体位ドレナージ方法について
体位ドレナージの目的
分泌物が貯留した肺区域を最も高い位置に置き、重力を利用して分泌物を中枢気道に移動させる。効果的な分泌物の排出の為には、咳嗽か気管内吸引が必要である
体位ドレナージの適応
① 末梢気道に分泌物が貯留し咳嗽や呼気圧迫法によっても十分に排出できない場合
② 挿管や気管切開患者において、気管内吸引のみでは分泌物が十分に除去できない場合
③ 無気肺、排膿瘍、気管支拡張症、嚢胞性肺線維症など
④ 分泌物の多い呼吸不全患者
看護技術の手順
- 使用物品:パルスオキシメータ、血圧計、安楽枕、体位保持用のマット、タオル、吸引チューブ、吸引ビン、吸引器、吸引用水、アルコール綿、デイスポーザブル手袋、テイシュペーパーなど
- 患者への説明:「身体の向きを変えて痰を出しやすくします」「少しづつ体の向きを変えながら、痰を太い気管に集めます。一方向につき10~20分程度行います」
実施前の準備
① 食後2時間以上経過していることを確認する
② 1日の排痰の時間と頻度を調べ、最も排痰の多い時間に実施すると、より効果的である
③ 聴診法、胸部X線、胸部CTなどによって分泌物の貯留部位を確認する
・ 聴診法:粗い湿性ラ音の聴取される部位を確認する
・ 胸部X線・胸部CT:無気肺や含気量の減少した区域を確認する
④ バイタルサイン、意識状態、呼吸状態、呼吸困難、疼痛の有無などを確認する
⑤ パルスオキシメータを装着し、酸素飽和度を確認する
⑥ 医師の指示に基づいて気管内加湿や気管支拡張薬・去痰薬の吸入を実施する
実施の手順
① 分泌物の貯留している肺区域に応じていくつかの体位を用い、各体位を10~20分程度づつ保持する
・ 背臥位:患者の安全安楽を考慮し看護師は2人以上で実施する。処置や看護ケアの際には背臥位になる頻度が多くなるので、夜間帯はこの体位をとらない方法もある
・ 後傾側臥位:側臥位より45度後方に傾けた肢位から体位変換すると実施しやすい
・ 側臥位:側臥位より45度後方に傾けた肢位から体位変換すると実施しやすい
・ 前傾側臥位:側臥位より45度後方に傾けた肢位から体位変換すると実施しやすい。
後傾側臥位、側臥位、前傾側臥位、下肢が重ならないように上側の下肢を前にずらし、枕を挟むなどして下側に加重しないように注意する
ベッドと体幹の角度を後傾側臥位、前傾側臥位では40~60度、側臥位では60~90度に保つことが重要である。したがって体幹を十分に支えられる硬さのマットを選ぶ必要がある
しかしこれは人工呼吸管理中のものであるため、すべての患者に最適ではない。腹臥位は体位変換も難しく患者の苦痛を伴うこともあるが、この場合は前傾側臥位を実施すれば同様の効果が得られる
顔をうつむける場合はドーナッツ状の枕を使用し、鼻や口をふさがないように注意する。腹臥位は人工呼吸器装着時には上方の背側横隔膜の動きが改善し、移動距離が背臥位に比べて大きくなるとの報告があり、有効性が示されている
・ 腹臥位:側臥位より45度後方に傾けた肢位から体位変換すると実施しやすい。
・ もっとも簡単な体位:分泌物の貯留部位が特定できない、ほかの体位をとるのが困難などの場合は、患側を上に下40~60度の側臥位にする
② 体位を保持している間は、腹式呼吸を促す
③ 必要に応じて呼吸圧迫法を併用する
呼吸圧迫法:排痰体位をとり排痰を促す部位に手を置き、呼気とともに徐々に圧迫を加える。呼気終末時には最大呼気位まで絞り出すように圧迫を加える。呼気は口すぼめ呼吸を行う。吸気時には抵抗を加えない。
④ 有効な咳嗽を促し排痰を確認する。自力で喀出できない場合は吸引を行う。
ハフィングの仕方:始める前に腹式呼吸を行う。その後ゆっくり深く息を吸い込んだ後、2秒ほど息を止めて最大呼気からハーと強制呼出を行う
実施後の援助
① 患者の体位を整える
② バイタルサイン、酸素飽和度、呼吸状態、呼吸困難、咳嗽の有無などを確認する
③ 聴診法により、分泌物の貯留がないことを確認する
④ パルスオキシメータを外す(連続測定が必要な場合は装着しておく)
⑤ 痰の量、性状を確認する
参考資料:看護技術ベーシックス
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