ウイルス性肝炎患者の看護計画
#1全身倦怠感や掻痒感の為に、日常生活を送るのが苦痛である
目標:身体的苦痛及び心理的苦痛が緩和でき、前向きな気持ちになることがある。静かな環境の中で安静を保ちながら日常生活を過ごすことが出来る
OーP(観察)
1 バイタルサイン
2 黄疸、尿量、尿色、体重、浮腫
3 睡眠、意識状態
4 食欲不振の程度、食事摂取量、食事内容
5 排便状態
6 全身倦怠感の有無と程度
7 吐気嘔吐の有無と程度、時間帯
8 搔痒感の有無と程度、時間帯、皮膚・皮膚の傷の有無
9 出血傾向
10 検査値
11 ADL自立度
TーP(実施)
1 環境を整える
a 静かな個室、落ち着いた照明、ブラインド
b 換気、清掃
2 症状(発熱、掻痒感、悪心、嘔吐、倦怠感)に対する看護を行う
3 治療への援助を行う(輸液実施、内服)
4 必要な安静が取れる援助を行う
a 食事、睡眠、清潔、移動など
5 排便コントロールを行う
6 症状が軽減すれば徐々に行動範囲を広げる
7 患者の訴えを傾聴する
8 気分転換ができるように援助する
EーP(教育)
1 安静について、必要性と具体的方法を説明する
2 常態を改善する為に患者ができる事、必要なことを分かりやすく説明する
3 食事指導を行う
4 十分な睡眠の必要性を説明する
5 皮膚を掻きむしら無いように指導する
#2長期にわたる自己管理を中断する恐れがある
目標:健康体を維持する生活パターンを擁立でき、習慣化することが出来る。食事療法の実際を理解し、退院後の生活に取り入れることが出来る
OーP(観察)
1 疾患に対する認識、捉え方、焦り、不安
2 食事状況、治療食の内容、摂取量
3 嗜好
4 退院後、調理する人は誰か
5 体重
6 生活リズム、退院後の生活パターン
7 仕事、睡眠、運動、余暇活動、趣味
TーP(実施)
1 疾患についての説明(予後も含める)を医師に依頼する
2 医師の説明時には看護師も同席し、患者が理解納得しているか確認し、理解が深まるように支援する
3 病気を受け入れることが出来るように見守り支援する
4 栄養士による栄養支援を行う
5 治療食を摂取できるように働きかける
6 便秘を避けるケアを行う
7 指導内容が生活の中で実践できるかどうかを確認する
EーP(教育)
1 食事指導を行う
2 運動指導を行う
3 仕事を行いながら日常生活について指導する
4 趣味などを取り入れながらストレスをためない方法を考える
5 病気(内服、健診など)の自己管理について指導する
#3他者へ感染する恐れがある
目標:日常生活において他者への感染を防げ行動が理解でき実施できる。感染防止の行為に自信を持ち、前向きな気持ちになれる
OーP(観察)
1 患者の肝炎に対する知識認識
2 家族構成
3 妊娠の可能性
4 家族の認識
5 血液検査結果
6 患者の生活行動(清潔食事)
TーP(実施)
1 患者に病態を説明する
2 感染についてどのように受け止めているのかを時間をかけて対話する
3 感染について心配や不安が無いかを察知する
4 通常の生活では感染しないため、いたずらに心配しなくてもいいことを伝える
5 指導した感染予防行動を実施するように約束する
6 家族に病気の説明をし、怖がらないで接するように働きかける
7 家族と協力して患者を支援する
8 疑問点は何でも話せる関係を患者、医療者、家族間で築く
9 患者に関する情報をスタッフ全員で共有する
10 感染防止ケアの統一を図る
11 患者又は医療従事者が、免疫疾患患者や乳幼児と接する場合には注意を払う
