糖尿病合併症の糖尿病神経障害について

糖尿病合併症の糖尿病神経障害

・多発神経障害:検査を通して患者自身が身体に関心を持てるように関わる。ケアは無症状期、症状出現期、感覚低下、消失期と患者の段階に合わせた身体的・心理的・社会的なフォローが必要である。

・自律神経障害:初期段階では自覚症状がないことが多く、また、自覚症状は多彩であるため、患者自身が生活の工夫を確立するには時間を要することを理解する。

・単神経障害:患者家族の不安の軽減につてめると共に、顔面神経麻痺、外眼筋麻痺、腓骨神経麻痺の症状を観察し、環境整備を含めたケアを行う。

多発神経障害

多発神経障害検査のケアにおけるメリットと留意点。

・多発神経障害の初期は自覚症状が乏しく、終盤は自覚症状が消失するので多発性神経障害の有無を自覚症状で判断することは難しい。

・多発神経障害の診断基準は確立されていないが、簡易検査は看護師のできるものも多い。

・看護師ができる多発神経障害の簡易検査は、アキレスけん反射、振動覚検査、ピンプリック、モノフィラメント検査、温度覚検査などである。

1簡易検査を看護師が行うメリット。

①身体面だけでなく、心理面・社会面のアセスメントが可能。

・検査を行いながら患者と話し、患者の思いや生活状況を知ることが可能である。これにより身体面、心理面、社会面のアセスメントが同時にできる。

・患者が自分の身体に関心を持てるように関わることが大切である。

②検査を行いながらケアや指導も可能。

・検査時看護師が多発神経障害について分かりやすく伝えるとさらに患者の学習が進むことがある。

・看護師の行う検査で、過去の足に対するトラブルや現在の心配事などを語ってくれることがある。

・患者が語ってくれたことに沿って、教育や指導をすることが出来る。

・温度覚検査により、温度感覚が低下している患者には、低温やけどの回避方法を共に考え、足を守るケアに結び付ける。

・手と足の温度の感じ方の違いについて実感してもらい、手で確認することの大切さを学ぶ。

・アキレスけん反射や振動感覚が低下している患者は転倒しやすい。歩行や運動時の注意点、靴の選び方を共に考える機会にもなる。

2留意点

①簡易検査の手技を確実に行う。

・患者に検査を行う前に、スタッフ同士で練習して手技を身につけてから行うようにする。

②診断は医師が行う。

・再検さにより得た所見を医師に報告し、所見を医療スタッフで共有する。患者への診断結果の説明は医師から行うようにする。

③無理強いしない。

・球に足を見せてもらいたいというと躊躇する患者もいる。目的や必要性を説明し患者の同意を得てから行う。

アセスメントとケアのポイント。

①身体的なアセスメントとケア。

・患者によってはしびれと感覚異常などの症状と糖尿病を関連つけて考えられない場合もある。神経障害についての患者の知識を確認する。

・患者に高血糖がある期間続いていることを知らせ、症状改善の為には血糖コントロールが大切であることを伝える。生活の中での注意点を説明していく事が必要である。

・痛みがひどく生活に支障をきたす場合には、鎮痛薬や安定薬が処方されることがある。薬物についての補足説明や確実に服薬できるようにするための工夫や援助が必要である。

また医師に確認しながら、温める、マッサージするなどの症状が軽減できるケアを患者と一緒に考えていくことも大切である。

・下肢の神経障害は糖尿病足病変のリスクになることを伝え、足の観察方法や生活の中での注意点を伝えていく必要がある。

②心理的・社会的なアセスメントとケア。

・糖尿病や合併症の出現により患者は不安になり気分が落ち込むことがある。不眠でイライラすることもある。

・看護師は患者の話を聴き患者と思いを共有しながら信頼関係を築き患者が安心できる環境を整える。

・患者が自分の症状をどのようにとらえているか話してもらう。療養方法を一緒に考えていく姿勢が大事である。

・しびれや痛み感覚異常がひどくなると生活や仕事に影響が出てくる。運動療法や仕事内容の変更を考える必要がある。

自律神経障害

身体面・社会面・心理面から見た自律神経障害のアセスメントに必要な情報。

①身体面の情報

・シェロングテスト

・呼吸心拍変動係数

・服用している薬

・糖尿病の合併症の程度

・糖尿病の分類

②社会面・心理面の情報。

・年齢

・職業

・同居人の有無

・うつ状態

・困っていること

 

自律神経障害のケアのポイント

①低血糖時の交感神経の反射性機能亢進の欠如。

ケアの根拠(重症低血糖を起こすと患者は不安や恐れを持ちやすい)

心理面のケア

・低血圧の体験に耳を傾ける

・意識障害で搬送された場合は患者の不安を汲み取る

・重症低血糖は予防可能であると伝える

ケアの根拠(重症低血糖は生命の危険がある)

重篤化しないための対応

・重症低血糖を起こした場合の備えをする

・中枢神経による低血糖症状もあることを伝える

・支援者にグルカゴン注射手技を教える

ケアの根拠(無自覚性低血糖で交通事故を起こす危険がある)

