肝切除術を受ける患者の看護計画

消化器系看護計画

目次

#1入院時、手術の適応評価のための検査に関連した不安がある

目標:検査の目的、方法が分かり納得して受けられる

OーP(観察)

1 表情、言動、理解度

2 入院による環境変化への適応度

3 肝機能検査、止血機能検査:TP、ALB、TTT、コレステロール、GOT、GPT、LDH

4 肝切除許容量検査:ICG、OGTT、肝シンチグラフイー

5 腹部血管造影

TーP(実施)

1 検査の説明を患者の理解度に合わせて行い、受け止め方を確認する

2 各々の検査要綱に従って準備、前処置を行う

3 痛み、不安などの感情を表出させるよう、コミュニケーションの確立を図る

4 患者が家族の支援を受けやすいよう家族に働きかける

5 安静を要する検査後は面会人を制限する

6 検査終了後、手術の適応となれば術前オリエンテーションを開始する

#2腫瘍や肝硬変による肝実質障害に関連した栄養状態の低下がある

目標:TP、ALB値が正常範囲内で倦怠感がない

OーP(観察)

1 体重の減少

2 眩暈、ふらつきの有無

3 浮腫の有無、程度、部位

4 食事摂取量、補食の有無と内容

5 顔色、皮膚色

6 検査データ:TP、ALB、コレステロール、コリンエステラーゼ

7 尿たんぱく、尿量

8 水分出納

TーP(実施)

1 高蛋白、高カロリー食とする

2 高カロリー輸液施行後はその管理を行う

3 眩暈、ふらつきによる事故防止

4 腹水が貯留している場合は、腹囲測定を行い変化を見る

5 浮腫が強い場合は、医師の指示により塩分制限食やアルブミン製剤の与薬を行う

EーP(教育)

1 高カロリー輸液の必要性(パンフレットを参照)

2 栄養を十分取ることが大切である理由を説明する

3 浮腫がある場合は皮膚を傷つけないように注意する

#3腫瘍の胆道系浸潤に関連した閉塞性黄疸がある

目標:黄疸が軽減し手術が受けられる

OーP(観察)

1 皮膚眼球の黄染の程度、

2 掻痒感の有無

3 PTCD、ENBDの排液量と性状

4 尿の性状、尿中ウロビリノーゲン、ビリルビン値

5 便の色調、灰白色便の有無

6 検査データ:GOT、GPT、ALP

7 検査所見:胸部レントゲン、PTC、腹部エコー、腹部CT

TーP(実施)

1 患者に減黄処置の必要性を十分説明し理解を得る

2 PTCD、ENBDにより処置する時は準備介助する

#4 PTPE、TAEに関連した不安がある

目標:検査の目的、方法が分かり安心して検査が受けられる(TAE施行後の看護参照)

TーP(実施)

1 医師の説明を患者が理解しているかどうかを知り、必要であれば追加説明をする

2 検査の前日までに注意事項、必要物品などを説明しておく

#5術中多量の血管処理を行うことに関連し、術後出血の可能性がある

目標:VSが安定しており、意識レベルの低下がない

OーP(観察)

1 VS

2 一般状態

a 意識レベル

b 末梢冷感、チアノーゼの有無

c 吐気、嘔吐

d 腹痛

e 顔色

f 尿量

3 創部腹部の状態

a 腹部膨満

b 創部のガーゼ汚染の有無、量、性状

c ドレーンからの排液量、性状:200ml/時が3時間以上続けば再手術、50~100ml/時であれば医師に報告

4 検査データ:Ht、Hb、RBC、胸部レントゲン

TーP(実施)

1 輸血救急薬品の準備を整えておく

2 止血剤与薬の介助を行う

3 ドレーン管理:固定、ミルキング

#6肝切除後、代謝機能の低下に関連した低血糖の可能性がある

目標:血糖値が指示範囲内で維持され、低血糖症状が起きない

OーP(観察)

1 意識状態

2 低血糖症状の有無:冷汗、脱力感、倦怠感、痙攣、手指振戦、動悸、吐き気、嘔吐、頻脈、低体温、複視、昏睡など

3 検査データ:血糖、尿糖、尿中ケトン体

TーP(実施)

1 糖の補給管理

2 インスリンの管理:種類、量、糖

EーP(教育)

1 低血糖、高血糖症状を指導する

#7肝臓切除後、凝固因子の減少に関連したDICの可能性がある

目標:出血傾向がない(DIC患者の看護に準ずる)

#8凝固因子が大量に消費されることに関連した出血傾向がある

目標:出血がなくVSが安定している

OーP(観察)

1 VS

a 循環:

b 呼吸:

2 全身状態

a 冷汗

b 皮下出血、口腔内出血、消化管出血の有無

c 食欲不振、腹痛、腹部膨満の有無、胃チューブの性状、便の性状、便潜血

d 脳出血、意識レベル、瞳孔径、対光反射、神経症状

e 喀痰の性状、呼吸音:ラッセル音、肺胞内出血の有無

f 膀胱、腎出血、尿性状:尿潜血の有無、程度

g 性器出血、不正出血の有無

3 検査データ

a 止血検査

b CBC、PLt

c 腹部CT

d 腹部エコー

TーP(実施)

