清拭時に清拭車は使わないようになった

看護師仕事内容(日常ケア)

清拭車はいつでも暖かいタオルで患者さんを清拭できるとても便利なものです。

しかし、清拭タオルとの関連が疑われるセレウス菌による血流感染や偽アウトブレイクなどの報告が出ています。

清拭タオルと共に清拭車の使用についてもその可否が医療機関で検討されるようになってきました。

清拭車で加温したタオルには、セレウス菌による感染リスクがある

患者にしようするタオルやリネン類は、外部の洗濯業者や院内のランドリーで選択されるのが一般的です。

しかしこれらの選択済み未使用タオルからセレウス菌の細菌が発見されました。

 

セレウス菌を含むバチルス属の最近は土壌などに広く存在する一般的な細菌で芽胞を形成します。芽胞は、熱や乾燥、消毒薬に強い抵抗性を示し、乾燥や高温の環境下で長期間生存します。

従って乾燥したタオルを清拭車の高温蒸気で温めても、芽胞を形成して菌は生存します。

タオルに付着していたセレウス菌の芽胞は、適した生息環境を得て発芽し増殖してしまう可能性があります。

 

清拭車で増殖するセレウス菌

清拭車での加温はタオルの含有水分量が多いほど清拭車庫内の温度が上がりにくく、バチルス属の培養陽性数が多くなったことが報告されています。

セレウス菌が増殖したタオルは、選択してもセレウス菌を完全に除去することは難しく、セレウス菌が付着したまま再び洗濯済みのタオルとして使用されます。

易感染状態の患者や血管内留置カテーテルを挿入した患者に使用した場合、セレウス菌による血流感染などの医療関連感染の原因になることが考えられます。

 

感染を防ぐにはセレウス菌の付着を予防する

タオルによるセレウス菌の医療関連感染を予防するには、タオルへのセレウス菌の付着を防ぐことが肝心です。

医療機関によっては、易感染症などを考慮し清拭タオルをデイスポーザブルタオルに変更しているところもあります。

また、清拭車を廃止するなどの対策を講じているところもあります。

感染予防に加えて、適応する患者やその満足度、利便性や経済性など多様な角度から施設に合った実践可能な対策を検討する必要があります。

 

清拭の際、必ずしも末梢から中枢の方向で行わなくても良い

四肢を清拭する時、末梢から中枢の方向へと拭くのは静脈血の還流を促す為であると教科書には示されています。

しかし、「ターミナル期の浮腫や黄疸の強い患者には、強い圧はかけられない」

「毛を逆立てる方向に拭くと、交感神経活動を更新させてしまわないだろうか」という疑問が湧いてきます。

 

報告結果では

9名の健康な成人男性を被験者とし、温湯タオルで前腕を末梢から中枢へ拭いたところ、清拭しなかった側の循環も促進したという結果があります。

別の研究では、4名の健康な成人女性を被験者とし、乾タオルを用いて前腕部を末梢から中枢へ、中枢から末梢へと拭いて比較すると、違いは見られませんでした。

今のところ、拭く方向の違いによって末梢皮膚血流量に大きな違いがみられたというデータがありません。

 

拭く方向と自律神経の反応

一方で、自律神経への反応を拭く方向の違いから捉えた報告があります。

50名の健康な成人男女の上肢を乾タオルで拭いた結果、交感神経が低下したのは中枢から末梢でした。

中枢から末梢への撫ぜるような拭き方が、大脳辺縁系での価値判断がリラックスした感情を引き起こしたと考察します。

眠りに入る前や興奮した気持ちを静めるには、中枢から末梢の方が効果的である可能性があります。

清拭が抹消循環を促すのは、静脈血の流れに沿って、心臓へ向かって拭くという局所的な要因ではないと考えられます。

自律神経への影響を利用した目的に沿った拭き方が求められていると言えます。

 

 

参考資料:今はこうする看護ケア。

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