12 スタンダードプリコーションの考えの下、スタッフが共通認識を持ち共通した行動をとる
EーP(教育)
1 通常の日常生活行動で良い物、注意すべき行動を明確にし、実施できるように指導する
2 日常生活場面に合わせて必要な指導を行う
3 かかりつけ医以外の病院を受診する時は病気を申し出ることを勧める
#4肝硬変、肝がんへの移行に対する不安がある
目標:不安を表現でき、情報提供や援助を受けることが出来る。自分の病気に対して正しい知識を得ることが出来る
OーP(観察)
1 患者の言動
2 患者の不安の程度
3 家族の状態
4 家族の病気に対する考え
TーP(実施)
1 病態を説明する
2 話しやすく質問しやすい環境をつくる
3 温かい態度で傾聴し誠実に対応する
4 患者会などを紹介する
5 家族にも説明をし理解と支援を得る
6 家族の不安に対応する
7 必要に応じて他職種に連絡し支援を要請する
EーP(教育)
1 不安な事や心配なことがあればいつでも相談に応じることを説明する
2 治療の継続が十分に出来るように指導する
3 家族に対して協力を依頼する
アセスメントの視点と根拠・起こりうる問題点
1全身状態、症状の出現状況の把握
起こりうる問題点:インターフェロンの副作用により食事を摂取できない。副作用症状が強い。睡眠パターンの混乱がある
主観的情報と客観的情報から、全身の系統的アセスメントを行い患者の全身状態、症状の出現状況を把握する
(全身状態)
・ バイタルサイン
・ 身長、体重、BMI、腹囲、体重の増減
(皮膚、頭髪、爪)
・ 皮膚粘膜の傷、発疹、かゆみ、乾燥や湿潤、横断、浮腫、脱毛、爪の形や色の変化
(血液、リンパ)
・ 輸血、血液製剤の使用量、貧血、出血傾向、リンパ節の腫脹や圧痛
(頭部、眼、耳、鼻、口)
・ 頭痛、めまい、頭部の外傷、意識状態、失神、けいれん
・ 見当識、理解力、記憶力、集中力、判断力
・ 記憶に変化があるか、決定が簡単にできるか、学習方法、困難はあるか
・ 聴力、聴力の変化、耳痛、耳鳴り、分泌物、耳垢、補聴器の使用
・ 視力視力の変化、眼痛、腫脹や発赤、分泌物、緑内障、白内障の既往、眼鏡の使用
・ 臭覚、鼻水、鼻閉、鼻出血、臭覚障害、副鼻腔炎の既往
・ 味覚、味覚の変化、齲歯や歯周病、義歯、口腔内の状態
(呼吸器、循環器)
・ 呼吸状態(呼吸数、リズム、呼吸音、SPO2)
・ 咳、痰、呼吸困難、息切れ、喘息、間質性肺炎の有無
・ 循環状態(脈拍、血圧、体温)
・ 胸痛、動悸、不整脈、労作時の息切れ、心臓病の既往、高血圧、浮腫
(消化器)
・ 食事摂取状況、食欲、悪心、嘔吐、嚥下障害の有無
・ 栄養補助食品やサプリメント使用の有無、種類、内容
・ 食欲不振、腹痛、悪心、嘔吐、下痢、便秘
(肝臓)
・ HCV(C型肝炎ウイルス)感染となる既往疾患や治療歴の有無、輸血・血液製剤使用歴、血液透析の有無、鍼の治療歴、刺青の有無、薬物乱用の既往
・ HCV感染を自覚した時の対処、HCV抗体+判明時期の経緯、慢性肝炎診断時期と経緯、受診状況、治療内容と経過
・ 自覚症状:右季肋部痛、背部痛、全身倦怠感、疲労感
・ 肝機能:AST、ALT、LDH、ALPなど
・ 栄養状態:TP、ALb、TC、Hb、Ht
・ C型肝炎検査:HCV抗体、ウイルス量、ウイルス型(血清型、遺伝子型)
・ 肝障害度:腹水、TP、ALb、ICG試験
・ 繊維化マーカー:ヒアルロン酸、Ⅳ型コラーゲン、プロコラーゲンⅢペプチド
・ 腫瘍マーカー:AFP、PIVKAⅡ
・ 検査所見:腹部超音波、腹部CT、腹部MRI、腹腔鏡下肝生検、腹部消化管造営、内視鏡
