胆のう摘出術、総胆管切開術前後の患者の看護計画
#1胆石の移動や胆のう炎により疼痛がある
目標:右季肋部の激痛や右肩背部への放散痛が緩和する
OーP(観察)
1 痛みの部位、程度
2 放散痛
3 発熱
4 炎症症状:白血球数の増加
5 黄疸:肝機能データ
6 食事との関係:脂肪過食が誘因となる
TーP(実施)
1 発作時は安静臥位、患者の好む体位の工夫
2 絶食または脂肪食を制限し刺激物アルコールなどは禁止する
3 炎症症状がある時は右季肋部に冷湿布をする
4 医師の指示により鎮痛剤を使用する:塩酸モルヒネは禁止、ベンタゾリン使用時は硫酸アトロピンと併用する
5 疝痛発作時、患者の不安が大きいため症状について説明し、安心感を持たせる
#2胆汁のうっ滞によりビリルビンの排泄が障害され、血中ビリルビン値が上昇し黄疸が出現することもある
目標:黄染、掻痒感、倦怠感などの症状が緩和される
OーP(観察)
1 黄疸の部位と程度:皮膚、眼球結膜、口腔粘膜、顔面など
2 全身倦怠感、食欲不振、悪心嘔吐、腹部膨満感、掻痒感の有無
3 尿の色、量:色は濃く泡も黄色
4 便の色:胆汁色素を含まない脂肪の多い灰白色
TーP(実施)
1 倦怠感、腹部膨満感のある場合は安静臥位を勧め体位の工夫をする
2 皮膚の保清と損傷予防の為35%アルコール、1~2%重曹水による清拭を行う
3 寝衣寝具は清潔でやわらかいものを選び化学繊維は禁止する
4 医師の指示により抗ヒスタミン剤、安定剤の使用
5 肝機能、ビリルビン値のチェック
EーP(教育)
1 術前オリエンテーションでTチューブ挿入の目的と必要性を説明する
2 爪を切り皮膚の損傷を防止する。また打ち身に注意する
#3胆汁酸の腸内流出が妨げられると腸内細菌によるビタミンKの合成が阻害され、プロトロンビン生成が十分できないため出血傾向になりやすい
目標:止血機能障害があることを理解し、出血の予防ができる
OーP(観察)
1 全身状態:口腔粘膜、歯肉、鼻、皮膚の出血の有無、女性は月経の期間と量
TーP(実施)
1 検査値のチェック
a 血小板数、出血時間、PT時間、凝固時間
2 心身の安静
3 摩擦、打撲、外傷予防:寝衣、寝具、つめの手入れ
4 皮膚粘膜の清潔と保護
#4出血傾向の為ドレーン、創部から出血しやすい
目標:出血傾向の早期発見、対処が受けられる
OーP(観察)
1 ドレーンからの排液量、性状
2 ガーゼ汚染:Tチューブからの出血に注意
3 検査データ
TーP(実施)
1 深呼吸を促して喀痰喀出を十分に行い離床を勧める
2 吸入、咳嗽、体位変換を行い喀痰喀出を行う:喀痰喀出困難による低酸素血症に注意
3 ドレーンのミルキング
#5 Tチューブ挿入時、不十分なドレナージによる胆汁性腹膜炎が起こる可能性がある
目標:Tチューブから胆汁流出がスムーズにあり腹痛、腹部膨満感、吐気、嘔吐、発熱の症状がない
OーP(観察)
1 Tチューブからの流出状態
2 排液の性状、量、色、臭気、混濁、胆泥、胆砂の有無:混濁し膿汁化してくるものは炎症の可能性がある
3 腹部症状
a 疼痛、腹部膨満感の有無
b 排ガス、腸蠕動
c 排便状態、食事摂取状態
d 発熱の有無
TーP(実施)
1 Tチューブの管理
a 術後の胆道減圧をはかり胆汁うっ血による感染予防
b 胆管狭窄予防
c 術後Tチューブ造影
2 清潔
a Tチューブ挿入部は清潔操作による消毒、胆汁漏出がある場合は皮膚をビランさせないように保護する
b 排液は滅菌済みのGボトルを使用する
c ドレーンの排液量は無菌的に取り扱い、逆行性感染を予防する:排液は1日1回量を測定後捨てる
d Gボトルを交換:1週間に1回
3 Tチューブの流出不良:総胆管から抜けているか又は屈曲閉塞している
4 排液を逆流させないようにGボトルは低い位置に置く
5 Tチューブの流出増量は遺残結石などによる胆道下部の通過障害によるものであるため医師に報告する
6 Tチューブ抜去
a 術後2~3週間後造営し、クランプ後抜去となる
b 抜去後は発熱、腹部症状に注意する
EーP(教育)
1 Tチューブの必要性を患者に説明し、抜去しないように固定し協力を得る
[ad]
#6胆汁の成分であるNa、K、胆汁酸が失われることにより、電解質と水分のバランスが崩れやすい
目標:輸液、食事などの補給により脱水、下痢などの症状が出現しない
OーP(観察)
1 血液データ
2 食事摂取状態、内容
3 脱水症状、下痢、吐き気、嘔吐
TーP(実施)
1 胆汁の量、水分のバランス、電解質データのチェック
EーP(教育)
1 ナトリウム、カリウムを含む果物や良性のたんぱく質を説明し補給するように指導する
#7遺残結石、癒着、胆汁瘻等により術後胆のう摘出後症候群を起こすことがある
目標:保存的療法により炎症症状、黄疸などが軽減し再手術とならない
OーP(観察)
1 消化管症状の有無
a 腹部膨満感、不快感、重圧感
b 腹痛、吐き気、嘔吐
c 発熱、黄疸
d 便通、排便回数、性状
e 食事の摂取量、内容
EーP(教育)
1 退院指導
a 食事:術後は流動食から開始するが脂肪分の少ない食事を摂取する。下痢をしたり便が白っぽくなって来たら脂肪分を少し控える。ビタミンを多く含む食物を摂取する
b 薬物:一時的に消化機能が低下する為消化剤を服用
c 心理的安静:自律神経の影響を良い状態にする為に精神的ストレスを避ける。術後の体力の回復に合わせて活動範囲を拡大し過労にならないようにする。食事、排泄、睡眠など規則正しくする
参考資料:標準看護計画
コメント