視覚障害のある人とのコミュニケーション
コミュニケーションをとるうえで、視覚機能レベルがどの程度障害されているか、視野の狭窄や欠損の程度を知ることによりコミュニケーションへの影響を考える
視覚が障害されると、触覚、聴覚や他の感覚で補い適応しているが、相手の表情や身振りなどが見えないことから、相手の意図を理解することに支障をきたす
コミュニケーション
対人関係の離脱や抑うつ、逃避や否定の感情を持ちやすい。また健常者とのコミュニケーションが阻害されやすい点を理解し接することが望ましい。
本人の持っている機能を効果的に使う事が重要となる
視覚障害患者とのコミュニケーションを促進させるために
1 コミュニケーションを始める時は、名前を告げ向かい合って声をかけるようにする
2 患者が聞く用意が出来てから話しかけ、何をするのか十分説明を加える
3 視覚情報は具体的に説明し、話せる環境つくりと室内や物品の配置場所など触覚で確認する行為を通して、患者が安心してコミュニケーションが図れるように配慮する
4 物品などは定位置に置き、移動する時は了解を得る。時計の文字盤の位置関係を利用するのも便利である
5 コミュニケーションを補助する弱視眼鏡類、テープレコーダー、音声時計、点字などを効果的に活用する
言語障害患者とのコミュニケーション
言語障害のある人とのコミュニケーション
言語障害の種類は失語症と構音障害の二つに分けられる。
失語症はコミュニケーションの中核である理解力と言語の表出力の両者を伴うことが多い
言語化する能力が障害されると、言いたいことが分かっていてもそれを言えなくなったり、表出した後に気が付いたりして本人のフラストレーションになり傷つきやすくなる
コミュニケーション
構音障害は表出の障害で発音が不明瞭あるいは消失するが理解力は保たれる。
言語障害の種類や程度を十分に把握した上で障害レベルに応じたコミュニケーション手段の確保や、本人及び家族の心理的サポートと共にコミュニケーション意欲を高めていくことが重要である
失語症患者とのコミュニケーションを促進するための10項目
1 短い文でゆっくり話しかける。早口で言わない
2 病前から使い慣れていた言葉や表現を使って話しかける
3 患者が現在関心を持っている具体的な事柄について話しかける
4 抑揚や表現を豊かに話しかける。身振りを加えたり実物を見せたり文字で示したりする
5 話しかけても1回で理解できない時は、もう1回繰り返すか、または別の表現に変えてみる
6 1つのことが理解された事を確かめ手から次のことに進み、話題を唐突に変えない
7 上手く話せない患者に対しては「はい」「いいえ」で答えられるように質問を工夫する
8 患者が話すための時間を十分に与え、ゆっくりと辛抱強く聴く
9 無理やり話させようとしたり、誤りを訂正したりしない
10 患者がうまく話せたり、離開で来たりした時は、はっきりとほめたり一緒に喜んだりして励ます
聴覚障害のある人とのコミュニケーション
聴覚障害によって生ずる難聴は、伝音系と感音系に分類される。
伝音系の場合、補聴器により音量不足を補ったり、大きな声で話すことでコミュニケーションを成立させることが出来る
しかし、感音系難聴は回復の見込みは難しく、老人性難聴は感音系のものであるから補聴器の効果にも限界があるのでコミュニケーション障害をより生じやすい。
聴覚障害者は不安感、孤独感に陥りやすく自閉傾向になりやすいので、コミュニケーションを積極的に行う必要がある
聴覚障害患者とのコミュニケーションを促進するには
1 話しかける時は患者が最も聞きやすい位置から行う
2 筆記用具をいつも身近なところに準備しておく
3 口唇の読み取りができる場合、ナースの口元の動きが見えるようにする
4 患者がコミュニケーションに手中出来るよう騒音を避ける
5 コミュニケーションを補助する手話、補聴器、助聴器、モシモシフォン等を個人の機能に合わせて使う
患者との良好なコミュニケーション法
医療現場でのコミュニケーションの重要性を認識し、様々な患者とコミュニケーション行動が取れるよう日頃から意識して努力をする
入院、外来を問わず、患者は体調が悪く十分に気持ちを表すことが出来なかったり離すことが困難な状態であったり、また緊張して思うように話せなかったりする。