安全運転の為の対策

・低血糖になりやすい時間帯を運転を避ける

・糖分を社内のすぐに取り出せる所にしまって置く

・血糖値40以下になる低血糖時には、血糖値が上昇しても精神機能や運動機能は直ちに回復しないので1時間ほど経過してから運転する。

②血管運動神経機能低下。

ケアの根拠(血圧のコントロールがうまく行われているかどうかを見守る必要がある)

家族血圧測定の有効活用

・血圧測定の体位が臥位か座位か確認する

・降圧薬が投与された場合は臥位での高血圧に要注意なので、外での血圧測定も提案する。

・測定のタイミングを確認する(早朝、眠前、随時)

・指先測定ではなく上腕測定が望ましい。

③心迷走・交感神経機能低下。

ケアの根拠(胸痛を伴わないことがあって、発見が遅れることがあるし重症化しやすい)

重篤化しない為の指導

・何時もと違う倦怠感や肩こり背部痛、息苦しさの症状が出たら受診するように指導する。

・虚血性心疾患の検査を受けることの必要性を伝える。

④消化管運動機能低下。

ケアの根拠(胃から十二指腸への食物の移動が遅延する為不快な症状が出現する)

     (緩下剤や止痢剤は効果があるが乱用を避ける)

対処方法

・食事の少量頻回摂取、脂肪制限、繊維の摂取制限。

緩下剤使用時の留意点

・一般的な便秘対策も忘れてはならない

・緩下薬の特徴を知り組み合わせて使う

・刺激下剤のみで排便コントロールをすると大腸の機能低下をきたしやすい

⑤膀胱機能低下。

ケアの根拠(尿の流出が悪いと尿路感染を起こしやすい)

残尿が少なく尿路感染を認めない場合の対処法

・尿意があれば早めに排尿、時間排尿、手圧排尿を指導する。

・下腹部膨満が見られたら受診する。

⑥勃起障害。

ケアの根拠(男性にとっては心理的にも大きな影響を与える)

勃起障害に対するケア

・勃起障害を相談しやすい環境を整える

・自己管理に関するストレス、合併症に対するストレスがないか確認する

・薬物療法が適用された場合は安全に効果的に使用できるように指導する。

単神経障害

アセスメントとケアのポイント。

・単神経障害は多発性神経障害に比べて頻度は少ないが、急に発症することが多い。運動障害として現れるので、患者家族は脳の病気ではないかと不安になる。

・初発症状でけでは鑑別が難しいことも多く、また施設によっては緊急でMRI検査が行えない事があるかもしれない。脳血管疾患を疑わせる他の所見が出現した場合は、緊急外来を受診する必要がある。

・単神経障害は一時的に強い症状が現れるが、糖尿病性の場合には予後が良好であることを説明し、不安の軽減につとめる。

・治療にはステロイド薬を投与することもあるので血糖値が上昇し一時的にインスリン注射をしなければいけないこともある。例えば朝にステロイドが投与されると日中に血糖が上昇する為日中の血糖上昇を抑える為にインスリンの種類を考慮しなければならない。

・その後ステロイドを減量していく際には、減量の度合いに応じて高血糖も改善していくので、そのタイミングがずれると低血糖になることもあるので注意が必要である。

・単神経障害の場合、糖尿病の専門でない医師に診察を受けることも多い。糖尿病手帳などを持っていると治療内容を伝えやすく便利である。

・生活面では福祉などの症状に伴って日常生活に不自由をきたすそれぞれの症状に応じた対応が必要になる。

症状観察とアセスメント・ケアのポイント。

①顔面神経麻痺の観察ポイント:

・兎眼

・口角下垂

・味覚障害

・構音障害

②顔面神経麻痺のアセスメントケアのポイント:

・前駆症状として、麻痺が現れる側の耳のうしろや肩に痛みを感じることがあるが、何の症状もなく運動麻痺がおこることがある。

・症状に伴い閉眼できず眼球が乾燥したり充血することがあるので、眼帯や目薬の投与を行う。

・口角下垂による流涎、食べ物がこぼれやすくなる。特に水分摂取が困難になるので誤嚥などにも注意が必要である。

・構音障害では、息が漏れる為パ行やマ行がうまく発音できないことがある。

・味覚障害があると、食事の味が濃くなりがちになる。

③外眼筋麻痺の観察ポイント:

・眼球運動障害

・眼瞼下垂

・複視

④外眼筋麻痺のアセスメントケアのポイント:

・物が2重に見えるので、事故防止の為に環境整備を行う。

・転倒やベッドからの転落予防の為に患者に注意を促す。

⑤腓骨神経麻痺の観察ポイント:

・足趾の背屈障害

・垂れ足

⑥腓骨神経麻痺のアセスメントケアのポイント:

・自覚症状として、つまづきやすくなったりスリッパが脱げやすくなる。

・環境整備を行い、つまづきや転倒予防するとともに患者に説明し注意を促す。

   参考資料:糖尿病合併症ケアガイド