B型慢性肝炎患者の看護計画

消化器系看護計画

目次

 B型慢性肝炎患者の看護計画

#1 自覚症状がないことに関連し、食後1~2時間の臥床安静が守られにくい

目標:安静の必要性が理解でき、無理な運動負荷はせず食後の安静が守れる

OーP(観察)

1 日常生活の過ごし方、患者の言葉、安静度の理解度

TーP(実施)

1 安静の意義について説明する

2 安静度は読書、レコード鑑賞など患者の趣味を取り入れたものを勧める

EーP(教育)

1 食後の安静を習慣づけるよう説明する

2 規則正しい生活を送り、睡眠を十分とるように指導する

#2 HBに対する知識が不十分なことに関連し、他者に感染する危険性がある:活動性

目標:HBに対し正しい理解ができ、不明な点は医師又は看護師に質問が出来、自ら感染防止できる

OーP(観察)

1 HBパンフレットに関する理解度

2 患者の言動

TーP(実施)

1 血液、分泌物、排泄物の取り扱いはデイスポーザブル手袋を使用

2 手洗いはイルガサンDP200使用

EーP(教育)

1 HBパンフレットに沿って指導する

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#3 慢性の経過をたどっていることに関連し、再発を繰り返し症状が悪化する可能性がある

目標:病識を持ち自ら再発予防に努められる

OーP(観察)

1 吐気、嘔吐、食欲不振、腹部膨満感、腹痛、食事摂取量

2 全身倦怠感、疲労感、頭痛、不眠、体重減少

3 眼球、皮膚粘膜の黄染、肝腫大、圧痛

4 手掌紅斑、クモ上血管腫

5 尿、便の性状と量

6 検査データのチェック:GOT、GPT、ZTT、TTT、ALP、TBiL、コレステロール等

7 疾病に対する知識、パンフレットに対する理解度

TーP(実施)

1 安静度に応じたADLの援助を行う

EーP(教育)

1 医師より病状説明後、理解度を確認し不十分な点があれば捕捉指導する

2 食後1~2時間の安静指導を行う

3 肝臓パンフレットに沿って指導する

#4 長期療養に関連し、治療検査に対し不安がある

目標:治療および検査の必要性を理解し、不安を口に出して表現でき、安心して治療検査が受けられる

OーP(観察)

1 患者の言動、精神状態

2 治療、検査に関する理解度

3 睡眠状態

TーP(実施)

1 医師に治療および検査前には十分な説明を依頼する

2 患者の訴えは十分に聞き、訴えやすい雰囲気をつくる

3 看護者は統一した言動で接し、不安の訴えには頭から否定せず受容の姿勢で聞く

4 長期療養の為不安、イライラ、動揺を起こさないように患者の個性、心理面に十分気を配る

EーP(教育)

1 心配事は医師又は看護師に報告するように説明する

#5 肝生検より合併症を起こす可能性がある

目標:生検後の影響が最小限度にとどめられ、異常時は適切な処置が受けられる

OーP(観察)

1 VS

2 胸部症状、肝生検部の疼痛、出血

3 腹部症状、胃部症状

4 自然排尿の有無

5 検査データのチェック

TーP(実施)

1 疼痛、発熱時は医師の指示を受ける

2 24時間ベッド上安静の為、苦痛の軽減を図る

3 生検後3日間ガーゼ交換施行

4 生検後3日間は入浴不可の為清拭施行

EーP(教育)

1 医師より肝生検の目的、手順の説明を行うが理解度を確認し不十分な点は補足説明する

2 床上排泄の指導を行う

3 肝生検前後の安静度、食事、水分については医師の指示に従い説明する

#6 ステロイドホルモン内服に関連した、副作用出現の可能性がある

目標:薬剤の副作用に対する知識を持ち、異常時は医師又は看護師に報告でき適切な処置が受けられる

OーP(観察)

1 腹部症状、胃部症状、体重および食事摂取量のチェック、便の性状

2 満月様顔貌、精神症状

3 検査データ

TーP(実施)

1 医師にステロイドホルモンを開始するにあたり、その必要性、副作用について説明を依頼する

2 副作用出現時は医師に報告し、指示を受ける

3 服薬の確認

EーP(教育)

