糖尿病患者の看護過程アセスメント

アセスメントの視点と根拠・起こりうる看護問題

1全身状態の観察

糖尿病の状態を知ることは、合併症の早期発見、早期治療に役立つ、また今後の合併症の発症、進展の予防に向けての具体的なアプローチに役立つ

・発症時には自覚症状に乏しく、治療を要する状態であっての受診に至らない場合が多い。発見時にはすでに合併症を併発している場合がある。そのため、自覚他覚症状と検査所見など、全身の入念な観察と迅速な対応が必要となる

・身長、体重、腹囲の測定から個々の状態にあった食事療法のための支持エネルギーの情報を得る。また、20歳時の体重、過去の体重の経過の聴収から、発症後の経過と今後の目標体重の情報を得ることができる

・体重減少がみられる場合は、糖尿病の悪化の可能性が考えられるため、食事制限によるものが詳しく聴取する

(糖尿病昏睡)

・糖尿病患者に起こりうる意識障害として、糖尿病ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧昏睡、低血糖昏睡、脳血管障害、乳酸アシドーシスなどがある。糖尿病ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧昏睡はインスリン作用不足が高度になり生じる。いずれの場合も早期に迅速な対応を要する

起こりうる看護問題:低血糖による意識障害により転倒、外傷の危険がある/浸透圧利尿により循環血液量が減少している

(感染症)

・糖尿病はインスリン不足によるブドウ糖代謝障害、高血糖による脱水、栄養障害、神経障害、最小血管障害、動脈硬化症により易感染状態を引き起こす

・感染によりインスリン抵抗性が増大し、糖尿病のコントロールがさらに悪化する

起こりうる看護問題:糖尿病のコントロール不良により生体防御機能が低下している

(低血糖)

・ブドウ糖は脳の唯一の栄養源であるため、血液中のブドウ糖濃度低下は生命の危機となる。このような事態を防ぐためにあらゆる症状が生じるため、身体症状の変化に敏感であること、早期の適切な対応を要する

・低血糖を繰り返すことにより、血糖低下に対する自律神経反応が低下し、低血糖症状のないまま突然意識消失となる場合がある

起こりうる看護問題:低血糖による意識障害により、転倒、外相の危険がある/不規則な食生活でのインスリン療法の実施により、低血糖を引き起こす可能性を恐れている

(血管性の合併症)

・長期間持続する高血糖・脂質異常症を含む代謝障害と血管障害によって起こる。最小血管合併症は糖尿病特有の病態で、糖尿病網膜症、糖尿病人証、糖尿病神経障害の三大合併症がある

・自律神経障害による消化管の運動障害は下痢と便秘を引き起こす

・便秘に伴う排便時の努責は、血圧変動を引き起こし脳血管障害や糖尿病網膜症に影響を及ぼす

・合併症の発症・神鋼は患者の機能的予後、生命予後に深く関与することから適切かつ迅速な対応が重要である

起こりうる看護問題:合併症の発症・進展の可能性に対する不安を抱えている/自律神経障害に伴う消化管の運動障害があり、食物繊維、水分摂取量が不足し便秘を起こしている

(糖尿病足病変)

・自律神経障害による発汗の減少により皮膚が乾燥し亀裂が生じやすく皮膚感染を起こしやすい

・足に創ができていてもフットケアへの知識不足、知覚神経障害などのため患者が足病変を軽視して受診が遅れる場合がある

・生体防御機能の低下、動脈硬化による血管障害などにより創傷治癒力が低下し、長期の治療を要する場合がある

起こりうる看護問題:誤った解釈から糖尿病を軽視している/糖尿病のコントロール不良により生体防御機能が低下している

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2現病歴の把握

糖尿病の状態を患者から聞き出すことで、現時点での糖尿病に対する認識を明確にし、合併症の予防に向けた個別の自己管理行動を獲得していく援助に役立つ

・2型糖尿病では発症時には自覚症状が乏しいため、症状出現による医療機関の受診よりも検診などで指摘される場合が多い。医療機関受診のきっかけ、動悸を含めてこれまでの経緯を知ることにより、健康への気遣い行動などの傾向を知ることができる

