前立腺肥大症患者の看護計画
#1前立腺肥大による尿道圧迫の為に排尿障害がある
目標:排尿障害が解消あるいは軽減する。排尿障害に伴う生活への影響(睡眠障害、活動範囲の制限)が改善できる
OーP(観察)
1 排尿障害の程度
2 腎機能低下の症状と検査値
3 尿路感染症の症状と検査値
4 飲水量と飲水時間
5 睡眠時間と熟睡感
6 活動範囲の変化
7 排尿障害に対する苦痛や不安の程度
8 手術に対する不安
TーP(実施)
1 排尿の場合は、トイレの近い病室にするか尿器を近くに置く
2 残尿が多い場合、あるいは尿閉をきたしている場合は、間欠的導尿あるいは膀胱内留置カテーテル挿入による持続的導尿を行う
3 入浴や陰部洗浄により陰部を清潔にする
4 不安や症状を表出しやすい雰囲気をつくる
5 不眠時は医師の指示により睡眠薬を投与する
EーP(教育)
1 夜間頻尿がある場合、夕食後の飲水を控えるように指導する
2 散歩など気分転換を図るよう勧める
#2術後合併症出現の恐れがある
目標:後出血を早期に発見するとともに、凝結による尿道閉塞を予防できる
OーP(観察)
1 バイタルサイン(血圧上昇、徐脈)
2 尿量、性状(血尿、貧血)
3 水分出納
4 顔面蒼白、頭痛、吐き気、嘔吐、冷感、眩暈
5 腹部膨満感
6 血液検査(Hb、電解質)
7 排便状態
8 止血薬の内服確認
TーP(実施)
1 術後1~2日目まで、止血目的の為に膀胱内留置カテーテルの牽引固定を行う
2 牽引時は、同一体位による腰痛に対して体位の工夫を行う
3 灌流液の速度を適宜調整する
4 膀胱内留置カテーテルから尿の流出が悪い場合はカテーテルを指でしごく
5 必要時医師の指示により緩下剤を投与する
EーP(教育)
1 TUR反応の症状を説明し、出現時はすぐに伝えるように説明する
2 膀胱内留置カテーテルの牽引固定中は、固定側の大腿部を屈曲しないよう指導する
3 歩行により血尿が強くなった場合は、すぐに看護師に伝え安静にするよう指導する
4 術後5日目に膀胱内留置カテーテルが抜去された後も、血尿を観察する為に蓄尿するよう指導する
5 水分摂取の必要性を説明し、食事の他に1日当たり1000mlの水分を摂るよう勧める
6 排便時などに努責しないように指導する
#3膀胱内留置カテーテル挿入の為に、尿路感染や閉塞の恐れがあると共に、安静が保てない
目標:逆行性の尿路感染症、膀胱内留置カテーテルの閉塞と抜去を予防できる
OーP(観察)
1 尿混濁の有無
2 尿検査(尿中白血球の増加)
3 経済的な尿量測定
4 漏尿の有無
5 膀胱刺激症状(膀胱テネスムス)の程度
6 膀胱内留置カテーテルの固定
TーP(実施)
1 膀胱内留置カテーテル挿入中は清拭によって身体を清潔にする
2 尿道口周囲は陰部洗浄により清潔にする
3 膀胱内留置カテーテル挿入中は、灌流液と採尿パックをつるした点滴台を持って歩行する為、転倒しないように環境を整備する
EーP(教育)
1 採尿パックを常に膀胱より低い位置に置くように指導する
2 床上臥床時、膀胱内留置カテーテルを屈曲させたり、ベッドに敷き込んで閉塞させないように指導する
3 歩行時、膀胱内留置カテーテルを無理に引っ張ったり抜去しないよう歩行方法を指導する
4 血尿が強くなければ、膀胱内に貯留する凝血を排出しやすいように体動を促す
5 水分摂取を促す
6 膀胱刺激症状を我慢しないで伝えるように説明する
#4術後の排尿障害と血尿の為に、経過に対する不安がある
目標:排尿障害と血尿を予防する行動を理解し、実施できる
OーP(観察)
1 膀胱内留置カテーテル抜去後の排尿障害の変化
2 術後7日目ごろに行う尿流量測定の結果と術前の結果との比較
3 血尿の変化
4 排尿障害と血尿に対する言動
TーP(実施)
1 排尿障害に著明な改善がない場合、不安を表出できるように関わる
2 尿失禁がある場合、漏尿の量に応じて生理用ナプキンや尿パッドを使用する
3 入浴を行い陰部を中心とした身体の清潔を図る
4 漏尿が多い場合は、骨盤底筋訓練を実施する
EーP(教育)
1 膀胱内留置カテーテルの抜去後に尿失禁がある場合は、なるべく一定の間隔で排尿するよう指導する
2 退院後約1か月は、血尿を予防するよう指導する
参考資料:疾患別看護過程
#5前立腺肥大による排尿困難がある
目標:頻尿、尿閉、残尿による苦痛がない
OーP(観察)
1 排尿状態
a 1回の尿量
b 1日尿回数:昼間と夜間の尿回数(夜間は21時から6時)
c 尿放出力
d 尿線状態
e 残尿感の有無
f 尿意の有無
g 下腹部膨満の有無
h 遷延性排尿、蔓延性排尿
2 尿性状:血尿、尿混濁の有無
3 飲水量
4 睡眠状態、熟睡感の有無
TーP(実施)
1 尿閉時は導尿を行う
2 医師の指示により不眠時睡眠剤を使用する
EーP(教育)
1 飲水指導:1日1500mml以上
2 畜尿の必要性について指導する
#6頻尿の為に睡眠が障害される
目標:熟睡感が得られる
OーP(観察)