1 正しい服薬方法を指導する

2 ステロイドホルモン剤の副作用について説明する

3 副作用出現時は医師又は看護師に報告するよう指導する

#7 インターフェロン使用に関連し、副作用出現の可能性がある

目標:インターフェロンに対して正しい知識を持ち異常時は医師又は看護師に報告でき、適切な処置が受けられる

OーP(観察)

1 発熱、全身倦怠感、関節痛

2 腹部、胃部症状

3 鎮痛解熱剤使用後の効果時間

4 尿、検査データのチェック

TーP(実施)

1 発熱時は医師の指示により解熱剤を使用する(解熱剤は発熱する直前に使用すると身体的に楽なことが多いので、患者の熱型に注意して効果的な使用を行う)

2 副作用は徐々に身体が慣れていくので、苦痛は軽減していくことを話し励ます

EーP(教育)

1 医師よりインターフェロンについて説明を受け、理解不十分な点は看護師が補足する

2 インターフェロンの主な副作用、日常生活の留意点、効果的な解熱剤の使用方法について説明する(パンフレット使用)

3 副作用出現時は医師又は看護師に報告するように説明する

#8 病識がないために、退院後の生活に対し不安がある

目標:退院までに生活指導を受けることで不安が軽減する

OーP(観察)

1 他者の言動、表情

2 社会復帰についての問題点

EーP(教育)

1 規則正しい生活をする

2 運動量は医師の指示範囲とする

3 食後1~2時間の安静指導する

4 高カロリー、高たんぱくの食事をする

5 禁酒について指導する

6 仕事、職場復帰への指導をする

7 悪化徴候について指導する:腹水、黄疸、肝不全症状について

8 HB抗原陽性患者に対する指導をする(パンフレット使用する)

#9 全身倦怠感、発熱、筋肉痛による苦痛がある

目標:身体的苦痛が緩和され安楽な体位が取れる

OーP(観察)

1 発熱、悪寒、戦慄、倦怠感、筋肉痛

2 下肢の倦怠感、患者の言動

TーP(実施)

1 発熱時氷枕にて解熱を図る

 a 発汗等による軽い脱水時は水分補給に努める

 b 悪寒戦慄時は、電気毛布等による保温に努める

2 解熱しない時は、医師の指示にて解熱剤を使用する

3 倦怠感に対しては、安楽枕等を利用して体幹の圧迫を避けるように工夫する

4 少しの振動騒音も苦痛に感じることがあるため、作業によるベッドの振動を最小限にする

5 日差しが強い場合はブラインドなどで調節する

6 筋肉痛、下肢の倦怠感等に対しては湿布を貼付する

7 患者の相談相手になる

EーP(教育)

1 急性期の一般症状であることを説明し、苦痛時は報告するように指導する

#10食欲不振により栄養状態の低下をきたす可能性がある

目標:環境が整理されていて食事が少量でも食べられ、栄養状態の低下をきたさない

OーP(観察)

1 食欲不振、吐気、嘔吐、吐物の性状

2 食事摂取量、体重減少、尿量、飲水量

3 検査データのチェック

TーP(実施)

1 食べやすく患者の口に合うように工夫する:果物、牛乳、野菜スープ、葛湯など高カロリー高たんぱくの食事

2 患者の好みに応じて分割食にする

3 どうしても食べられない時は、患者の好むものを少量づつ勧め、栄養補給に努める

4 枕元にはガーグルベース、テイッシュペーパー、タオルなどを用意する:吐物の観察、消化の状態、混入物の観察

5 吐気嘔吐が激しく食事が摂取できない場合は、医師の指示にて輸液を行う

EーP(教育)

1 吐気を誘発しない程度の経口摂取量を指導する

#11黄疸による掻痒感がある

目標:皮膚の清潔が保たれかゆみが緩和し快適に過ごせる

OーP(観察)

1 皮膚の生活が保たれかゆみが緩和し快適に過ごせる

TーP(実施)

1 黄疸、皮膚の状態、掻痒感

 a 冷たいおしぼりで清拭

 b レスタミン軟膏あるいはヨモギローション塗布する

 c 効果がなければ医師に相談し、掻痒感の強いときは内服薬などを考慮してもらう

2 皮膚の清潔に努める

EーP(教育)

