脊髄損傷患者の看護計画
#1脊髄ショック期の症状出現のおそれがある
目標:症状の徴候を早期に発見し、悪化を予防する
OーP(観察)
1 呼吸障害の有無(自発呼吸の有無、換気障害、痰の喀出障害の有無、呼吸器感染徴候)
2 循環状態(血圧低下、徐脈、ショック)
3 体温、発汗の異常の有無
4 消化器症状の有無と程度(麻痺性イレウス、胃・十二指腸潰瘍)
5 膀胱直腸障害の有無と程度(尿閉、尿路感染徴候、便失禁)
6 麻痺の部位と程度
7 皮膚知覚の異常の有無(触覚、圧覚、温度覚、痛覚)
8 合併損傷の有無と程度(頭部外傷、骨折、皮膚損傷など)
TーP(実施)
1 損傷部位を安静に保つ
2 呼吸状態の安定を確保する
a 呼吸不全を起こしている場合、人工呼吸器管理
b 頸部の安静を保持しながら、喀痰を促す援助(体位変換、咳嗽介助)
3 循環状態の安定を確保する
a ショックを起こしている場合、救命救急処置
b 低血圧発作(眩暈、気分不良、意識消失)の予防
c 深部静脈血栓症、肺塞栓症の予防
4 体温の調節
5 消化器の管理を行う
a 麻痺性イレウスの予防(医師の指示による便処置、腹部マッサージ)
b 胃・十二指腸潰瘍の予防
6 排尿・排便コントロールを行う
a 導尿、排尿訓練、尿路感染の予防
b 排便訓練(規則正しい食生活、植物繊維を含む食事、水分摂取など)
EーP(教育)
1 損傷部位の安静の必要性について説明する
2 症状発症に対する予防の必要性と方法について説明する
3 知覚・運動機能が部分的に残存している場合は、麻痺や痺れの増強時に報告してもらう
#2膀胱反射消失及び直腸反射消失・蠕動運動麻痺の為に、排泄機能障害がある(尿閉、便失禁、便秘)
目標:感染を起こさず、排尿コントロールができる
OーP(観察)
1 尿量、残尿量、尿の性状、水分摂取量、腹部膨満
2 バルンカテーテルの状態(尿の流出状態、カテーテルのねじれ・閉塞の有無、挿入部痛・不快感の有無)
3 尿路感染徴候の有無(混濁尿、浮遊物、発熱、尿検査結果の異常、CRP亢進)
4 泌尿器科診察結果(膀胱容量、膀胱内圧測定結果、排尿時膀胱尿道造影)
5 排便量、性状
6 便失禁、便秘
7 腹部の状態、腸蠕動音、悪心・嘔吐の有無
8 食事の形態、内容、水分摂取量
TーP(実施)
1 導尿(無菌的間欠的導尿法、留置カテーテル法)を行う
2 尿路感染を予防する
a 無菌的に導尿を行う。留置カテーテルは定期的に交換する
b 陰部の清潔保持
c 感染時、医師の指示によって膀胱洗浄
d 水分摂取を促す
3 医師の指示で便処置(薬物の使用、浣腸)を行う
4 規則的な食習慣、食事形態、食事内容を工夫する(食物繊維が多く含まれる食品)
5 腸蠕動運動を促す(腹部マッサージ、温罨法)
6 水分摂取を促す
EーP(教育)
1 定期的に膀胱を空にする必要性を説明する
2 尿路感染症予防の必要性と方法を説明する
3 水分摂取の必要性を説明する
#3身体機能の障害に対する精神的動揺がある
目標:不安やストレス表出、発散することが出来る
OーP(観察)
1 患者の言動、表情
2 病態・治療についてどのようにとらえ、理解しているか
3 障害をどのようにとらえているか
4 障害受容のプロセスとしての反応
5 うつ状態、死をほのめかす言動、怒り、攻撃行動など
6 家族や周囲の人々の反応
TーP(実施)
1 患者が不安やストレスを表出できるように関わる
2 患者が知りたいことについて正確に答えていく
3 脊髄損傷患者同士の交流の場を設けたり、紹介する
4 家族や周囲の人々が不安や心配を表出できるよう関わる
EーP(教育)
1 不安やストレス、心配を表出することの大切さを説明する
2 家族や周囲の人々に援助を求めることが出来るようにする
3 障害者としてよりよい生活を営むための生活手段を指導する
4 家族や周囲の人々が患者の反応に対して、どのようにかかわればよいかについて説明する
#4頭蓋直達牽引の為苦痛がある
目標:正しい肢位と体位が保たれた牽引療法を受けることが出来る
OーP(観察)
1 牽引の状態(牽引の方向、重錘の重さ、牽引力、ピンのゆるみ
2 頸部の肢位、体位(ずれやねじれの有無)
3 疼痛の有無と程度(ピン刺入部、頭部、頸部)頭皮の緊張感
4 麻痺の増強、知覚異常、しびれ
5 皮膚異常の有無と程度(後頭部、仙骨部、かがと部)
6 ピン刺入部の状態(発赤、腫脹、出血の有無)ガーゼ汚染の有無、発熱の有無、WBC値、CRP
7 循環障害の有無(血圧変動、抹消循環不全、浮腫など)
TーP(実施)
1 頭蓋直達牽引による整復固定を行う
a 牽引状態に異常があれば、直ちに医師に報告して調整
b 麻痺の憎悪や知覚異常を認めれば、直ちに医師に報告
2 頭蓋直達牽引療法による疼痛緩和を図る(鎮痛薬、肢位、体位の工夫など原因に応じた対策)
3 ピン刺入部からの感染を予防する
a 医師によるガーゼ交換の介助
b アルコール洗髪、ドライシャンプーの実施
4 損傷部の安静を保ちながら体位変換を行う
a 体位変換機能の付いたベッドの使用
5 良肢位の保持、関節可動域運動を実施する
EーP(教育)
1 頭頸部の安静の必要性と頭蓋直達牽引の方法について説明する
2 疼痛や頭皮の異常を感じたら、すぐに報告するよう説明する
参考資料:疾患別看護過程