車いす移送・移動の注意点(移送・移動の援助方法)
移動・移送の援助の目的
日常生活での移動、運動、レクレーション・気分転換のための移動、あるいは治療・検査や転室・転科や救急処置時、災害発生時の必要上の移送を安全に行う
移動・移送の援助の適応
① 意識障害や運動機能障害があり、一人では動けない患者
② エネルギーの消耗を布瀬具必要のある患者
③ 治療やけんさなどの鵜を制限されている患者など
看護技術の手順
移動・移送の準備
① 意識レベル(覚醒状態、理解力、注意力)高次機能障害(記憶力、記銘力、認知状態、失認、失行)
② 運動まひの部位・状態(体幹上肢下肢痙性か弛緩性か)関節可動域に異常がある(体幹上肢下肢、拘縮や硬直の有無)
③ 筋力低下の程度(上下肢や頚部、座位や立位のバランス)
④ 感覚障害(表在感覚:触覚、圧覚、痛覚、深部感覚の有無)
⑤ 身体状態(血圧の変化、疼痛など)
⑥ 補助具の必要性、必要時は使用感の評価
⑦ 移動動作時の身体的、精神的苦痛
歩行介助
① 事前に立位が可能であるかを確認する
・ 患者に下肢を動かしてもらう
・ 重力に逆らった動きができることを確認する
② 患者と看護者が歩行する環境を確認する
・ 予定している歩行ルートは2,3人が十分に通れるスペースが必要
③ 全身状態を観察する
・ 気分不快や疼痛の有無、バイタルサインの測定
④ 歩行の目的を患者に伝える「足の筋肉が弱っているので歩く練習をしましょう」
⑤ 創部にドレーンやチューブが挿入されている場合は、挿入部位を確認して保護固定を行う。輸液ラインやチューブ、カテーテルの接続は確実かどうかを確認する
⑥ 歩行するのにふさわしい履物、服装をしているかを確認し着衣を整える
⑦ 看護者は、患者の身体に触れるか触れないかの距離で斜め後方に立つ
⑧ 歩行中は患者が歩くことに集中できるように配慮する
⑨ 歩行終了後はねぎらいの言葉をかけ休息をとるように促す
・ ゆっくりとした深い呼吸を促し、全身の力を抜いてリラックスするように声をかける。患者の自覚症状の訴えは丁寧に聞く
・ バイタルサインの変動がないかを確認する
歩行中に患者を座らせる方法
① 患者を支えている手を放す
② 患者の背後に回る
③ 看護者は両手を広げて一歩後退する
④ 患者が床に滑り込む動きに合わせて両腋窩を支える
⑤ 患者を床の上に座り込んだ姿勢に保つ
転倒した患者の起き上がり(自立)
① 車椅子または椅子を用意する
② 患者は片手を突き、その手で上半身を十分に支えて横座りになる
③ 少しづつ腰を伸ばして膝立位になる。不安定な場合は両手をついて四つん這いになり④の動作に移る
④ 車いすやいすの座面に手を置き、片膝を立てる。腕の力で身体を持ち上げるようにしながら座面に座る
片麻痺患者の起き上がりの介助(腰ベルトを装着時)
① 車椅子、または椅子を用意する
② 患者を側臥位からざいにする
③ 立ち上がり方の見本を看護者が行い、患者にイメージをもって行いやすい。また各動作においては一つ一つ丁寧に説明しながら誘導していく
④ 看護者は患者の患測に片膝を立てて座る
⑤ 患者の健側のひざを屈曲し、患側下肢の下に入れておく
⑥ 看護者は患者の腰ベルトを片手で保持し、患側の下肢を看護者のひざと手で軽く支え、腰を持ちあげるように介助する
⑦ 患者の健側の手を健側のひざの横につかせ、上半身を前にかがめて健側の手に体重をある程度のせてもらい、臀部を持ち上げるように促す。この時、看護者は膝俺を防ぐため、膝を前から押さえて支える
⑧ 患者は腰をもう少し上げ、前かがみになって健側の足をずらしつま先を立てる。これが立ち上がりの準備になる
⑨ 患者の健側の手を床から椅子に移動する。次に座面の端まで手をずらし、手に重心をかけて体幹を少し回旋する
⑩ 患者はつま先に力を入れて立ち上がりながら腰を椅子へ乗せる。動作を辞めずそのまま健側を軸に回線しながら椅子に腰を掛ける。看護者は患者の腰がうまく改選するように誘導する
杖を使った歩行
① 患者の障害の部位、程度を把握する
