看護師仕事内容・NSTの目的と役割
NSTとは
栄養管理に関する専門知識・技術を持った他職種から構成される医療チームのことです。
すべての医療の基本である栄養療法を支援することにより、治療効果の向上、合併症の減少が期待できると言われ、近年導入する施設が増えてきています。
・ NSTは1970年代にアメリカで誕生した栄養療法における医療チームです。
・ 栄養療法をチームで行えば、合併症が減りコストを抑えて治療ができるという発想を元に誕生したのがNSTです。
・ 一方わが国では、1998年にはNSTは全国で13施設しか稼働していませんでした。現在約300の施設で稼働が確認されています。
NSTの業務
入院外来を問わず、患者の栄養状態を評価し栄養状態に問題のある患者さんを特定することです。主な業務を具体的に示すと、
・ 栄養状態の評価(アセスメント)
・ 栄養障害患者の特定(スクリーニング)
・ 栄養サポートのプランニング(適切な経路の検討と実施、適切な処方の検討)
・ モニタリング(効果、合併症)などです。
①NSTの行う栄養評価
NSTで用いる栄養評価項目は、
・ 食事摂取量、体重変化率、活動性等を聴収する主観的項目。
・ 上腕周囲長、上腕筋面積、上腕三等筋皮下脂肪厚等を計測する身体計測。
・ 血清アルブミンなどの栄養指標を測定したり嚥下能力を評価する客観的検査データ評価。
それぞれを適宜組み合わせて高リスク症例を拾い上げることが栄養スクリーニングです。
②回診
栄養療法を行っている症例は、各職種が一同に患者を実際に回診することによって、実際の栄養状態や栄養療法の施行状況を確認します。
③カンファレンス
回診と同様にNSTに関わる多職種が一同に会して、NST対象患者に関する現状と問題点の確認と治療方針についての討議を行います。
回診と同様に異業種交流的なチーム医療の特徴を生かした斬新な発想が期待できます。
NSTの構成メンバーと運営法
・ NSTのスタッフはチーム医療というだけあって多種多彩な職種から構成されています。
NSTスタッフの役割は
・ 医師ー適応決定、カテーテル管理、輸液処方、経腸栄養剤処方、臨床判断。
・ 看護師ー注入管理、カテーテル管理、全身状態チェック(発熱や血糖)、患者抽出。
・ 薬剤師ー輸液製剤、薬剤に関すること。
・ 栄養士ー栄養評価、経腸栄養に関すること。
・ 保健師ー在宅栄養療法に関すること。
・ 検査技師ー栄養指標の測定、アセスメントに関すること。
・ 資材部ー栄養療法に用いる診療材料に関すること。
・ 医事科ー医療経済に関すること、データの蓄積などです。
NSTの効果
・ NSTという栄養療法に関する専門的知識を持った学術的集団が関与することによって、従来に比べより適切でしかも質の高い栄養療法の提供が期待出来ます。
医療、保険、福祉にかかる医療費の抑制という点にも期待が寄せられています。
NSTのワンポイントアドバイス
栄養管理はすべての医療の基本という気持ちを常に抱き、チームの中で如何に看護師の専門性を発揮できるかを模索して、他職種と共同で栄養管理を行いましょう。
患者さんのQOLが向上するだけでなく、自分自身のスキルアップにもつながります。
NSTの活動の効果は?