1 昼夜の排尿回数
2 睡眠時間、熟睡間の程度
TーP(実施)
1 必要に応じて医師の指示にて安定剤を使用する
EーP(教育)
1 夜間は病室で尿器を使用するように指導する
#7排尿困難が進行し、残尿、尿閉などを起こすことがある
目標:禍福膨満、不快感がない
OーP(観察)
1 排尿困難の有無
a 排尿時間に延長
b 尿線細小
c 放尿力の減退
d 排尿途絶
2 残尿感の有無
3 血尿の有無と程度
4 尿路感染症状の有無
a 発熱
b 腰痛
c 排尿困難の悪化
d 会陰部の圧迫感、重圧感
e 膀胱炎症状:頻尿、疼痛、尿混濁
5 急性尿閉、慢性尿閉の有無
a 恥骨上から臍部への半球上の膨隆
b 圧痛
c 冷感、顔面蒼白、四肢冷感
TーP(実施)
1指示があれば導尿、カテーテル留置の介助をする
EーP(教育)
1排尿困難、下腹部の異常について説明しその対処方法について指導する
#8留置カテーテル留置中の為、尿路感染を起こしやすい
目標:尿路感染を起こさない
OーP(観察)
1 尿道口からの出血、尿漏れの有無
2 カテーテルのよじれや閉塞の有無
3 尿量
TーP(実施)
1 外尿同校の清潔:陰部洗浄やシャワー浴を行い陰部を清潔に保つ
EーP(教育)
1 陰部を清潔に保つ必要性について説明する
前立腺肥大症・前立腺がん (別冊NHKきょうの健康) | ||||
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#9 TUR-P後血尿がある
目標:留置カテーテル挿入中、凝血による閉塞を起こさない
OーP(観察)
1 血尿状態
2 VS
3 尿量
a 尿量:術後1~2時間ごと、翌朝4時間ごと
b 水分バランスチェック
c 尿閉時、尿意、腹部膨満、尿漏れの有無
4 検査データ:貧血の有無
5 牽引固定の状態
TーP(実施)
1 持続膀胱洗浄の管理
2 血尿状態によりミルキング施行
3 留置カテーテル閉鎖時は膀胱洗浄の介助を行う
EーP(教育)
1 努責を避けるように指導する
a 排便調節方法について指導する
b 安静の必要性について指導する:翌朝より座位可
2 飲水指導
3 牽引時は固定側の下肢を屈曲させないように指導する
#10 サントニー二静脈叢の損傷による術後出血を起こす恐れがある
目標:異常が早期に発見され、膀胱タンポナーデを起こさない
OーP(観察)
1 創部の状態
a ガーゼ汚染の有無
b ドレーンからの流出状態
c 血尿の程度
2 全身状態の観察
TーP(実施)
1 留置カテーテル閉鎖時は、カテーテルミルキングなどにて尿流出を促す
2 凝血による留置カテーテル閉鎖時は、医師に報告し膀胱洗浄を施行する
#11 留置カテーテル留置によるテネスムス症状がある
目標:症状が緩和される
OーP(観察)
1 尿流出状態のチェック
2 尿の性状、血尿の有無
3 カテーテル閉塞の有無
4 尿漏れの有無
5 自覚症状の有無:尿意、腹部膨満感の有無
6 創部痛の有無、程度
7 ガーゼ汚染の有無
TーP(実施)
1 指示にて鎮痛剤を使用する
#12 留置カテーテル留置による逆行性感染の可能性がある
目標:発熱、尿混濁がなく早期に留置カテーテルが抜去される
OーP(観察)
1 発熱の有無
2 尿混濁の有無
3 尿流出状態
4 飲水量
TーP(実施)
1 留置カテーテル挿入部のガーゼ交換を一日1回行う。尿漏れ時は適宜交換する
2 採尿時は排尿口をアルコール綿で消毒する
3 パックは膀胱部より高くしない
4 排液口が床につかないようにする
EーP(教育)
1飲水指導
#13 術中灌流液使用によるTUR反応出現の可能性がある
目標:術後1日目まで血圧低下や電解質のバランスが崩れない
OーP(観察)
1 VS:特に血圧
2 手術中の灌流液使用量
3 検査データ
a 手術中、術後の電解質
b 肝機能
TーP(実施)
1 指示された輸液は正確に行う
#14 カテーテル抜去後、尿道括約筋弛緩の為尿失禁が起こりやすい
目標:尿失禁に対処できる
OーP(観察)
1 尿量、尿漏れの有無:1回の尿漏れ量と回数
TーP(実施)
1 尿漏れが多いときは紙おむつを使用する
2 夜間は病室で尿器を使用する
3 不眠が続く場合は医師の指示にて睡眠剤を勧めてみる
EーP(教育)
1 一過性に尿失禁が起こる可能性があるが、心配のないことを説明する
2 尿意を感じたら早めに排尿することを勧める
3 飲水を制限しないように説明する1000~1500CCを目安に摂取する
#15 退院時指導
目標:患者は排尿障害、術後出血出現時異常と判断し外来受診ができる
EーP(教育)
1 退院後の日常生活についてパンフレットによる退院指導を行う
2 外来受診が必要となる場合について説明する
a 排尿障害増強時
b 血尿出現時
3 緊急外来手続きの方法について説明する
参考資料:標準看護計画
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