・自覚症状、障害のない発症時には糖尿病の診断を否認する反応が見られる。糖尿病と向き合うことを避け自己管理につながらない状況を回避するため、現時点での患者の糖尿病への認識、これまでの問題への対処行動へ着目し情報を得ることは重要である

起こりうる看護問題:誤った解釈から糖尿病を軽視している/糖尿病と診断されたことを認められず現実的な自己管理に取り組めない

3糖尿病に関する知識、自己管理への取り組みの把握

患者家族からこれまでの糖尿病に関する知識、自己管理への取り組みの現状を聴取することで、生活背景を踏まえて実際的な生活習慣改善点を見出し、自己管理行動目標の設定への支援を可能にする

・食事療法、運動療法の意義について尋ねることで糖尿病についての知識を確認することができる

・食事摂取量、内容、回数、バランス、身体活動度、運動の種類、頻度飲酒・喫煙習慣の有無、糖尿病に関連した知識の情報源、教育を受けた経験を把握することで今後の教育的援助に役立てる

・食物繊維は消化管での糖吸収を緩徐に試食後の急激な血糖上昇、インスリンの過分泌を抑制する

・過去の減量の失敗体験、治療に適さない職場環境、家族の協力が得られないなどは自己管理行動に影響を与える。患者家族が積極的に糖尿病と向き合えるように援助する

起こりうる看護問題:誤った解釈から糖尿病を軽視している/食事療法、運動療法についての知識不足から過剰に栄養を摂取している/減量の失敗体験、治療に適さない環境、家族の協力が得られないなどの状況にある

4治療による反応の観察

入院中に実施される食事療法、運動療法、薬物療法に対する患者・家族の反応を観察する。また、薬物療法が新たに加わった場合は、患者のQOLを考慮しライフスタイルに合わせた自己管理行動の再検討を要する

・入院中に出される食事は1日の摂取エネルギーを日常生活に支障をきたさない範囲で必要最小限にしたものである。それらを実際に摂取することで、これまでの食事と比較しての満腹感、規則的な食事摂取による空腹感を体感でき、今後の自己管理行動の改善点を自ら見出す助けとなる

・身体状態によっては運動の実施は、病状を悪化させる可能性があるので、運動療法開始には注意する

・適切な運動療法に実施から糖尿病のコントロールはもちろん、活動と休息の健康的な生活リズムが生まれることが期待される

・薬物療法の実施により血糖値が下がり糖尿病が治ったものと考えたり食事療法運動療法をおろそかにしたりといった問題が起こる可能性がある。そのため薬物使用による血糖改善ばかりではなく、食事療法や運動療法を基本とした治療の効果に着目するよう促す

・自覚症状のない2型糖尿病の場合はインスリン注射の受け入れが難しく指導に困難を要する場合がある

・低血糖は薬物治療中の患者に起こることが多く薬の過剰投与や摂取量不足などがその原因となる。低血糖を誘発する事態や対処法への知識の不足は過剰な低血糖への不安を引き起こす

起こりうる看護問題:糖尿病治療の複雑さから今後の自己管理行動の実施に戸惑いを感じている/インスリンを注射すること、いつ低血糖が起こるかわからない状況を恐れる

5家族や周囲の人々の反応、理解、協力体制の把握

家族や周囲の人々が糖尿病をどのように認識しているか、協力体制を確認する。家族を始めとする周囲の人々が、糖尿病と患者の状態を正しく理解し、患者への協力体制が整えられることで、患者の自己管理行動の意欲が高まり継続が可能となる

・食事療法の実施には普段調理を担当している家族の協力が必須である。家族の糖尿病に対する治療の必要性の認識を高めることは、適切な協力体制を整えるために重要である

・糖尿病コントロールが不良、低血糖の可能性がある場合などはインスリン注射が困難な状況や食事時間が不規則な職場は避けた方がよい

・実生活における不安やより具体的な体験を話し合うことができる患者会などの場を提供する援助をする

・他職種との連携を持ちチームとして情報を共有し患者家族を支援できる体制を整えることで種々の問題発生に備える

起こりうる看護問題:インスリン注射が実施しがたい、食事の時間が不規則といった治療に適さない環境、家族の援助が得られない環境にある

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参考資料:疾患別看護過程