1 舌苔に描かないように指導し、爪は短く切っておくように説明する

#12肝予備能が低下すると重症化する危険性がある

目標:以上の早期発見と適切な処置が受けられる

OーP(観察)

1 黄疸の増強、フラッピング

2 意識レベルの低下:嗜眠、興奮などの異常行動、見当識の低下、質問に対する反応が鈍い、ぐったりして生気がない

3 腹水、浮腫、尿便の性状、及び尿量の測定

4 消化器症状、鼓腸、便秘、腹部膨満感、出血傾向

5 検査データのチェック:TBiI、GOT、GPT、TTT、IgM、ALP、止血機能

TーP(実施)

1 出血傾向がある場合は、止血を十分に行う

2 レベルの変動、フラッピングには十分注意し異常時は医師に報告する

EーP(教育)

1 家族に異常があれば医師又は看護師に報告するように説明する

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#13ベッド臥床安静により、日常生活行動が制限される

目標:臥床安静の必要性が理解でき、不自由なく療養できる

OーP(観察)

1 患者の言動、パンフレットの理解度、日常生活の過ごし方

TーP(実施)

1 モーニングケア、イブニングケア、配膳、下膳を行う

2 清拭洗髪足浴については医師の指示に従う:倦怠感が強いときは日時を変更する

3 ストレスが蓄積されないように、ラジオ読書にて気分転換を図るように工夫する

EーP(教育)

1 患者の状態に応じて肝臓パンフレットに沿って指導する

2 患者の必要性を説明する

#14吐物及び尿、便により他者に経口感染の可能性がある

目標:排泄後は手荒いが確実に施行でき、自ら感染を防止できる

OーP(観察)

1 手洗いが確実に施行できているかどうか

2 分泌物排泄物の取り扱い

TーP(実施)

1 患者に使用した物品の取り扱い:必ず手袋を使用し素手で扱わない

2 処置終了後は手洗いの励行

3 症状安定するまでは面会者の制限を図る

EーP(教育)

1 排泄後の手洗い指導:イルガサン300を使用

2 HBパンフレットに沿って指導

#15血液唾液を介して他者に感染する危険性がある

目標:患者家族共にHBに対し正しい理解が出来自ら感染を防止することが出来る

OーP(観察)

1 HBパンフレットの理解度、日常生活面について

TーP(実施)

1 血液分泌物排泄物の取り扱いはデスポーザブルの手袋を使用

2 手洗いはイルガサン300を使用

3 採血器具はデスポーザブルを使用

4 使用後の注射針は、必ずキャップをして所定の場所に廃棄

5 食器はデスポーザブルを使用

6 体温計は感染症用体温計を使用

7 血圧計はHB患者に専用とする

8 汚物、寝衣、リネン類、医療器具、器械、やくはい、マジックカップ、ガーグルベース、その他については院内感染予防マニュアルに準ずる

EーP(教育)

1 HBパンフレットに沿って指導する(不必要な恐怖心を抱かせないように留意して指導する)

#16退院後の生活に対し不安がある

目標:退院までに病状に応じた日常生活行動を理解し、不安が軽減する

EーP(教育)

1 退院後2~4週間は、入院中と変わらない規則正しい生活をする

2 高カロリー高たんぱくの食事をとり、食後1~2時間の安静を守る

3 アルコール、就業については医師の指示に従う

4 登山、海水浴、スキーなどの激しいスポーツは当分の間避ける

5 内服は確実に行う

6 HB抗原陽性患者のついて(パンフレットに沿った指導)

 a 血液の後始末は自分で行いその後焼却する

 b 剃毛刃、歯ブラシは専用にする

 c 乳幼児は感染しやすいので濃厚な接し方はしない

 d 排泄物は流水で十分洗浄する

 e 献血はしない

 f 定期的な肝機能検査を行う

 g 他の病院を受診する時はHB抗原陽性であることを告げるように説明する

 h 生理日に入浴は最後にし浴室は流水で洗い流す

 i 家族のHB抗原、抗体検査が(-)であればHBワクチン接種を勧める

 j 患者個々の社会生活に適応した、無理のない良い生活習慣を一緒に考える

参考資料:標準看護計画

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