・ インターフェロンの使用状況、バイタルサインの変動、解熱薬の使用状況
(直腸、肛門、腎臓、泌尿器、生殖器)
・ 排便パターン
・ 排尿パターン
・ 尿検査値、便検査値、腎機能
・ セクシュアリテイや性的機能に関して感じている変化・問題
・ 性的関係の満足度、変化、問題の有無、パートナーとの関係
・ 避妊方法を使用しているか、それによる問題はないか
(骨格筋、四肢、知覚)
・ 四肢体幹の運動機能、関節可動域、関節痛、筋肉痛、疼痛、腫脹、発赤、熱感
・ 筋力、握力、歩行・姿勢の状態
・ 知覚や感覚の異常、ふるえ、振戦、冷感
・ 痛みや不快感はあるか、あるならばいつからどの程度で対処はどうしているか
(ADLとセルフケア)
・ 食事摂取、水分摂取
・ 喫煙飲酒の有無、服薬の有無、過労、過食、ストレスなど
・ 必要な活動のためにエネルギーは十分か、倦怠感や疲労感の有無
・ 仕事
・ 運動、レジャー活動
・ 睡眠、熟眠感の有無
・ 寝つき、途中覚醒、早朝覚醒、昼夜逆転、残眠感、日中の眠気の有無
・ ADL
2心理的側面の把握
起こりうる問題点:知識不足により効果的に治療を受け肝繊維化の進展を予防する行動がとれない。治療や疾患予後に対する不安がある
患者家族の疾患や治療に対する認識、ストレス対処行動、価値観や信念を理解する
(自己知覚)
・ 治療方法の決定に関する葛藤を示す言動を観察する
・ 抑うつを示す言動、治療内容とその効果を把握する
・ 視線を合わせるが集中力、注意力、身体の姿勢はどうか
・ 患者は自分自身についてどう思っているか
・ 患者は自分自身をどう表現するか
・ 患者は自分自身の身体やできることが変化したか、その変化は患者にとって問題か
・ 発症以来患者は自分の身体についての感じ方が変化したか
・ 怒り、イライラ、恐怖心、不安、落ち込みの程度とそれを和らげるものがあるか
・ 希望の有無、コントロール感の有無、対処方法はあるか
・ 現在の病状・検査・治療に関する理解の程度を把握する
・ 健康維持行動、医師や看護師の指示の実行状況、医療者及び療養生活に関する希望を持っているか
(コーピング、ストレス耐性)
・ この1~2年間に人生の大きな変化や危機があったかどうか
・ 物事をじっくり相談する相手は誰か
・ 緊張しているか、リラックスしているか、緊張を和らげる方法は何か
・ リラックスするためにアルコール、薬物を使用するか
・ 人生の大きな問題にどのように対処するか
・ ストレッサーの存在の有無
・ コーピングのために利用できるサポートシステム
(価値観、信念)
・ 全体的に見て人生が望み通りにいっているか、人生設計はどのようなものか
・ 人生や生活で大切なことは何か
・ 日常の主教実践、人生の中で信仰は重要か、困難に遭遇した時は信仰が役に立つか
3社会的側面の把握
家族、仕事、社会的環境の中で患者の主な役割と責任を理解する
・ 家族構成、家族や他者との関係、家族への依存度および自立度、面会者はどのような様子か
・ 家族としての問題は何か
・ 患者の疾患入院について、家族はどう感じているか
・ 患者の疾患入院について職場の理解はあるか
・ 職業、仕事の種類、仕事はうまくいっているか
・ 家庭内、職場、学校、社会活動での役割変化に対する認識の程度を把握する
・ 医療費、社会資源の活用状況、収入支出に対する認識の程度を把握する
参考資料:疾患と看護過程
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