中心静脈栄養の看護と中心静脈栄養の合併症とは?
合併症はカテーテル留置時に引き起こされるもの、カテーテル留置中に引き起こされるものに分けられます。
その中でも留置中に引き起こされる合併症として、カテーテル感染は重篤化することもあり無菌的なケアが大切です。
カテーテル留置時に引き起こされる合併症
1カテーテル留置により合併症を引き起こすこともあり、必ず患者さんや家族に十分な説明を行います。
カテーテル留置は無菌的操作を行い、留置後は胸部レントゲンでカテーテル先端位置を必ず確認します。
①気胸。鎖骨下穿刺時に起こり得ます。穿刺後は胸部レントゲンで確認します。
②空気塞栓。鎖骨下穿刺時は陰圧の胸腔内圧の影響を受けやすいため、カテーテル内部に空気が吸い込まれる可能性があります。致命的になるため予防が重要です。
③動脈穿刺(血胸)動脈に針が入った場合は穿刺針を素早く抜き十分な圧迫止血をします。血胸に移行した場合には、胸腔ドレナージを必要とする場合があります。
④皮下血腫。動脈穿刺、数回穿刺を繰り返した時に形成されやすくなります。十分な圧迫止血を行います。
⑤カテーテル位置異常。鎖骨下穿刺時カテーテル先端が上大静脈以外の血管に入ることがあります。内頸静脈に留置すると血栓性静脈炎を起こすため必ず一習性が必要です。
カテーテル留置中に引き起こされる合併症
1カテーテル感染(敗血症)
カテーテル感染とは、他に明らかな感染源がなくカテーテル留置後38度以上の発熱がみられるもので、抜去により軽快します。
抜去したカテーテル先端培養が陽性と認めたものをさします。カテーテル感染は重篤な状態になることも多く、予防対策として微生物の侵入を防止することが重要になります。
①輸液剤の無菌的調剤。
調剤後は24時間以内に使用します。
②輸液ルートの無菌的管理。
輸液バックの交換時、ルート交換の際は無菌的操作を行います。フイルタを組み込んだルートの使用が望ましいです。定期的に交換し三方活栓の使用は避けます。
③カテーテル刺入部管理。
週1~2回刺入部のドレッシングケアを行います。刺入部の長さや固定状態、皮膚異常の有無などを確認します。
刺入部を消毒しドレッシング剤で覆い、発汗や汚染した場合はその都度ケアを行います。入浴時は刺入部の汚染を避けるために防水性の被覆剤を使用します。
2 代謝性合併症・欠乏症。
TPNは非生理的強制栄養法であるため、代謝性異常や欠乏症を常に起こす可能性があります。そのため常に合併症を想定し、観察予防することが大切です。
①糖代謝合併症。
カロリーの大半を糖質で補う事が多いTPNでは、糖代謝の管理が重要です。耐糖能の把握と糖代謝の監視を毎日行う必要があります。
TPN開始時は糖濃度を徐々に上げ一定のスピードで輸液を投与します。終了する場合も徐々に糖濃度を下げます。
またカテーテル抜去などによりTPNを中止する場合は、低血糖予防の為末梢静脈より中カロリー程度の点滴を行います。
②必須脂肪酸不足。
皮膚の落屑、乾燥、創傷治癒遅延などの症状が発現します。予防の為には脂肪乳剤の定期的投与が必要です。
③微量元素欠乏。
長期的TPNを行う場合、問題となることがあります。微量元素を含有する製剤を投与し症状出現有無を観察します。
・欠乏症状
・亜鉛ー疲診、脱毛、口内炎、味覚異常、舌炎、創傷治癒遅延、免疫能低下。
・銅ー貧血、白血球減少、骨形成不全。
・マンガンー成長障害、骨発育不全、凝固機能低下、コレステロール値低下、皮膚炎。
・セレンー筋肉炎、心筋症。
・モリブデンー頻脈、多呼吸、夜盲症。
・クロムー耐糖能異常、末梢神経障害。
④肝機能異常。
TPN開始時より、通常でも多少の肝酵素の上昇は認めます。急激な上昇、また持続的な異常値を示す場合、投与量の減量等を考慮する必要があります。
⑤ビタミン欠乏症。
ビタミンお腹でもビタミンB1欠乏による乳酸アシドーシスは時に致命的になります。TPN時は必ずビタミン製剤の投与を行います。
3 中心静脈栄養施行時における看護師の役割。
① バイタルチェック。
② 水分出納チェック。輸液速度の調整、尿量などを確認し出納バランスをチェックします。
③ 尿糖または血糖チェック。
④ 無菌的なルート管理。カテーテル感染を予防する為に定期的にルート交換をこない、刺入部の観察を行います。
TPNワンポイントアドバイス
中心静脈栄養が安全に施行されるかは、看護師の管理にかかっていると言えます。
特にカテーテル感染は看護師の意識と手技によって予防できます。
基本的な無菌的操作、観察をしっかり行ってください。
また感染予防におけるマニュアルを作成し、スタッフの技術を統一することが大切です。
患者さんが安心できる技術提供を心がけてください。
中心静脈栄養法の適応は?
