点滴内静脈注射の看護手順について(看護師点滴方法)
輸液の目的
水分や電解質、栄養を経静脈的に持続的にかつ大量に注入する
輸液の適応
① 脱水や外傷などで喪失した水・電解質・栄養素の補給
② 浸透圧・膠質浸透圧などの恒常性の維持
③ ショックなどにおける循環血漿量の維持
④ 検査・治療に向けた静脈路の確保
⑤ 経口摂取で不足する水分や栄養素の補給
点滴静脈内注射法の看護技術手順
点滴静脈内注射法の部位
静脈内注射の刺入部位に準じる。ただ、点滴静脈内注射法は静脈内注射と異なって所要時間が最低でも30分かかり、24時間持続で行う場合も多い。従って、下記のアセスメントを行ったうえで注射部位を決める必要がある
アセスメント(注射刺入部位や物品の選択)
1患者の歩行状態など日常生活の状況
① 利き手側の穿刺は避ける
② トイレ歩行をしている患者は、下肢や肘窩、手根部への穿刺は避ける
③ 麻痺がある側の穿刺は避ける
2長期留置の可能性
① 30分以上の投与、もしくは留置針を用いる場合は自然抜去しないように固定しやすい平坦な部位を選び、できるだけまっすぐな走行の血管に穿刺する
② 手術や検査など侵襲が大きく長時間にわたる場合は留置針を用いる
③ 血管穿刺が苦にならない患者は、翼状針で毎回穿刺した方うが感染のリスクが低減させられる。毎回の穿刺が苦痛で恐怖を感じる患者には留置針を用いた血管確保を検討する
3血管や皮膚の状態
① 老人など血管の蛇行が著しい場合は、翼状針や細い留置針が穿刺しやすい
② かぶれやすそうな皮膚であったり、患者からも事前の申し入れがあれば、刺激の少ない絆創膏を選択する
③ ②以外は原則として粘着力の強い絆創膏でしっかりと固定する。留置針の場合は刺入部の観察がしやすい透明フイルムドレッシング材も併用する
4免疫機能などの全身状態
① 下肢と比較すると上肢の方が静脈炎に起因した感染リスクが低い
② 手首や上腕と比較すると、手掌の方が静脈炎に起因した感染のリスクが低い
③ 留置針の場合は直径が細いほど菌血症のリスクが低減する
④ 多毛な部位は、感染予防のために穿刺を避ける
5投与する薬剤の性状や輸液の目的
① 手術や検査などで緊急に大量輸液や輸血を行う可能性がある場合は、太めの留置針を用いる
② 高張液やPHが非生理的な輸液剤は血栓性静脈炎を起こしやすいためできるだけ太い静脈を穿刺する
③ 輸液量が少なく輸液速度を遵守する必要がある場合は、輸液ポンプやシリンジポンプを利用する
6安静保持に関する協力
① 血管穿刺が苦にならない患者は、翼状針で毎回穿刺した方うが感染のリスクが低減させられる。毎回の穿刺が苦痛で恐怖を感じる患者には留置針を用いた血管確保を検討する
② 小児や老人など体動が激しく実際の行動面で協力を得ることが難しい場合は、シーネなどの固定具を用いる
③ シーネ固定だけでは穿刺部位の安全を保てず、常時付き添うことも難しい場合は抑制を検討する
④ 小児や老人など穿刺について協力を得ることが難しい場合は看護者一人ではなく複数で処置に当たる
必要物品
1ナースステーションで準備する物品
処方箋、輸液ボトル、薬剤、薬剤吸い上げ用の注射器注射針、翼状針か留置針、輸液セット、延長チューブ、三方活栓(必要時)、手袋、アルコール綿
2輸液ボトルと輸液セットの接続
① 輸液ルートのクレンメを閉じる
② 輸液ボトルのゴム栓をアルコール綿で消毒する
③ ビン針のキャップをとり、ゴム栓のくぼみにビン針をさす
④ 輸液ボトルを点滴スタンドにつりさげる
⑤ 点滴筒に薬液を半分程度満たす。
⑥ 刺し手と反対側の手でタコ管を斜め上方に把持しながら利き手でクレンメを少しだけ開きルート内の薬液を満たしていく
⑦ 薬液が針先から流れ出す手前でクレンメを閉じる
⑧ 翼状針を用いる場合は輸液ルートの針を取り外して接続し⑦の操作を繰り返す
3ベッドサイドへ持参する物品
トレー、処方箋、輸液具一式、駆血帯、膿盆、廃棄物容器、固定用物品、ハサミ、肘枕、点滴スタンド、輸液ポンプ
穿刺の実際
1穿刺前
① 患者の説明する
・ 輸液の目的や内容
・ 実施予定時刻と所要時間
・ 可能な行動、穿刺針が血管からずれてしまう可能性のある動作はどのようなものかなど
② 排尿を済ませておいてもらう
③ 全身状態の観察
2穿刺直前
① 訪室前に手洗いを済ませる
② ベッドサイドに物品を運ぶ
③ 患者に指名を名乗ってもらい、指示箋との確認を済ませる
④ 袖をまくり上げるなど、穿刺予定部位の環境を整える
⑤ 物品を使いやすい位置に配置する
・ 点滴スタンドに輸液ボトルをつるす
・ アルコール綿や駆血帯などの入ったトレーを、患者に断ってベッドの上の取りやすいところに置かせてもらう
・ 針の先端まで薬液が満ちていて空気の混入がないことを確かめる
・ 固定用の絆創膏をすぐ張れる状態にする
・ 手袋を装着する
・ 穿刺予定部位の皮膚下に処置用シーツをしく
・ 穿刺予定部位より5~10センチ中枢側に駆血帯を巻く。患者には親指を中に入れて握り拳を作ってもらうように依頼する
・ 駆血帯をかけた状態で、血管の走行や太さ、硬さ、深さを視診と触診で確認する
・ できるだけ体の両側を確認したうえで、穿刺部位を決定する
・ 駆血帯を一度緩めておく
参考資料:看護技術ベーシックス
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