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一般的に栄養剤の注入の姿勢は、患者さんの上半身を30度から90度に起こします。
座位を保つことが出来る患者さんには椅子や車いすに座ってもらいます。
褥瘡・寝たきり患者の注入について
・ 状態を起こさないで寝たまま注入すると、栄養剤が逆流して気管に入り誤嚥性肺炎を起こす危険があります。
・ 褥瘡のある患者さんでは、ギャッジアップを30度程度に抑えるか逆に90度まで上げてしまう方が望ましいと言われています。
それ以外の態度は姿勢が崩れやすく圧力のかかりやすい仙骨部の皮膚にずれが生じやすく褥瘡が悪化しやすいと言われています。
・ 脳血管疾患による寝たきり状態や麻痺のある患者さんには、上半身を挙上するとずり落ちたりする為、半坐位の時には膝を曲げポジショニングまくらなどで苦痛の無い体位を維持します。
顎が上に沿って飲みにくい状況(後屈)にならないように、後頭部に枕を当てて顎を引いた状態にします。
右側臥位が本当に良いのか?
・ 以前は胃の出口が右側にあるため右を下向きにした横向きが良いという考えもありました。しかし胃の形やPEG造設位置は全ての患者さんで異なるものであり、一概に右側臥位が正しいとは言えなくなってきました。
・ 特に食道裂孔ヘルニアのある患者さんでは、胃食道逆流症を生じる危険があり、うっ側臥位で逆流しやすくなることもあります。
・ 微熱が続く、注入すると咳が増える、栄養剤を注入すると顔色が悪くなる、口腔内から栄養剤が吸引できるなどの症状があれば、胃内容が食道に逆流する胃食道逆流症を疑います。
・ このようなことがないように患者さんにとってどのような体位で注入することが望ましいかを理解することはPEG造影が最良の方法です。
胃食道逆流症の有無、食道裂肛ヘルニアの有無が分かります。
実際に注入している姿勢で造影を行うことで、注入及び逆流の状況が把握でき、どのような体位で注入すると良いかが分かります。
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注入後の注意点について
・ 患者さんは注入が終わっても少なくとも30分以上は上半身を上げたままにしておきます。
あまり早く寝かせると胃逆流から誤嚥性肺炎を引き起こすことになるので注意が必要です。
注入時のワンポイントアドバイス
栄養剤を注入する姿勢は、誤嚥性肺炎を予防する為にも大変重要です。
必ず上半身を30度から90度に起こして、注入の為の姿勢を整えます。
可能ならば座った状態が望ましく注入後もしばらくその状態を保ちます。
PEG実施後、いつから経口摂取は可能ですか?
PEG実施後の経口摂取再開に関して、一定の時期や基準はありません。
患者さんの個々の状態にもよりますが、一般的には腹部膨満や嘔吐の有無を慎重に観察し、様子を見ながらPEG造設の翌日から経口摂取を再開します。
PEG後の経口摂取
1 PEG実施後、いつから経口摂取が可能かについてはよく検討されていないのが現状です。
わが国で早期に経管栄養を開始する施設では、経口摂取をPEG造設の翌日から開始する施設が多いです。
少量の水分や内服は造設の数時間後から再開しているところもあります。
2 経口摂取可能な時期を判断するうえで考慮する点は3点です。
①摂取嚥下機能。
・ PEGを必要とする患者さんの場合、摂食嚥下機能が良くないことが多いですからPEG造設時の麻酔や刺激でさらに一時的に低下している可能性があります。
・ 一般的消化管手術においても術後数時間で経口摂取が可能であることから、PEG造設後数時間経過し麻酔の効果が消失すれば経口摂取の妨げにはならないと考えられます。
②PEG造設部の状態。
・ 経口摂取がPEG造設部に悪影響を与えるかはよく検討されていませんが、PEGからの経管栄養剤投与がPEG造設後数時間から開始可能であることから、経口摂取の開始時期に影響を与えることはほぼないと推察されます。
③胃排出能。
・ PEG造設患者さんの胃排出能は、液体の栄養剤を投与した場合のデータによると、殆ど良好に保たれますが、症例により一時的又は長期的に低下してることがあります。
・ 手術侵襲による一時的な消化管運動の低下は数日以内に回復しますが、PEG造設に伴う胃の変形や運動障害から生じる胃排出能の変化は症例ごとに異なり一様ではありません。
・ 経口摂取再開後数日間は、腹部膨満や嘔吐、胃内残留等の状態を慎重にチェックする必要があります。
3 以上からPEG造設後数時間以上経過していれば、経口摂取が可能であると推察されます。しかし胃の運動能が低下している症例もあり慎重にフォローする必要があります。
半日程度なら経口摂取が遅れても問題はないため、不測の事態にも対応が容易なPEG造設の翌日から経口摂取を開始している施設が多いと考えられます。
長期間経口摂取を行っていない場合
1 長期間経口摂取を行っていない患者さんでPEGを用いた栄養管理によって栄養状態が改善後、再度経口摂取にチャレンジする場合、嚥下機能評価を行い、安全に経口摂取ができることを確認して経口摂取を再開します。
参考資料:徹底ガイド胃瘻管理Q&A
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