患者の送ったメッセージを受け止め理解し応答する回路が機能されていなければ、伝えようとしている内容が理解されず、したがって一方向のコミュニケーションに終わってしまう。
健康な状態にあっても良好なコミュニケーションを保つことはそう容易な事ではない。
まして心身の状態が思わしくない患者の場合はコミュニケーションをとる難しさがある。
また同時に、前述の状況があるからこそ、コミュニケーションが重要になる。
相手の訴え、意見、希望などに耳を傾けどのようなメッセージ内容か理解し対応して行く為には、実践に繋がる個々の行動としての努力が望まれる
共感し理解する態度
患者の訴えていること、伝えたいことをナース自身の枠組みで解釈したり、途中から遮ったり、話を聴かないでわかったからと一方的に結論を出すなどすることは、相手が感じていること、また考えや気持ちを知ろうとしないことになる。
このことはコミュニケーションのゆがみを生じることになる。
相手の些細な言動に注意を傾け、ナースの解釈ではなく患者自身の考えや気持ちを知ろうとする態度が共感的理解をする為の第一歩となる。
患者と良好なコミュニケーションをとるためには真の意味で共感し理解する態度が大切になる。
患者の考えなどがうまく伝えられるよう、問題の明確化への援助
初めに気軽に自由に話せる関係、雰囲気作りが大切となる。
温かく受け入れ患者が言いたいこと、伝えたいことが言えるように、また考えがまとまらないまま話している場合は、確認をとりつつ整理し問題を明らかにすることが必要となる。
患者本人も質問されたり言葉の意味を確認されることにより、自分が問題としたことが徐々に明らかになっていくことになる。問題を明らかにすることは重要なポイントになる
患者を支持する姿勢
患者に対して「頑張りましょう」「大丈夫ですよ」「心配いりませんよ」など、励ましの言葉としてしばしば使われているが、使い方によっては儀礼的になってしまうことがある。
患者の努力は些細な事でも認め支持することにより、患者の意欲につながり自尊心を高めることになる。
支持することの積み重ねが患者への強い味方になる。
コミュニケーションを阻害する因子
1態度に関する因子
・ 相手に対して否定的な態度を示す
・ 先入観や偏見で相手の話を聴く
・ あやふやな態度をとる
・ 相手の価値観や信念を認めようとしない
・ 自分の主張を押し付ける
2表現に関する因子
・ 表現力の乏しさや伝達の不慣れ
・ 乱暴な言葉遣い
・ 間の取り方のまずさ
3環境、時間に関する因子
・ 不適当な環境、部屋の構造、騒音、プライバシー、向き合う距離、位置関係
・ 時間の制限に無関心
4話題、介入に関する因子
・ プライベートな話題
・ 第三者の介入
5その他
・ 体調
・ 生理的作用(空腹感、眠気、尿意など)
言語的コミュニケーションコミュニケーションの手段
人間社会の特徴は言語と言うコミュニケーションを持っているという事。
言語的コミュニケーションは言葉を用いて話すことと言葉を媒介するという意味から、書くことなどが含まれる。
言葉の理解には知的な認識力が関与する。また一つ一つの言葉の持つ意味は全ての人の理解が全く同じとは限らない。
同じ言葉を使っても個人の生活体験や世代によって言葉の意味している事柄が異なることがある。
・ 話し言葉、文字、手紙
非言語的コミュニケーション
言葉を媒介としないコミュニケーション手段である。
人間は自分の考えている事や感情などすべてを言葉にして話すわけではない。
非言語的コミュニケーションは、言語的コミュニケーションの代わりをしたり、補ったりする役割を果たしている。
人のしぐさは言葉以上の気持ちを表していると言われる
・ 言葉を使う際の意味を明らかにすることなどに関与:抑揚、リズム、間
・ 言葉への補足の関与:声の調子、声の使い方(音声、声の高低、声の強弱)スピード
・ 感情の表現や言葉を補う事への関与:ボディ・ランゲージ(顔の表情、タッチング、ジェスチャー)
・ 相手との位置関係への関与:距離、位置関係
・ 行為そのものへの関与:歩く、食べる、飲む、食事の世話
・ 離している人の外観:服装、ヘアスタイル、化粧、装飾品、香り
参考資料:コミュニケーション・センス
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