1 出血予防

a 皮膚粘膜への外的刺激を避け、清拭時も強くこすらない

b 打撲に注意し、ベッド柵に手足が当たらないよう保護する

c 口腔内保清は粘膜を傷つけないように行う

d 点滴抜去時は確実な圧迫止血を行う

e 胃粘膜の保護剤の与薬を医師の指示で行う

2 薬剤の確実与薬:指示された薬剤の確認、使用量、注入速度の確認

3 輸血

a 輸血時は血液型とクロスマッチの照合を確認する

b 血小板血漿:1週間を超えてPLTが改善されない場合

c 輸血の介助:アレルギー、アナフイラキシーショックに注意する

4 疾患に対する予備知識を持たせ治療の協力を得る

EーP(教育)

1 歯ブラスは柔らかいものを使用し、口腔内を傷つけないように指導する

2 皮膚を強くこすらないよう指導する

#9肝切除後アルブミン合成能力低下に関連した蛋白代謝異常を起こしやすい

目標:浮腫がなく体動に支障がない

OーP(観察)

1 尿量、尿中たんぱく

2 水分出納、ドレーンの排液量

3 腹囲の増減

4 浮腫の有無、部位、程度

5 検査データ:アルブミン、尿中たんぱく定量、TP

6 意識レベル

7 神経症状

TーP(実施)

1 医師の指示により

a 肝性因子の補給としてFFPの与薬

b アルブミン3,5g/dl、コリンエステラーゼ1000単位を目安にアルブミンを追加

2 高たんぱく食、塩分制限食とする

EーP(教育)

1 食事制限を守るように指導する

2 浮腫時は下着はゆったりとしたものを着用し、圧迫を避けるよう指導する

#10肝切除後の炎症に関連した、横隔膜下膿瘍を形成する可能性がある

目標:熱発、咳、痰などの症状がなく、体動もスムーズに進む

OーP(観察)

1 VS

2 呼吸症状:咳嗽、喀痰、呼吸音、呼吸困難、チアノーゼ

3 横隔膜下ドレナージの排液:性状、色調、臭気、流出状態

4 胸部、腹部レントゲン

5 血液ガス

6 腹部症状:腹痛、腹部膨満

7 貧血、ショック症状

TーP(実施)

1 呼吸器症状がある場合は去痰を促し、呼吸困難の緩和に努め呼吸管理する

2 医師の指示により次のことを行う

a 抗生物質の与薬

b 去痰剤の与薬

c 酸素療法

d 超音波ネブライザー

3 体位変換、および離床:主治医の指示により

a 1~2日目より側臥位

b 4~5日目より座位

c 6~7日目より立位

4 横隔膜下膿瘍を起こした場合は、腹部エコー下でドレナージを施行するため介助する

5 胸水貯留時は胸腔穿刺を行うため、チェストドレーンバッグの準備と介助を行う

6 ドレーンのミルキングを十分に行う

EーP(教育)

1 喀痰の喀出法を指導する

#11切除量の拡大や術中の血流遮断、低血圧などにより肝不全を起こす可能性がある

目標:意識が明瞭で、普通に会話ができる

OーP(観察)

1 皮膚黄染、眼球強膜黄染の有無

2 皮膚の状態

3 倦怠感、吐気、不眠の有無

4 検査データ:GOT、GPT、BUN、アンモニアなど

5 意識状態:はばたき振戦

TーP(実施)

1 ラクツロース与薬:高アンモニア血症予防

2 下剤の与薬

#12離床が進むにつれて、肝臓の負担が増加し、再び肝機能が低下しやすい

目標:肝機能が正常範囲内で離床が進む

OーP(観察)

1 吐気、嘔吐

2 全身倦怠感

3 食事摂取量、食欲の有無

4 眼球強膜黄染、黄疸の有無

5 掻痒感の有無

6 出血傾向の有無

7 意識レベル

8 検査データ:GOT、GPT、LDH、血小板

TーP(実施)

1 安静

a 離床は検査データ、自覚症状に注意し医師と相談しながら進める

b 臥床安静による苦痛の緩和

c 食後1~2時間のベッド上安静を促す

d 不眠時医師の指示により睡眠剤使用

e 清拭、洗髪などは短時間で行い疲労を最小限にする

f 面会人の制限をする

g 患者の訴えを良く聴き、不安不満の軽減を図る

2 食事

a 腸蠕動が十分回復した後、医師の指示で開始する

b 高蛋白、高ビタミン、高カロリー食とする

c 食事摂取時の環境を整える

EーP(教育)

1 安静の必要性を説明する

2 糖質、タンパク質、ビタミン類を多く含む食品摂取の必要性を説明する

3 塩分、脂肪制限の必要性を説明する

#13退院後は安静、食事療法の継続が難しい

目標:家族の協力が得られ、家庭での健康管理法が分かる

OーP(観察)

1 患者の理解度、病識

2 家族の理解度、受け入れ体制

3 社会的背景、職業

4 患者の家庭での役割

TーP(実施)

1 外来での継続治療内容を把握する

2 主治医と相談し、退院後の安静度を決定する

3 退院指導は家族も含めて行う

EーP(教育)

1 食事指導:高蛋白、高ビタミン、高カロリー食、偏食は避け便通を整え規則的な食生活をする、飲酒は禁止

2 日常生活

a 最初の2か月は軽い散歩程度で、疲労を感じない程度の運動をする

b 十分な睡眠をとる

c 浮腫、体重の増減、出血傾向、黄疸、倦怠感など患者自身の身体症状について関心を持つようにする

d 輸血後肝炎の症状に注意する

e 家族に対し患者の精神症状、行動の変化などにも注意するよう指導する

3 外来受診:内服治療、定期的検査の必要性を説明する

参考資料:標準看護計画

コメント

タイトルとURLをコピーしました