高齢者の栄養療法の注意点には、低栄養、脱水、誤嚥などが挙げられます。
加齢によって消化管機能や嚥下機能が低下し、低栄養をきたしやすくなります。
高齢者の栄養療法の注意点は?
また総体液量が減少するという生理的な変化と口渇感の少なさから、脱水に陥りやすくなります。
さらに嚥下咀嚼機能の低下による誤嚥にも注意が必要です。
高齢者は一度低栄養に陥ると、疾患の治癒が遅れてしまうだけでなく、たちまち様々な合併症を引き起こしてしまいます。
特に認知障害のある患者さんは食べ方や内容・量に注意が必要です。
高齢者の栄養学的特徴
①加齢に伴う唾液分泌の低下や咀嚼障害に伴う食欲減退があります。
②加齢に伴う摂食・嚥下機能の低下があります。
③身体活動が低下し、基礎代謝量が低下します。
④総細胞数の減少や細胞内液の減少によって、総体液量が減少します。細胞内液は電解質や酸塩基平衡の緩衝作用を持っている為、電解質のバランスも崩れやすくなります。
⑤免疫能が低下します。免疫能には栄養状態やビタミン、微量元素などが関与するので免疫能低下は低栄養によって助長されます。
⑥消化管機能の低下によって、ビタミンやミネラルの吸収が低下します。
高齢者のエネルギー所要量
①加齢に伴って除脂肪体重が減少する為、安静時エネルギー代謝(消費量)が減少します。また体たんぱくの合成能の低下や筋肉量の減少があり、筋肉における有酸素エネルギー代謝量も減少します。
②その為加齢とともにエネルギー所要量は少なくなります。
高齢者の栄養管理
①食物
高齢者は唾液分泌の低下や、義歯の不適合、歯肉炎、歯槽膿漏、消化機能の低下などによって、食欲が減退したり食べられるものに限りがあったりします。
それによって食事の摂取量が減少しやすくなり、栄養状態の低下につながります。
口腔ケアを行い食事に対する意欲が維持できるようにします。
また摂取内容と量を評価し、嗜好を考慮しながら工夫してビタミンやミネラルが補給できるようにします。
②水分
高齢者は口渇中枢機能の低下の為に、脱水時の口渇感が少なく水分摂取量が少なくなります。適切な排泄パターンと水分状態が、維持できるように十分な食物繊維と水分を補給します。
特に夏季は皮膚や自覚症状から脱水について評価し十分な水分補給を行います。
③食物摂取量
誤嚥は呼吸器合併症の原因になるため、誤嚥予防の為の援助が必要です。
嚥下障害の兆候を見逃さないようにし、食物の形態や食べ方などの工夫を行います。
④認知症外への援助
高齢者では、認知障害が接触行動の大きな障害になります。
経腸栄養・静脈栄養に使用するチューブ・カテーテル類の自己抜去予防が必要です。
拒食に対する援助は難しいのですが、障害の程度に応じた環境改善のアプローチが大切です。
⑤心理的援助
身体の老化の自覚に伴って、自らの身体的変化だけでなく存在さえも否定的に思うようになると、食欲低下や拒食行動など、摂食に影響が現れます。
食事が楽しいと思える環境をつくることが大切です。
病棟でむせやすい患者さんに提供しているものです。
参考資料:全科に必要な栄養管理Q&A
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