(ビタミンK)を知っておく

d 非ステロイド性抗炎症剤の併用により出血傾向の亢進をきたすことがある

EーP(教育)

1 出血傾向症状の説明を行い、症状出現時にはすぐに知らせるように指導する

2 危険物取扱時には創傷をつくらないように注意し、打撲による内出血も起こさないよう説明する

3 ワーファリン服用の量と時間を正確に守らせる

4 食事の注意:特に納豆の制限:腸内でのビタミンKの作成を促すため

#9人工弁により、赤血球が破壊されて、貧血の発生を見ることがある

目標:術後多少の貧血は免れないが、回復への影響大であるので適切な治療を受けられる

OーP(観察)

1 顔色、眼瞼結膜の状態

2 眩暈、動悸、息切れ、チアノーゼ、黄疸の有無

3 食事摂取内容と量の把握

4 検査データの把握:RBC、Ht、Hb、TBil

TーP(実施)

1 輸血輸液の管理

2 医師の指示により鉄剤、ビタミン剤の与薬

EーP(教育)

1 食事指導:緑黄色野菜やレバーの摂取を促す

#10退院時、社会復帰や日常生活に対し不安を持つことが多い

目標:具体的な細かい説明を受け、安心して退院できる

EーP(教育)

1 退院指導パンフレット参照

参考資料:標準看護計画

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