中心静脈栄養の適応は、低栄養で2週間以上の経消化管的栄養補給が不可能な時、末梢静脈経路が確保できない時、多量の栄養素補給が必要な時、水分制限が必要な時、およびその必要性がその危険度を上回る時です。
適応
① 古典的中心静脈適応法(TPN)の適応は、食べられない、食べてはいけない、食べられないろう、でした。その拡大解釈で適応が広がり、合併症の蔓延を引き起こす要因になりました。
② 欧米では1993年に米国静脈経腸栄養学会のガイドラインにより、TPNの適応が厳しく制限されました。
③ 静脈栄養の継続が2週間以内で済むのなら、末梢静脈栄養で十分です。静脈経路が確保できない時には中心静脈経路を確保しなければなりません。
④ この原則に従えば、通常の消化管術後患者はすべて適応外となります。
⑤ 適応になる具体的な病態としては、イレウス、腹膜炎、頻回の嘔吐、重症急性膵炎、短腸症候群です。いずれも消化管の使用が不可能であったり消化管の使用が病状の悪化を招く恐れのある病態です。
⑥ イレウスでは消化管分泌液も通過しなので経腸栄養法は病状を悪化させます。閉塞が解除されるまではTPNが必要です。
⑦ 広範な腹膜炎で歯、消化管の運動がマヒします。消化管内のうっ滞が起き、閉塞と同様な病態になります。急速な低栄養状態に陥る危険性があります。
⑧ 放射線療法や化学療法などで頻回の嘔吐が続き消化管も使用できない時には、嘔吐が治まるまでTPNが必要になります。
⑨ 重症急性膵炎時には、経腸内栄養素の投与は病状を悪化させます。消化管運動も極端に低下していることが多く満足な栄養は得られないと考えるべきです。
⑩ 大量腸管切除による短腸症候群は残存する消化管の長さにより病状は大きく変わりますが、残存省庁が100センチ以下であればTPNは絶対に必要です。
⑪ 高濃度の輸液製剤の投与が必要になる場合も、TPNの適応になります。
⑫ TPNには多くの危険な合併症があるために、適応に当たってはそれらの危険性を差し引いても、その有用性が十分にあると判断して始めて施行すべきです。
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TPNから離脱
① TPN中は病態の推移と共に消化管機能の使用可能状態への回復度合いに注意しておく必要があります。
少しでも消化管の使用が可能になれば少量の水分からでも経腸的投与を開始すべきです。傾聴的に一日必要栄養素の2/3以上が投与可能になるまでは、TPNは必要栄養素を考えながら継続すべきです。
② 消化管機能の回復程度はそれぞれの病態により異なります。最近ではTPNから離脱できる例が増加してきています。それに向かって支援することが大切です。
③ 結論的に言えば栄養補給はTPNよりPPN(末梢静脈栄養)、PPNよりEN(経腸栄養法)です。しかし、絶対的TPN適応もあることを忘れてはいけません。
TPNのワンポイントアドバイス
TPNは低栄養で腸管が長期間栄養補給路として使用できない時に適応となりますが、合併症が多く患者さんへの負担が多く、ケアも複雑ですので、消化管機能の回復と同時に速やかに経消化管栄養に移行すべきです。
参考資料:全科に必要な栄養管理Q&A
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