② 杖の長さは患者にあっているか、杖に先端にあるすべり止めや握り手はふいっとしているかを確認する
③ 歩行開始前に立位の安定を確認する。不安定な場合は杖を突く位置を検討する
④ 服装、環境を整える
⑤ 歩行動作を実施する
※方向転換
・ 患肢を杖の方に一歩だし、健肢に体重をかけて、円を覚容量でゆっくりと半円を描き方向を変える
※階段
・ 杖を一段上に上げる
・ 健肢を一段上に上げ、杖と健肢に体重をかけながら膝関節を進展し一段上を上る
・ 患肢を上げて健肢をにそろえる
・ 下りる場合は、健肢に体重を残して患肢からおりる
歩行器
① 歩行器の高さを調節する
② できる限り背筋を伸ばし、前方を確認しながら歩くように促す
③ 歩行経路に障害物がある場合は事前に移動しておくか歩行経路を変更する
④ 歩行器の操作に慣れるまでは歩行につきそう
車椅子への移乗と移送
① 患者の状態にあった車椅子を選ぶ
② 車椅子へ移乗しやすいよう、ベッドサイドに十分なスペースを確保する
③ 患者に車椅子へ移乗する目的を告げ、移乗の手順を説明しておく。事前に説明することで患者の協力を得ることができる
※全介助の場合
④ 車椅子患者の斜め前方、約30~45度の位置に置きブレーキをかける
⑤ 車椅子のフットレストをあげる。ひじ掛けが可動性ならばあげておく
⑥ ベッドの高さを患者の足が床につく程度に調節し、患者はたんになって足を床につける
⑦ 看護者は腰を落とし、患者の足の間に自分の足を入れて患者の腰をしっかりと支える。そして患者の膝折れを防ぐために車椅子側の自分の足でブロックする
⑧ 患者の両腕を看護者の肩、あるいは腰に回してもらう。看護者はさらに腰を落としながら患者に前傾姿勢になってもらうよう声をかける。そのまま患者と一緒に立ち上がる。患者が両足に体重をかけて立位をとったら、そのまま体を回転させ車いすに座らせる。
⑨ 患者が車椅子に座ったら、看護者は車椅子の後方に回る。患者にやや前傾姿勢になるように促し、ひじ掛けかシートを押しながら腰を浮かせてもらう。患者が腰を浮かせたタイミングで看護者は腰を引き、深く座らせる
⑩ 移動の準備をする
・ フットレスを降ろし患者の足を乗せる
・ 患者の姿勢保持が十分でない場合は、倒れる側にまくらなどを入れ体位を整える
・ 輸液ラインは車いす専用の点滴スタンドを利用する
・ 留置カテーテルなどは移送中に外れたり落下したりしないように準備する
⑪ 患者の姿勢が安定していることを確認し、ブレーキを外して車椅子を動かす
⑫ 走行中は患者の手、衣服、ひじ掛け、チューブ類などが車輪に巻き込まれないように常に注意する
ストレッチャー移動
① ストレッチャー移動の準備
② 移動の目的を説明し了解を得る
③ ベッドをストレッチャーの高さに合わせる
④ 患者の体の下に、シーツまたはスライドしやすい素材のマットやボード敷く。頭部までしっかりと乗せる
⑤ ストレッチャーをベッドサイドにつけストッパーをかける
⑥ 患者の両サイドに看護者が2人づつ配置する
⑦ 患者に両腕を胸のところで組むように説明する
⑧ 看護者は、スライド用シーツを患者の体幹に近いところで持つ。4人で息を合わせてシーツをやや持ち上げながら引っ張りストレッチャーに移動する
⑨ 患者の体制を整える
⑩ ストッパーを外して移送する。移送時は患者の足元から進むと患者の視野が進行方向を向くため安心感が得られる
移送・移動援助後の実施後
① 移動動作を行った後は患者の訴え、表情を確認する
② 身体的苦痛の有無を確認する
③ 廃用性症候群の有無を確認する
④ 移動時の安定性や危険に対する認知力を評価し、行った援助方法を検討する
⑤ 歩行状態はバランス、距離、速度、危険の認知力などを評価し、援助方法が適切であったか検討する
⑥ 移乗動作に対する意欲や障害需要の状況を把握する
⑦ 移乗動作の酷評が達成されたか、目標設定は適切であったか、方法は妥当であったかを評価する
参考資料:看護技術ベーシックス
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