① 栄養療法の適正化による中心静脈栄養の減少と経口・経腸栄養の増加。
② カテーテル敗血症などの合併症の減少。
③ 院内感染をはじめとする感染症の予防とそれに伴う抗生剤使用量の激減。
④ 褥瘡発生率の減少。
⑤ 地域一体型NSTによる地域医療連携の強化。
⑥ 医療安全管理体制の確立。
⑦ 平均在院日数の無理のない短縮。
⑧ 医療費の削減と病院経営の改善などがあります。
NSTの目的
① 症例個々に応じた適切な栄養管理法の選択とその実施。
② 適切かつ質の高い栄養管理の提供。
③ 早期栄養障害の発見と早期栄養療法の開始。
④ 栄養療法による合併症の予防。
⑤ 疾病罹患率・死亡率の減少。
⑥ 病院スタッフのレベルアップ。
⑦ 医療安全管理の確率とリスクの回避。
⑧ 栄養素材・資材の適正使用による経費削減。
⑨ 在院日数の短縮と入院費の節減。
⑩ 在宅治療症例の再入院や重症化の抑制などがあります。
NSTの役割
① 栄養管理が必要か否かの判定(栄養アセスメント施行)
② 適切な栄養管理がなされているかチェック。
③ 最もふさわしい栄養管理法の提言。
④ 栄養管理に伴う合併症の予防・早期発見・治療。
⑤ 栄養管理上の疑問点(コンサルテーションに答える)
⑥ 新しい技術の紹介や提言。
⑦ 栄養療法の評価・効果判定などがある。
NSTの活動と効果
わが国でもNST活動概要や効果に関する報告が続々なされるようになってきたが、最も画期的な効果を上げている鷲尾総合病院NSTの活動状況とその効果を見ると
① 中心静脈栄養の減少(年間650件から454件に)経口経腸栄養の増加。
② カテーテル敗血症の激減(年間4,9から0,9%に)
③ 院内感染の撲滅(MRSA検出量の減少、抗菌剤使用量の激減)
④ 院内全細菌感染症の減少。
⑤ 高齢者褥瘡発生率の減少(14,9から3パーセントに)
⑥ 地域一体型NSTによる地域医療連携の強化(病院内外での段差のない栄養療法の実施、PEGを含む胃瘻や腸瘻造設患者の施設受け入れ態勢の完備)
⑦ 医療安全管理体制の確立。
⑧ 平均在院日数の短縮。
⑨ 著しい経済的効果
NSTのワンポイントアドバイス
栄養管理はすべての疾患治療の基本であり、これをおろそかにするといかなる治療も無効となるだけでなく、時に栄養障害に伴う種々の合併症をきたすこともあります。
NSTはこのような栄養障害を改善するとともにできる限り栄養障害の発生を予防して種々の合併疾患の発症を抑制します。
その結果たとえリスクの高い高齢者と言えども無理なく早期退院が可能になります。
栄養サポートチーム(NST)って何?
・NSTの誕生は1968年の中心静脈栄養(TPN)の開発に発端があります。
TPNの普及発展と共に医師、薬剤師、看護師、栄養評価を行う管理栄養士などの栄養管理集団結成がNSTの始まりだったと考えられます。
我が国のNST
・ 我が国におけるTPNの導入も米国に劣らず早期に行われましたが、それ御管理実践するための専門チームNSTの普及までは至りませんでした。
・ その理由は
イ、我が国の医療社会が縦型であり、各職種や各診療科の間に大きな壁が存在し、チーム医療体制の構築が困難だった。
ロ、欧米におけるNSTの運営システムが専属チーム体制であったことが挙げられます。
・ 1998年我が国の医療状況に即した新しいNSTの運営システムが考案され、これを機にわが国にも本格的な全科型NSTが次々と設立されるようになりました。
・ 我が国のNSTは2001年には数施設の設立にすぎなかったが、2005年には355施設に設立され、さらに300以上の施設で稼働準備が行われました。
我が国のNSTの特徴
・ 欧米のNSTはTPNを中心に発展普及しました。
わが国はTPNを中心とする中心静脈栄養にとどまらず、経腸栄養や経口栄養にまで及び、これら栄養療法を一貫した形で管理しています。
・ これはわが国独自のものであり、栄養管理を基盤にした少子高齢化対策にもつながるものと認識されつつあります。
NSTの運営システム
専属型NST
・ 欧米のNSTは栄養管理を専属に行う独立したチームであり、専門の医師看護師薬剤師栄養士ら5~10名が施設内の栄養管理を一手に担い活動をしています。
兼業兼務型NST
・ 1998年我が国の実情に対応したNST運営の新しいシステムとしてPPM(兼業兼務システム)が考案されました。
・ PPMとは、少しづつだが各部署から人・知恵・力を持ち寄ってNSTなどのチーム医療を運営する日本独自の新しいシステムです。
NSTの機構図
・ NSTは職種の壁を超えたチーム医療であり、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、臨床検査技師、医療事務員、リハビリスタッフなど他職種のメンバーで組織されています。
NSTのワンポイントアドバイス
我が国に普及しているNSTの特徴は、軽静脈栄養から経腸栄養、経口栄養までの一貫した栄養療法を実施していることです。
これはわが国独自のものであり、栄養管理を基盤にした少子高齢化対策にもつながるものとされています。まずはNSTのメンバーとしてこのチーム医療に積極的に参加しましょう。
参考資料:全科に必要な栄養管理Q&A
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